咲とその夫

 定年退職後、「咲」と共に第二の人生を謳歌しながら、趣味のグラウンド・ゴルフに没頭。
 週末にちょこっと競馬も。
 

鋭い、人物描写・・・・池波小説

2011-04-20 22:44:15 | レビュー
 未だに池波正太郎小説から抜け出すことのできない深みにどっぷりとハマっている。何故にここまでその小説の虜(とりこ)になってしまうのか、自分でも不思議なくらいである。

 ちょっとした話題の中で、池波小説の話を持ち出すものだから、「また、小説の話しかね。よく、飽きもせず何度も読むものだね・・・・・」とは、家内の弁。


 戦国武将ものから江戸時代もの、珍しい股旅ものなど色々なジャンルの小説であるが、どの一遍を取っても実に面白く・・・・・何度も読み返させられるほどの魅力。


 その魅力の一つに筋立ては勿論であるが、その物語に出てくる登場人物とその背景描写がとても素晴らしい筆致で書き込まれており・・・・ハマってしまう原因と思っている。

 さらに、「剣客商売」などに出てくる食べ物の描写、登場人物はよく食べて、よく飲むのであるが、その食べているものを・・・・・ついつい、食べたくなってしまう。


 人物描写では、次のような書き方、表現の仕方に・・・・感服の一語

 「『斬り合ってもお前さんにゃ敵(かな)うめえよ』と、爺つぁんが言った。
 脱け上がった胡麻塩(ごましお)頭の、痩せた爺つぁんだ。陽に灼けた顔の皺(しわ)に隠れてしまっているような細い眼だった」(“あばれ狼”の一遍“さいころ蟲” 抜粋)


 「落ちかかる陽が赤くそめている浪人の顔は、むしろくったくのない穏やかな表情をうかべている。
 色が白く、ぽてっと小肥りな・・・・・眉が濃くて、栗鼠(りす)のような小さくてまるい双眸が人懐こい光をたたえているその浪人は・・・・・」(“あばれ狼”の一遍“あばれ狼” 抜粋)


 「よく見ると武士の顔は、顎(あご)の張った肉のあつい、なかなかに立派なもので、濃い眉も、ふとくて形のととのった鼻も尋常のものではない」(“角兵衛狂乱図” 抜粋)


 「この年で、福島正則は三十九歳になっている。背が低いし、鼻下にたくわえたものものしい髭が、まったく似合いかねる童顔の正則は、十歳ほど若く見えた。・・・・・・そのかわり、正則の体躯は強壮をきわめていた。・・・・・裸体になると、正則はすばらしかった。厚く、もりあがった胸、逞しい四肢・・・・そして、全身の皮膚が無数の切傷によって刻まれている。刀、槍の傷痕だ」(“忍びの女”抜粋)


 「顔も黄ばんでいる。病状は軽くないらしい。だが、ちらりと小兵衛を見やった村松の大きな双眸は童児(こども)のごとく澄み切っており、まったく病気を苦にしていないようにおもえた」(“剣客商売”の一遍“十番斬り” 抜粋)


 「若いときから高慢な女で、背丈が低く、妙にぼってりとした体つきのお米は、眉・眼・鼻・口が四方へ飛び散っているような顔の造作で、鼻の穴が天井を向いているのも、唇が上へ切れあがっているのもむかしのままだ」(“剣客商売”の一遍“密通浪人” 抜粋)

 これらの登場人物がイキイキとして、目の前に出でて来るような場面、人物描写が多数あるので・・・・・楽しくなってくる。

 最後にちょっと食べたくなるような蕎麦掻きの描写・・・・・。

 「黒塗りの小桶の、熱湯の中の蕎麦掻きを箸で千切(ちぎ)り、汁につけて口に運びつつ、大治郎はゆっくりと酒をたのしんだ」(“剣客商売”の一遍“逃げる人” 抜粋)


 ほんと、食べたくなってくる。(夫)


 
「蕎麦掻き」(出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)



[追 記]
 蕎麦がき(そばがき、蕎麦掻き)とは、蕎麦粉を使った料理で、麺(蕎麦切り)としてではなく、蕎麦粉に熱湯を加えるか、水を加えて加熱し、箸などですぐかき混ぜることで粘りを出して塊状とする点に特徴がある。
 子供でも簡単に作れるので、蕎麦産地では昔からおやつとして定番だった。箸で少しずつちぎりながら、そばつゆや醤油をつけて食べる。
(出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 抜粋)


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