九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)

憲法論議はいよいよ本番に。自由な掲示板です。憲法問題以外でも、人間的な話題なら何でも大歓迎。是非ひと言 !!!

僕が愛読している「市井人のブログ」三つ  文科系

2020年07月20日 11時26分44秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 僕は長い間、他のブログなどは見たことがなかった。が、今年になってから最近は三つのブログを愛読していて、時々コメントも付けさせていただいている。いずれもグー・ブログだが、ここと同じ「文科系」という名前でコメントを付けている。

・心臓手術からフルマラソンへ
 関東は大和市のお方で、僕にとってはまー、同じ心臓手術を経た、ランニング(とサイクリング)同志でもあります。また、両親、兄上の介護、看病をも務められているその日々に、ランと自転車に水泳と、日夜励まれて、一見して分かる古き良き、勤勉な「日本人」! いわゆる「竹を割ったようなご人格」にも見えるお方ですね。
 
・行雲流水の如くに
 北海道のどこか山近く?で庭仕事やいわゆるワンダーフォーゲルにも励みつつ?、政治評論と写真のブログを展開されておられる、僕よりも10歳近く年下のお方? 「北海道の緑?」が美しすぎる、写真が良いのです。このバラが良かったとコメントすると、次にそれに近いものを写してくださったりするから、嬉しすぎる「お友達」。日本政治評論では僕にちょっと近いところがあるのかな?等などと勝手に思っております。

・つれづれなるままに心痛むあれこれ
 大阪は、硬派の日本近代史学者? 漢字が多すぎる長文で、若い人でなくともちょっと引けるところがあったりもしましょうが、実証的な文章は本物だと観ています。日本史の見方は、僕に非常に近いものがあります。「似非右翼・安倍は馬鹿すぎることでもあるし、どうしても許せない」と、そんな公憤の持ち主でもあるのかな。

 先週のこのブログへのアクセスが4400など、今は普通3500が当たり前と増えたことについて、この三つの読者がここを訪問して下さるようになったからではないかとも、推察、愚考しています。ここを読んで下さっているみなさん、この三つも訪問してみて下さい。僕がちょっとブログ人生が豊かになったような気がしますから、みなさんもどうぞということです。
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16日『「文学国語」こそ「人の力」』への補足  文科系  

2020年07月19日 13時08分32秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 文中こうある事への補足説明をします。
『論理国語がどれだけ優秀でも文学国語(の世界)に弱ければこうなる。営業が出来ない。組織を動かせない。力のある政治家にはなれない。そもそも、人育て、子育てさえ苦手になるはずだ』
 ここで、「文学国語(の世界)」と書いて、単に文学国語とだけ書いてないことを説明します。言葉にはその対象がある。そして、文学的言葉の対象は心の中に(その態度、傾向、感じ方などの現象として)存在するもの。よって、人の心に通じていかないと、この言葉を上手く使って人間を分析し、考えることは出来ない。そして、人の心に通じるとは、相手と自分とを(比較)観察しつつ、それを言葉に表しながら、精密になった言葉を組み合わせていろんな人間に気づき、認識を豊かにしていくこと。つまり、幼い時から人と真剣に付き合って来なければ、身につくものではない。

 この点で、ネットやゲーム世界隆盛へと邁進してきた40代以下日本人は、人文科学が大変苦手になっていると言えないだろうか。人間関係が苦手であったり、安倍やトランプに騙されるというのも、そういうことだろう。この二人などの質疑応答を聞いていると、いかに独善の馬鹿、要するに自分勝手なボンボンかということが分かるのだが。
「それもこれも、私の責任です」とさも殊勝そうに連発しながら、何の責任も取らぬ、人として軽すぎというだけでなく、「選挙目当てヤッテル感『政治』だけ」で悪辣な、安倍。
 嘘や約束破りの常習犯で、口から出任せを、自分だけ大事と吹きまくる、トランプ! 最近彼は、大学入試さえ替え玉を使ったと、兄の娘から暴露されたという、そんな人物だ。
 彼らに投票する人って、こういう人間論を持っているとしか思えないのである。「彼らが特別なのではなく、人間ってみんな安倍やトランプのようなもの。その上で、俺にとってここを何かしてくれそうだから・・・・」。誠実な人という中身を持って重く、ヒューマンな行為の人に出会った事がないのかも知れないとさえ考えてしまう。

 もっともまー、人間社会に民主主義が叫ばれ始めて以降いつの時代もこういう時はあったのだが。「自由、平等、博愛」のフランス革命はナポレオン戦争地獄に替わったのだし、身分制、人種差別や搾取打破のヒューマニズム目指したソビエトは、「官僚独裁恐怖政治」に変質していった。19~20世紀の人種問題を除いた「民主主義」代表国アメリカも、今や世界各地で戦争を仕掛ける戦争暴力(その脅迫を含む)国家になり果てている。こういう不条理国家が人文科学退廃を自然に生んでいくというのは、自明である。なお、これらの間中、こういう人文科学の反面もまた真実であり続けた。フランス革命の「自由、平等、博愛」も、ソビエトが目指した「ヒューマニズム」理想も、アメリカの民主主義も、これらを目指した無数の名もなき人々の中では、真実なのであった。でなければ、それぞれの歴史が興るわけもないものである。が、こうして築き上げた民主主義国を、その支配に慣れた人々が間もなく裏切っていく。そんなことが示されていると思うが、こういう歴史全体としては、民主主義は進んできたと、そうは言えるだろう。問題は支配者を変質させぬ仕組、やり方なのだと思うが、普通選挙も、マスコミで金を使った宣伝次第のような随分いい加減なものになっている。
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祝、週累計アクセス4,403! 

2020年07月19日 01時10分31秒 | その他
 昨日まで1週間の当ブログ累計アクセスが初めて4,000を超え、4,403になりました。また、このブログは昔から閲覧数も多いのですが、こちらは12,042。こんな長文ばかりのブログを、よくあちこち読んで下さるもの。嬉しいことです。
 去年11月後半から本年度にかけては、コロナ問題渦中の3月前後以外は3000越が当たり前と、発足以来15年の最盛期と言えるのですが、4,000を超えたのはこの15年でも初めてです。読んで下さっている方々、今後もよろしくお願いいたします。
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スペイン、岡崎ウエスカが久保マジョルカ押しのけ昇格  文科系

2020年07月19日 00時48分34秒 | スポーツ
 表記のこと、このブログのサッカー拙稿で08年頃から最も熱心に追いかけてきた岡崎慎司が所属するウエスカが、一部昇格を決めた。同じく一年前に一部に昇格したばかりの久保建英のマジョルカはこの昇格を維持できず、岡崎と入れ替わりになった。スポルティーバのウェブなどが昨日のウエスカ昇格決定ゲームを以下のように詳しく伝えているが、チーム得点王・岡崎の「スーパーヒールシュート」得点で昇格を決めたのである。ちなみに、同記事によれば、スペイン一年目の岡崎の評価は非常に高く、評価の表現も日本とは全く違うものになっている。
「岡崎はエゴイストではない。周りの選手のよさを引き出すことができる。日本では「がむしゃら」「泥臭い」「献身的」と括られるが、スペインの識者の間の表現は「スマート」「賢い」「美しい」と語られる。」
 日本サッカー界はどうも、岡崎を見誤っていたようだ。というよりも、スペインに比べて日本は、岡崎のような選手を見る目がないのかも知れない。
 身体が小さく、技術とコンビネーションに優れたスペインが、以前のドイツやイングランドよりも、岡崎に最も合っていたということなのか。イングランド優勝チームレギュラーという実績で日本選手として初めて中田英寿に並んだと言える岡崎が、34歳にして上げたこの実績! ヒデを抜いて、日本サッカー史上最高の世界的選手になったと言えるのではないか。 

【 7月17日、リーガエスパニョーラ第41節。ウエスカは本拠地エル・アルコラスにヌマンシアを迎え、岡崎の得点などで3-1と下している。この勝利で、自動昇格圏の2位以内が確定。昨シーズン、1部から降格したが、1年で戻ることが決まった。
 1部昇格を自らのゴールで祝した岡崎慎司(34歳)のスペイン挑戦1年目とは――。

 岡崎はウエスカのエースとして、昇格の決め手になっている。36試合出場、12得点。チーム得点王で、数字も文句なしだ。
 昇格を決めたヌマンシア戦のゴールは、その真骨頂だった。
 77分、右サイドに出たパスに走り込んだ味方FWラファ・ミルとの呼吸を合わせる。岡崎自身もゴールへ向かって走りながら、一度ファーに逃げるような動作で敵の裏をとる。そして一瞬で、ニアサイドにスペースを見つけ出す。折り返してきたボールは体の後方に流れたが、体を柔らかく畳み込んで右足のかかとに当て、コースを変えてネットを揺らした。

「Listeza」(利発さ、鋭敏さ)
 岡崎の特徴は、スペインではしばしばそう語られる。
ゴールに向かって、明快なプレーができる。サッカーは人とボールが絶え間なく動き、スペースが広がったり、狭くなったりするスポーツだが、その中で正しい選択ができる。味方の癖を見抜き、敵の弱点をついて、空間を正しいタイミングで動くことができる。準備の時点で、ほとんど勝利=ゴールしているのだ。
 しかし、岡崎はエゴイストではない。周りの選手のよさを引き出すことができる。日本では「がむしゃら」「泥臭い」「献身的」と括られるが、スペインの識者の間では、表現は「スマート」「賢い」「美しい」と語られる。その利発さによって、どんなチームでも、どんなチームメイトとも呼吸を合わせられるのだ。

(中略)
 今シーズンの岡崎のゴールは、クロスに合わせてのヘディングシュートやボレーがほとんどだった。味方とコミュニケーションを取って、そこにボールを呼び込めていた。来たボールをヒットする技術も高いが、それ以上に"味方に愛される"という状況を作り出せていたのだ。
「岡崎のプレーのクオリティは高い」
 ウエスカの選手たちがそう言って信頼するのは、必然だろう。コンビネーションプレーは、戦いを続ける中で最大限に高まっていた。その点、岡崎はスペインサッカー向きだったのかもしれない。
「今シーズン、岡崎の存在は1部昇格において決定的だった。ゴールで貢献しただけではない。静かだが、計り知れない仕事をした」
 スペイン大手スポーツ紙『マルカ』は、岡崎の仕事ぶりを絶賛している。ボールを引き出し、スペースを作り、プレッシングを行ない、リトリートした時の先手となった。味方を生かし、自らも生きる、戦術的役割の精度は特筆に値した。


 岡崎は、リーガ1部の選手になるに値する戦いをやってのけたと言えるだろう。
 ポジションをつかむこと自体、容易ではなかったはずだ。開幕前はレアル・マドリードで得点も記録していた若手FWクリスト・ゴンサレスが先発候補だったが、それを奪い取っている。そしてシーズンを通して主力として戦い、1部昇格を成し遂げた初めての日本人選手となった。VARで7得点も取り消される不運に遭いながらも、雄々しく戦い抜いたのだ。

 2020-21シーズン、岡崎は念願の1部の舞台に立つことになるだろう。ウエスカとは1年契約だが、「昇格した場合は更新する」とのオプションが付いていると言われている。】
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06年の旧稿「富が地獄を作っている」  文科系

2020年07月18日 17時51分20秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など
 以下は、サブプライムバブルが弾けた頃にここに再掲した、弾ける前の予告の拙稿の紹介です。06年以降、この流れが誰の目にも大きく見えてきたはず。この後、南欧、中南米各国など中堅国に失業者があふれて、どんどん貧しくなっていきました。こういう世界貧困の大元アメリカも、貧困が白人労働者にまでも及び、そのねじ曲がった支持でトランプが当選したというのは、今や有名な話。歴史を観なかったり、忘れてしまうと、人は貧しくなるのでしょう。それも今は、世界の人々が・・・。

【 「富が地獄を作っている」   文科系 2008年10月27日 10時48分09秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

24日に前米連邦準備制度議長・グリーンスパン氏の最近の「反省言辞」を批判する文章を書いたら、Unknown氏と称される方からこんなご批判を頂きました。彼はこういった人物を擁護するのでしょうか。何百何千万人の中低所得者を、やっと手に入れた我が家から借金まみれで追い出して、その後半生をずたずたにしてしまったこういう人物を。
グリーンスパンは「ドブに落ちた犬」なんかではありません。サブプライム融資を規制できる立場にいながらそれをせずに、今問題の大証券会社の擁護に努めてきて今の事態をもたらした、アメリカ大統領に次ぐような世界有数の強大なモンスターです。モンスターは誰かが退治しなければいけないでしょう?
『「それ見た事か」とドブに落ちた犬を棒で突いて虐めるのは楽しかろうが、このノリって、まるで文化大革命みたいだ。‥だから「文科系」なんだろうか? そーいや、文革も最初に槍玉に挙がったのは資本家だった。』

これに対して僕は、コメントでこう答えました。
「ここに昔から語ってきたことであって、今の時流に乗って袋だたきに加わるといったものではない。サブプライムの問題性や、『こんな株価だけの好景気っておかしい。保てるはずがない』と、以前からここに書いてきた。06年11月1日『アメリカで重大事が起こっている』や同12月5日『世界二極分化の帰結。富が地獄を作っている』がそれだ。なお僕は、学生時代からその本も読んだが、毛沢東が大嫌いだった」

こういう論争?から思いついて、06年12月5日にここに載せた投稿を改めて再掲することにしました。全文そのままをコピーして、載せさせていただきます。

『 グローバリズム世界経済の下、「競争社会」「二極分化」「上流・下流」などのイヤな言葉が氾濫している。その程度を見つつ、その問題性を根本の所から見つめてみたい。以下、個人の金融資産の数字は野村総研と総務省とのものである。

 日本では最下層三百万円未満の世帯(個人金融資産ゼロ、生活保護世帯なども含む)は十五・四%である。ところが日本より福祉・医療制度が酷いアメリカで、この世帯が五七・九%に跳ね上がる。日本で五七・九%といえば、一千万から一千四百万円までが入り、逆にアメリカでこの金融資産なら八割までが含まれる。他方また、日本で八割と言えば三千万未満までということになる。日本では、ここまでの世帯の平均が千三百万円、総計五一二兆円で、総金融資産の三分の一ほどを占めている。日本という国は、この金額の半分で日本株式市場全てを乗っ取るべく、その五十一%を買い占めることができるというような、大変な庶民金融資産国なのである。ちなみに、日本のこの上の世帯は三千万から三千五百万までで、これが十四・三%、総額二四六兆円となっている。なお、ここまで九二%ほどの世帯で日本金融資産の約半分ほどを持っていることになる。
 さて他方アメリカでは、下層の貧しさに比べて最上層、二・一%の世帯が四七・九%の個人金融資産を持つ。そしてまた、世界一の庶民金融資産国・日本をアメリカのようにしようとする動向がまた進行中だ。「規制緩和」がそれなのだが、その大詰め「郵政民営化」は終始、アメリカの執念のような強い要請に基づく政策課題だった。「死んでいるお金を社会の活性化に活用する」と言えば聞こえは良いが、「ハイリスクハイリターンの時代!もっと投機に」という「政策」が背景にあるのは明らかだろう。こうして、日本にも「退職金を丸々取られた」という世帯が出現している。

 なお、アメリカの金融資産以外を見ておこう。景気を引っ張ってきた住宅バブルが萎み始めた。今までのアメリカは、借金で住宅を買わせ、住宅バブル値上げを見込んでさらに借金を重ねさせ、莫大な累積輸入超過・借金消費生活を謳歌させてきた。そのバブルのランディングが、ハードになるかソフトになるか、これが近年の世界景気の最大課題だと見られてきた。住宅値下がりで、借金だけ残るアメリカの庶民達はこれからどうするのだろう。他人事ながら心配になる。
 アメリカの「需要創出策」・「借金消費景気」はドル本位体制だからできるのであって、他国にとっては「冗談」に過ぎない。双子の赤字でもドルが値下がりしない。家計、国家全て実質禁治産者に成り果てたが、ドルの信用だけで日本や中国から貸し金が入ってくるなんてね?!!


 さて、世界中が、アメリカのように借金ばかりを背負った多くの庶民も含めて「二極分化」になったわけだが、さてこれからどうなる? 僕たちは「最大の経済問題」と大昔から言われてきたことを考えざるを得ない。大部分の国々、人々がアメリカ庶民のように貧しくて物を買えなくなったら、極少数の人々の莫大なお金はこれからどうやって「運用する」のか? この大量な資本に相応しい需要がいったいどこに存在するのだ?ところがどっこい、この金は今や、より有利な投資先を求めた末に、こんなふうに使われているのだ。
 石油の先物買いを思い出していただきたい。同じような金融先物買い・デリバティブ残高は〇四年国際決済銀行発表によると二万五千兆円(実際に動いた「保証金」はその数%。それでも一千兆円!)に上っていると言う。世界に冠たる個人金融資産国・日本のその総額が千五百兆円ほどにすぎないことと対比してみてほしい。また日本の国家予算が五十兆とか百兆とか、さらにトヨタが世界一になったところで、「実体経済」はこれに比べれば全く随分、多寡が知れた金額だ。イヤハヤ!!
 さてこんなふうに凄い資金がだぶついていながら、飢餓率三五%(一日のカロリーが千六百以下の人が国にこれだけいるということ)以上の最貧国は二三にまで増えているし、アフリカのエイズは野放し状態、失業者は世界に溢れ、各国の軍事費・兵器輸出合戦は止まらずに、破産国家が続々現れ、大洪水や水も飲めない人々の群れなどと地球環境は悪化を続けている。それでいて、アメリカ・バブルのソフトランディングさえうまくいくならば、世界の景気は有望なのだそうだ。こういう「実態」が「株主資本主義」の帰結なのである。資金を真に渇望する所には洟も引っかけず、それなりに命を削るようなマネーゲームに勝った者だけが生き残っていく社会。しかも、前者がさらに地獄にはまり込み、後者はさらにより少数の下で太っていくだけ。こんな誰も幸せでない「好景気」って一体何なんだろう。この少数がちょっとの先物買いで、いくつかの株ちょっをつり上げておけば、それが好景気?その先物を実際に買う段になったら、ちょっと買いを強めてから売り抜ければよい?もちろんそういうファンドの隙をうかがっている敵対者も存在しようが、まーとにかく金があるものは原則自由自在。まるで公認の、自作自演インサイダー取引じゃないか。それでも好景気?

 さらに加えて、日米を見てもはっきりしていることだが、普通の先進国ではこういう金持ちがマスコミや国家を握る。すると、国、「公共」というものを彼ら流儀の「危機管理」に使うことに腐心する。こういったことすべてをばく進させてきた日本「規制緩和」社会のあとには、「教育基本法」しかり、「自衛隊法」しかり、そして「九条改訂」しかり。

 「富」が、「地獄」を作っているとしか表現する術を知らない。』 
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効果的なワクチンなど出来ない!  文科系

2020年07月18日 13時44分25秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 FNNオンラインにこんな記事があった。
『Go Toトラベルの見直し報道の中、16日、非常に気になる発言があった。東京大学 先端科学技術研究センターの児玉龍彦名誉教授は16日に、国会で「新型コロナウイルスは、変異のスピードが速い。武漢型、欧米型など次々進化している。国内では、東京型・埼玉型が多い。1人の人から2種類のウイルスも出ている」と発言した。』

この指摘は既に以前からあって、今のコロナへのそれらしいワクチン開発など到底無理ということのようだ。文春オンラインで、ノーベル賞医学者・本庶佑氏はこう警鐘を鳴らしている。

「そもそも、新型コロナウイルスはインフルエンザウイルスやHIVウイルスと同じように、『DNA』ではなく、『RNA』を遺伝子に持つウイルスです。このRNAウイルスの場合、効果的なワクチンを作るのは難しいことが知られています」
 端的に言えば、二重らせんという安定的な構造を持つDNAに対し、一重らせんのRNAはその構造が不安定で、遺伝子が変異しやすい。
「インフルエンザのワクチンを打っても効かないことが多いのは、流行している間に、ウイルスの遺伝子が変異していくからです。遺伝子が変異してしまうと、ワクチンが効きにくくなったり、まったく効かなくなったりするのです」

 新型コロナもインフルエンザ同様、遺伝子が変異するスピードが非常に速いという。
「中国で発生して以来、世界各地に広がっていく過程で変異を繰り返し、5月末ですでに数百の変異があるという報告があります。ワクチンが完成しても、開発当初とは異なる遺伝子のウイルスが蔓延しているかもしれない。そうなると、一部のウイルスにしか効かないことも十分にあり得ます」

 さらに、本庶氏が「首を傾げざるを得ない」と指摘するのが、日本での臨床試験だ。例えば、前出のアンジェスは、大阪市立大学医学部附属病院で臨床試験を開始している。
「日本で開発し、治験までやると言っているグループがありますが、あまりに現実離れした話でしょう」
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喜寿ランナーの手記(296) 白内障手術ブランクは1か月!  文科系

2020年07月17日 08時06分48秒 | スポーツ
 大変だ。一昨日改めて医者に訊いたら、標記のことが判明した。後の右目を手術したのが9日のことだから、まず7月中は走れない。僕にとってこれがとても重大なこととは知らず、医者は軽く命じるけど、それまでよほど循環器能力維持を創意工夫しないと、不可逆的な後退から走れなくなる不安さえ生じてきた。30分以上の階段往復とか、片脚爪先立ち(カカトを浮かしたまま、目一杯の上下)左右各40回とかスクワット(正式の奴)50回とかを、衝撃を排してゆっくりと連続して励むしかない。バイ菌対策の目薬はちゃんとさしているのだから、衝撃が問題なので、それさえ避ければと考えている。まー年寄り発心ランナーとしてこういうことには慣れているのだから、様子を見ながらぼつぼつやるさ。走れなくなったら速歩きでも続けて、ちょっとでも走れる日を待つことにする覚悟をも持って。

 昨日は、髪を洗うために息子がやっている美容院へ行ってきた。「髪洗いは、自分でやってはならず、美容院へ行け」というのも、医者の厳命なのだ。目に菌が入るのを嫌うからである。ただし、この往復はロードレーサーで行って来た。衝撃を与えないように、おおむね30キロ時程度に抑えながら。ただ、頭がすっきりした帰りのメーターに思わず38キロ時などと出ていて、慌てて落とした時もあった。この自転車を買った23年前からずっと変えていないギアの踏み込みで、クランクトップ時近くで足首を縮めてから伸ばす押し足を利かせたら、知らぬうちに出てしまったスピードだった。近年では低ギア比の多い回転数でしか乗らない僕が、珍しくフロント52、リア12という最大ギア比で走ってみたら、なぜか軽く踏み込めてしまったのである。白内障でぼんやりした目がクリアーになって、息子の手によって頭もすっきりしたし、気分が良すぎたということだろう。
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書評 「愛国官僚の叫び」⑤最終回  文科系 

2020年07月17日 07時55分33秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 連載の最終回です。最後まで読んで下さった方、有り難うございました。

【 「従米か愛国か」(5)  文科系 2013年01月07日 12時50分35秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

7 今後の日本に関わって

①孫崎享の提言

『アメリカに潰された政治家たち』の終章は『本当の「戦後」が終わるとき』となっている。そして、その最後のセクション4ページちょっとが『民意が変われば政治が変わる』と題されているから、これが孫崎の今の日本国際政治への望みなのだろう。以下は、そこから抜粋する。最初に言っておけば、外務省の国際情報局長を経て防衛大学教授だった人がこういう考えを持っているというのは、ちょっと嬉しいことと感じたものだ。

『 私は1日も早く、1人でも多くの日本人が、アメリカに対する幻想を捨て、対米従属のくびきから逃れてほしい願っています 』
『 自主路線の政治家は再び現れるのでしょうか。いま、政治家に求められる条件とは以下のようなものだと思います。
 第一に、修羅場から逃げないことです。失うことを恐れないこと。今、政界を見渡して、「すべてを失ってもいいから勝負してやろうじゃないか」という政治家はいません。
 第二に、若い候補であることです。国民は古い政治家を見放しています。これは時代の流れです。若い世代の支持を獲得できる政治家が出てこない限り、風は吹きません。
 第三に、政策的に国民が求めている「原発再稼働反対」「消費増税反対」「TPP反対」を断固やる、という姿勢です。
 以上の条件を踏まえた上で、実現しないという前提であえて申し上げれば、小沢新党が森ゆうこ議員あたりを首相候補に掲げれば、国民的な風が吹く可能性があります。彼女はそれらの条件をすべて備えているからです 』

 読んでいるうちに、孫崎享が鳩山や小沢のブレインの1人のよう感じられないだろうか。

②僕の総体的感想──「アメリカは案外もろいのではないか」

 孫崎は、アメリカの日本への基本戦略をこう述べている。
『 前章で述べたとおり、「在日米軍基地の削減」と「対中関係で先行すること」はアメリカの”虎の尾”です。これで怒らないはずがないのです 』
 この虎の尾2本の本質を、この根強さとか永続可能性とかを、そもそもどう捉えたらよいのだろうか。こんなものが一体なぜ、小沢への執拗な抹殺行動へと繋がるのか。普通に考えれば、産軍政複合体が、仮想敵国設定とかそれに向けての経済大国日本の軍事化とかを図って、その自己増殖を遂げていくことがこの虎の尾の動機だと見られよう。が僕は、それだけとはどうしても思えないのである。
 そもそもこれでは、冷戦後のアメリカの指導者たちが、こう考えていたことと合理的に合わないのである。「冷戦体制が終わった今、他国の軍事力などで怖いものはもう存在しない。本当に怖いのは、日本の(今は多分中国の)経済力である。これからは軍事産業から民需経済に変えるべきである」。そう、軍事力だけが強くても、経済が衰えたらその軍事力さえ維持できないのだ。当時そう語った一人が、ポール・ケネディ、「大国の興亡」。アメリカはなぜ民需に変わらなかったのか。この矛盾にこそ僕は、アメリカの不可思議、不条理を見る。経済力に武力で対抗したら、戦争ばかりしていなければならぬことになるのだし、経済の軍事化はやがて経済自身の停滞を呼ばずにはおかないだろう。今時、こんな政権、戦略に永続性があるわけはないだろうと言いたい。そして、この不条理をどうやったら説明できるかということに、僕は腐心してきた。そして、こんな結論に達した。
 アメリカの伝統的ワスプ(ホワイト、アングロサクソン、プロテスタント)などのエスタブリッシュメントが、その一方は産軍複合体へ、他の一方は現物経済より手っ取り早いファンドによる金転がしに走っただけなのだと。
 そこにさらに、こんなことも加わるのではないか。「アメリカ西部流マチズモ」。象徴的例示で言えば、全米ライフル協会。その精神がアメリカ議会を席巻しているようなものではないのだろうか。いくら銃による悲劇が起こっても、銃への愛着が捨てられない。あげくは「学校自体も銃で武装せよ。要員はわれわれが派遣する」などと言い出す。こういう一種の選民思想と相まって、「アメリカ西部流マチズモ」を他国にひけらかして、相手を押さえつけたような気になる優越感が手放せないのではないか。それだけエスタブリッシュメント2、3,4世が退廃しているのではないかと思いふけっていたものだ。

 定めた目的の実現には恐ろしく強くとも、人間の目的そのものを深くは考えて来なかったとは、アメリカ生まれのプラグマティズム哲学の本質。今のアメリカは退廃し、かつばらばらになっていて、案外もろいと思わざるをえない。】
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「文学国語」こそ「人の力」  文科系

2020年07月16日 10時51分16秒 | 時事問題
15日の中日新聞で知ったが、高校国語の新学習指導要領による二分類国語教育が2022年から本格実施なのだそうだ。例の文学国語、論理国語とか、さらに加えて「実用国語」とかも入ってくる改定である。僕が思うにこの改定は、現代的焚書坑儒風教育とも言うべきものだ。以下のように、誰にでも分かる簡単な理由からである。何よりも、「実用的」「論理的」「文学的」と言う区分を普通の常識的思考・理解で考えてみれば分かることである。
 
 新生児は、目に見え、手で触れるものの言語、その知覚、知識からまず発達していく。それが小学中学年になると、目に見えず、手で触れない物事の言語、知識で飛躍していく。そのころには「僕は何何しました。そして次にまたこれを・・・」等という文章をいくら長く細かく書き連ねられても良い作文とは言えず、接続詞、形容詞とか抽象名詞などがどんどん入ってこなければならない。こういう文章を因果関係に目を付けて書くのが「論理国語」の走りなのだろうが、こういう因果関係というのは、まだまだ目に見える世界に近いのである。例えば、「地面が全部ぬれているから雨が降ったのだろう」とか、小学校の算数とかは、まだまだ目に見える世界の範囲とも言える。
 では、本当に目に見えない人間の世界とは、何か。その典型は人の心の世界だ。目に見え、手で触れる対象がない世界、学問分類でいえば、哲学、史学、文学など、人間文化を扱う世界である。「文学国語」らしいそれとはまさに、この人文科学領域の国語遣いを言うのであろう。心を表すどんな言葉も、目には見えないし、手でも触れない。「あれがまさに誠実を表す行動だ」などとは言えても、それで誠実という言葉が分かったことにはならない。ちなみに、旧制帝大以来の大学の学問は、この人文科学と、社会科学、自然科学の三分類があったはずだ。こうして、こんなことが言える。

 論理国語がどれだけ優秀でも文学国語(の世界)に弱ければこうなる。営業が出来ない。組織を動かせない。力のある政治家にはなれない。そもそも、人育て、子育てさえ苦手になるはずだ。なお、このブログでも書いてきたが「国語科は学問であるか」というよく出る問いは、この世界のある部分の学問性を疑うものである。ちなみに、こういう問いの底深さは哲学上の大問題にも行き着いてきたものだが、それについてもこういう回答でたりると考えてきた。
 文学国語の世界には数学のような答えが出ない問い、領域もあるが、それでも人はそれぞれの総合判断力によって蓋然性でも何でも、結論を出し、決断していかねばならない問題ばかりを抱えていくものである。進路、就職、職場の人間関係、結婚、子育て、離婚、・・・人生の重要なことこそ実は全て文学国語がらみである。他人を知り、自分を知る事を通して、人間に通じていくのは、文学国語を駆使していく作業そのものだと言える。
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書評「愛国官僚の叫び」④  文科系

2020年07月16日 02時04分29秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 今回は、民主党新政権の首班になる寸前に起こった小沢一郎の失脚を解説した部分を扱う。いわゆる、西松建設・政治資金規正法違反事件なのだが、この小沢は、師匠である田中角栄のロッキード事件裁判をば、ただ一人全部傍聴した国会議員なのだ。

【 「従米か愛国か」(4)  文科系 2013年01月06日

6 小沢一郎の”油断”

①新政権発足直前の問題発言からたった7日で秘書の逮捕
 
 以下は、孫崎の「アメリカに潰された政治家たち」からの抜粋を中心として進むが、事の起こりは民主党新政権09年9月発足前の小沢の発言であったと言う。夏の総選挙を控えた2月24日、強気になっていた小沢は奈良県でこんなことを記者団に語ったのだ。
 「米国もこの時代に前線に部隊を置いておく意味はあまりない。・・・極東におけるプレゼンスは第七艦隊で十分だ。あとは日本が自らの安全保障と極東での役割をしっかり担っていくことで話がつくと思う」・・・・この発言を、朝日、読売、毎日など新聞各紙は一斉に報じます。(中略 ここに、共同通信のアメリカ関係者の反発発言が細かく紹介されている)・・・発言から1か月も経っていない09年3月3日、小沢一郎の資金管理団体「陸山会」の会計責任者で公設秘書も務める大久保規と、西松建設社長の國澤幹雄ほかが、政治資金規正法違反で逮捕される事件が起きたのである。』
 僕は、こういうことが書ける所に、この著者のアンテナの鋭さを見たいと思う。「この発言は危ないぞ」という認識力が情報部門責任者を務めてきた人らしいと。ちなみに、僕がいままでも紹介してきた孫崎の持論「アメリカの虎の尾2本」のうちの一方を、小沢の発言が踏んだということになるのである。発言と秘書逮捕との間隔も、孫崎が言うように「発言から1か月も経っていない」どころか、たった7日目のことではないか。それも政権交代が噂された超微妙な時期の、次期首相を噂された人物の発言とその秘書逮捕となのである。

 さて今振り返れば、この発言と秘書逮捕によって民主党初代小沢内閣の目が消えたわけである。日本政界にとっては、新政権の話題性も相まって戦後ちょっとないような大変な出来事だったと言えるのではないか。問題の疑惑というのがまた、3年以上も前の話だ。まるで、彼のアラを見つけ出し、取っておいて、このときとばかりに告発すると、まるで首相の目をなくするための「予防拘禁」のようなものに見えないか。挙げ句の果てが、今日現在までずるずると小沢を引っ張り続けるなどあらゆる手を尽くしても、有罪にできなかったと言うおまけまでついた話である。米CIA得意の手法の一つなのであろうか。

②反撃に出た小沢
 
 孫崎はこう語り継いでいく。
『 ここから小沢はアメリカに対して真っ向から反撃に出ます 』
 この反撃部分は全文抜粋しておく。外務省最高の情報責任者であった孫崎が「アメリカの2本の虎の尾」と見てきたものを相次いで踏み越えていこうとした小沢が、今の僕には痛快この上なく見えるからだ。
『 鳩山と小沢は、政権発足とともに「東アジア共同体構想」を打ち出します。対米従属から脱却し、成長著しい東アジアに外交の軸足を移すことを堂々と宣言したのです。さらに、小沢は同年12月、民主党議員143名と一般参加者483名という大訪中団を引き連れて、中国の胡錦濤主席を訪問。宮内庁に働きかけて習近平副主席と天皇陛下の会見もセッティングしました。
 鳩山首相については次項で述べますが、沖縄の米軍基地を「最低でも県外」に移設することを宣言し、実行に移そうとします。
 しかし、前章で述べたとおり、「在日米軍基地の削減」と「対中関係で先行すること」はアメリカの”虎の尾”です。これで怒らないはずがないのです 』

③僕の感想

 僕の感想を少々。小沢は合理的なだけに考えすぎて、敵を見誤ったのだと思う。戦後半世紀の冷戦体制が終わってもこれまでの軍事力以上のものを世界に持ち続けているというアメリカの不条理な意図をば、普通の人間の判断力で解釈しすぎたと。僕にはそう思えて仕方ないのである。他方それに加えて、こんな気もする。
 田中角栄はアメリカ、ニクソン大統領にぎりぎり先駆けて日中国交回復をなしたことへの報復としてロッキード事件の憂き目を見た。彼の電撃的な日中国交回復とは、その寸前にこの動きを察知したキッシンジャー国務長官が他国政治家と同席の場所でものすごい呪いの言葉を発して罵倒したもの。このことは、いまやもう有名な話だ。小沢一郎は、師匠角栄のロッキード裁判を全部傍聴したたったひとりの国会議員である。そこで僕はこんな推察もする。小沢が若いころ、すでにこんな決意をしていたのではないかと。いつか力をつけて、日中友好をもっと進めて見せよう。それまではすべて我慢だ。そして47歳で自民党幹事長になった。「まだまだ早い」。50歳を超えた1993年にベストセラーになった「日本改造計画」を世に出しても、まったくアメリカの意向に沿う内容だけだった。そして、新政権確実となって、かつ冷戦後20年近くなったという勇み足から、アメリカの世界戦略をば常識的に判断しすぎたのではなかったか。さらに加えて、日本の検察がここまでアメリカに抱き込まれているとは、内部の者以外には決して分かることではなかったはずだ。孫崎も書いているように『西松建設事件・陸山会事件を担当した佐久間達哉・東京地検特捜部長(当時)も同様に、在米日本大使館の一等書記官として勤務しています』という事実があったとしても。

(続く) 】
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書評「愛国官僚の叫び」③ 文科系

2020年07月15日 10時59分14秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 全5回連載の3回目です。なんせ、中東各国の大使などを経て、外務省国際情報局長。その上で、防衛大学教授を務めたお方が歴代日本政府の「対米従属」とそこから来た「日本貧困化」を根本から描くのだから説得力があります。彼の認識の出発点が、ハーバード大学研究員、外交官としてイラク、イラン滞在、やがてイラク戦争・狂乱に行き会わせてのその実体験などなどにあるに違いないという、そういう説得力満載なのです。

【 「従米か愛国か」(3) 文科系  2013年01月05日 09時04分20秒 | 国内政治・経済・社会問題

5 対米自主派の消滅

①歴代首相

 孫崎享「戦後史の正体」は端的に言えば、歴代首相を従米と自主派に分けて見せる作業と言って良い。同「アメリカに潰された政治家たち」は、題名の通りに潰された自主派を描き、併せて「戦後最大の対米追随政権」として野田内閣を描くことで終わっている。こういう書の中から僕は、自分の最大関心事項「冷戦以降」90年代からの米世界戦略転換をここまで読み込んできたと言える。
 さて、このアメリカ半世紀ぶりのこれほど不自然な世界戦略転換は、日本政財官マスコミ界などとも軋みを起こして、当然これを引きずり回すことになっていく。首相で言えば以降は、たった4人の自主派(側面)が出たというのがその軋みに当たるのだろう。クリントンと1対1を含めて何時間も『対等以上の態度で交渉』と書かれた宮沢喜一。『「日米同盟」よりも「多角的安全保障」を重視』したがゆえに『つぶすための工作』を仕掛けられたと、細川護煕。この細川は、佐川急便の借入金返済疑惑で辞任したのだった。ついで、福田康夫への表現はちょっと長くて、複雑なものだ。こんなふうに。なお彼の辞任も急すぎて何か不可解なものだったことは、僕もよく覚えている。
『福田康夫首相時代、米国はアフガニスタン戦争への自衛隊ヘリコプターの派遣を強行に要求しました。さらにその後、破綻することが確実な金融機関への巨額な融資を求めました。福田首相は辞任することによって、この要求を拒否したようです』
 この金融機関とはリーマンショック後のファニーメイのことなのであって、認めていれば数兆円の金をどぶに捨てることになっていたはずだと、孫崎は書いている。
 そして最後の自主派が、言わずと知れた普天間の鳩山由紀夫だが、これ以外、特に小泉前後からはもう、「従米」のオンパレードとされている。小渕、森、小泉、安倍、麻生、菅、野田。

②官僚

 細川、福田、鳩山らの上記のように不思議な辞任には当然アメリカが関わっていよう。なんせ、90年代以降にCIAが扱う仕事の4割が国際経済問題なのであって、当時のその最大ターゲットが、以上に見てきたように日本だったのであるからだ。
 さて、政治家の次には、日本政治のシンクタンクと孫崎も呼ぶ官僚が狙われることになったということだ。強面の元駐日大使アマコストが90年代半ばにこう語っていると、孫崎は書く。
『「政治環境から見て、これまでより規制緩和がしやすくなったのに、現実の前進はまことに微々たるものである。その理由を求めるのはむずかしくない。最も巧妙かつ執拗な抵抗は、他ならぬ官僚機構によるものである。日本の経済と政治を牛耳ることを許している規制緩和制度を抜本的に変えようという動機は、官僚側にはほとんどない」』
 ここに1998年官僚制度の牙城大蔵省で有名な「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」が摘発され、官僚たたきの声がかつてなく激しくなっていった。

『わずかに残っていたシンクタンクとしての官僚機構を崩壊させられた日本からは、国家戦略を考える組織が完全に消滅してしまったのです』

③マスコミ

 こういう官僚から日々レクチャーを受けているに等しいマスコミ政治記者などでは、その自主派も、落日を迎えることになった。孫崎は自分自身の中央公論との関わりを一例に取って、これを説明するのだ。
『私は2003年、「中央公論」5月号に「『情報小国』脱出の道筋」と題した評論を書き、間接的な形でイラク戦争を批判しました』
『私は中公新書『日本外交 現場からの証言』で山本七平賞をいただいてから、中央公論社から毎年2~3本の論評を掲載しますといわれていたのです。しかし2003年5月の間接的な批判ですら受け入れられなかったのでしょう。このあと中央公論から論評の依頼はなくなりました』
 「アメリカに潰された政治家たち」に3人の座談会が収められていて、そのうちのひとり高橋洋一は、こう語っている。大蔵官僚出身で、内閣参事官(総理補佐官補)をやった人物だ。
『政治家の対米追従路線の中で、霞ヶ関ではアメリカのいうことを聞く官僚グループが出世していく。彼らは自分たちの立場、利権を守るために、アメリカは何もいっていないのに「アメリカの意向」を持ち出す。とくに財政や金融に限っていうと、そうしたケースが非常に多い。霞ヶ関では財務省のポチができるとそれが増殖する。メディアもポチになって、ポチ体制が確立すればその中から出世する確率が高くなる。そうするとさらにポチ集団が膨らんでいくという構図です』

 なんのことはない。従米派増殖は出世が動機なのだ。そして、在任期間が長かった首相、吉田茂、池田勇人、小泉などを見ると、アメリカの支持がその最大要件であったように、アメリカこそ今の日本の権力者たちを作っていると、孫崎は述べているのである。

(続く) 】
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いつもの、「日本軍慰安婦、政府二通達」   文科系

2020年07月15日 06時40分15秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など
 このブログでは、日朝関係史、南京虐殺問題をいつも続けて来ましたが、慰安婦問題でもある決定的資料をいつも、そのまま再掲して来ました。偽情報を大量に流して、世を偽りで染めて、煙に巻こうという大々的な世論工作が行われている我が国。河井法相事件もそうですが、潤沢な政治資金を背景として金に飽かした政治暴力がこの日本に蔓延している気がします。以下の文書には、強制のことも軍自身が以下原文中でこのように認めているのです。

『故サラニ軍部諒解等ノ名儀ヲ利用シ為ニ軍ノ威信ヲ傷ツケ且ツ一般民ノ誤解ヲ招ク虞アルモノ或ハ従軍記者、慰問者等ヲ介シテ不統制ニ募集シ社会問題ヲ惹起スル虞アルモノ或ハ募集ニ任スル者ノ人選適切ヲ欠キ為ニ募集ノ方法、誘拐ニ類シ警察当局ニ検挙取調ヲ受クルモノアル等注意ヲ要スルモノ少ナカラサルニ就テハ・・・・』

 朝日新聞がガセネタ報道を謝罪してからは、まるでこの問題自体がなかったように流されがちですが、あれは朝日のミス。こう、対処すれば良かったのです。
「あれはミスだったが、慰安婦問題は厳然と、かつ大がかりに存在していた。単なる売春婦と言い逃れたとしてさえ、『陸軍省副官発』文書にも示されて来たように、帝国陸軍設立慰安所という事実の歴史的意味合いは全く違ってくる」
 存在した国の汚点をないものにはできません。そんなことを許せば、世の中(への国民の認識)がフェイクニュースで成り立っていき、結局「1987年の世界」。金があるから声も大きいものがマスコミを握り、世論を自由に操れる世の中は、庶民が不幸を不幸とも思えなくなる社会です。


【 慰安婦問題、当時の関連2通達紹介  文科系2014年09月22日

 以下二つは「日本軍の慰安所政策について」(2003年発表)という論文の中に、著者の永井 和(京都大学文学研究科教授)が紹介されていたものです。一つは、1937年12月21日付で在上海日本総領事館警察署から発された「皇軍将兵慰安婦女渡来ニツキ便宜供与方依頼ノ件」。今ひとつは、この文書を受けて1938年3月4日に出された陸軍省副官発で、北支那方面軍及中支派遣軍参謀長宛通牒、陸支密第745号「軍慰安所従業婦等募集ニ関スル件」です。後者には、前に永井氏の説明をそのまま付けておきました。日付や文書名、誰が誰に出したかも、この説明の中に書いてあるからです。

『 皇軍将兵慰安婦女渡来ニツキ便宜供与方依頼ノ件
 本件ニ関シ前線各地ニ於ケル皇軍ノ進展ニ伴ヒ之カ将兵ノ慰安方ニ付関係諸機関ニ於テ考究中処頃日来当館陸軍武官室憲兵隊合議ノ結果施設ノ一端トシテ前線各地ニ軍慰安所(事実上ノ貸座敷)ヲ左記要領ニ依リ設置スルコトトナレリ
        記
領事館
 (イ)営業願出者ニ対スル許否ノ決定
 (ロ)慰安婦女ノ身許及斯業ニ対スル一般契約手続
 (ハ)渡航上ニ関スル便宜供与
 (ニ)営業主並婦女ノ身元其他ニ関シ関係諸官署間ノ照会並回答
 (ホ)着滬ト同時ニ当地ニ滞在セシメサルヲ原則トシテ許否決定ノ上直チニ憲兵隊ニ引継クモトス
憲兵隊
 (イ)領事館ヨリ引継ヲ受ケタル営業主並婦女ノ就業地輸送手続
 (ロ)営業者並稼業婦女ニ対スル保護取締
武官室
 (イ)就業場所及家屋等ノ準備
 (ロ)一般保険並検黴ニ関スル件
 
右要領ニヨリ施設ヲ急キ居ル処既ニ稼業婦女(酌婦)募集ノ為本邦内地並ニ朝鮮方面ニ旅行中ノモノアリ今後モ同様要務ニテ旅行スルモノアル筈ナルカ之等ノモノニ対シテハ当館発給ノ身分証明書中ニ事由ヲ記入シ本人ニ携帯セシメ居ルニ付乗船其他ニ付便宜供与方御取計相成度尚着滬後直ニ就業地ニ赴ク関係上募集者抱主又ハ其ノ代理者等ニハ夫々斯業ニ必要ナル書類(左記雛形)ヲ交付シ予メ書類ノ完備方指示シ置キタルモ整備ヲ缺クモノ多カルヘキヲ予想サルルト共ニ着滬後煩雑ナル手続ヲ繰返スコトナキ様致度ニ付一応携帯書類御査閲ノ上御援助相煩度此段御依頼ス
(中略)
昭和十二年十二月二十一日
         在上海日本総領事館警察署 』


『 本報告では、1996年末に新たに発掘された警察資料を用いて、この「従軍慰安婦論争」で、その解釈が争点のひとつとなった陸軍の一文書、すなわち陸軍省副官発北支那方面軍及中支派遣軍参謀長宛通牒、陸支密第745号「軍慰安所従業婦等募集ニ関スル件」(1938年3月4日付-以後副官通牒と略す)の意味を再検討する。
 まず問題の文書全文を以下に引用する(引用にあたっては、原史料に忠実であることを心がけたが、漢字は通行の字体を用いた)。

 支那事変地ニ於ケル慰安所設置ノ為内地ニ於テ之カ従業婦等ヲ募集スルニ当リ、故サラニ軍部諒解等ノ名儀ヲ利用シ為ニ軍ノ威信ヲ傷ツケ且ツ一般民ノ誤解ヲ招ク虞アルモノ或ハ従軍記者、慰問者等ヲ介シテ不統制ニ募集シ社会問題ヲ惹起スル虞アルモノ或ハ募集ニ任スル者ノ人選適切ヲ欠キ為ニ募集ノ方法、誘拐ニ類シ警察当局ニ検挙取調ヲ受クルモノアル等注意ヲ要スルモノ少ナカラサルニ就テハ将来是等ノ募集等ニ当リテハ派遣軍ニ於イテ統制シ之ニ任スル人物ノ選定ヲ周到適切ニシ其実地ニ当リテハ関係地方ノ憲兵及警察当局トノ連携ヲ密ニシ次テ軍ノ威信保持上並ニ社会問題上遺漏ナキ様配慮相成度依命通牒ス』


 さて、これを皆さんはどう読まれるでしょうか。なお、この文書関係の北支関連国内分募集人員については、ある女衒業者の取り調べ資料から16~30歳で3000名とありました。内地ではこうだったという公的資料の一部です。最初に日本各地の警察から、この個々の募集行動(事件)への疑惑が持ち上がって来て、それがこの文書の発端になったという所が、大きな意味を持つように僕は読みました。】
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書評 愛国官僚の叫び ②  文科系

2020年07月14日 02時04分35秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 昨日の続きです。よろしく。

【 「従米か愛国か」(2) 文科系 2013年01月04日 03時17分27秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

3 冷戦直後、日本こそアメリカの最大脅威だった

 このことについて孫崎は以下のような象徴的例などを挙げていく。今から見れば、当時の日本経済力は恐ろしく強かったということであろう。
 一つは、ニューヨークのロックフェラーセンタービルが89年に三菱地所に買収されたこと。そして、コロンビア・ピクチャーズがソニーに買収されたこと。当時のコロンビアは米国文化の華である映画会社において、ロックフェラーセンターと同様に名門中の名門であった。また米国産業の中心である自動車と鉄工業も日本に追い抜かれていたのだと、孫崎は解説を加えていく。

 併せて、孫崎のこの書にはこんな1991年の世論調査結果が記載されている。シカゴ外交評議会の「米国にとっての死活的脅威は何か」という以下四項目の選択調査である。「日本の経済力」、「中国の大国化」、「ソ連の軍事力」、「欧州の経済力」。この四つの順位が、一般人では多い方からこの通りで、60,40,33,30%となっているが、指導者層はちょっと違って、こうである。63,16,20,42%。つまり指導者層内部では、こんな結論になったと言えるのだ。これからのアメリカ、怖いのは他国の軍事力などではなく、その経済力の方がよほど怖い、と。軍事スパイ機関のはずのCIAが、以降経済スパイ機関の様相を強めていく背景はこんな所に求められると、孫崎は述べている。
 さて、こういう情勢認識からこそ、冷戦後の本音の方針が出てくるのである。

4 アメリカの本音シフトと陽動作戦

 こうして、冷戦後のアメリカには、軍事力を半減したその力を経済に回し日本に対抗せよという意見も多かったということだ。が、結局は軍事力を維持増強し、世界の覇者となる道を選んだと、孫崎は述べていく。ちなみに孫崎は、当時検討されていたもう一方の別の道として、マクナマラ元国防長官のこんな上院予算委員会発言を紹介している。
『ソ連の脅威が減少したいま、3000億ドルの国防予算は半分に減らせる。この資金は経済の再構築に回せる』

 さて、軍事力維持強化の道を選んだとすると、経済的脅威・日本にはどう対していったのか。アメリカの片棒を担がせ、そこに金も使わせることによって日本経済を発展させないようにするという道なのである。「ならず者国家」と呼ばれたイラク、イラン、北朝鮮などと戦うべく、応分の負担をせよということなのであった。最初の例がこれ、91年に始まった湾岸戦争で日本が130億ドル負担してもなお「あまりにも遅すぎ、少なすぎ。人も血も、出せ」というようなものだ。この道は次いで、イラク戦争への協力、参戦へと繋がっていく。
 この後の20年、日本が先進国では唯一名目経済成長率がゼロとなった原因がここにあったのかと、僕などは改めて振り返っていた次第だ。

 なお、90年当時の日本の経済力をアメリカにとってこれほどの脅威と捉えていれば、今の中国はアメリカにとってもう怖くて堪らないはずだ。軍事増強の根拠として最大限に利用しつつあるのだろう。そしてその論理が、日本にも押しつけられることになる。日中間に波風が立つわけだ。アジア友好外交を進めた民主党政権や、新政権発足直後の小沢訪中団が憎まれたわけもここにあったのだろう。膨大な相対的貧困家庭数を抱えて、何とも不条理なアメリカだななどと、腹立ちを伴って思わざるを得ないのである。 (続く)】
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書評 愛国官僚の叫び ①  文科系

2020年07月13日 04時24分19秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 旧拙稿の再掲です。日本官僚には珍しい「愛国の士」の「声涙ともに下る」、悲憤慷慨の書と言える。この人物がこともあろうに、外務省の国際情報局長、退職後は防衛大学教授だったというのだから、人物はいるものだ。彼がアメリカのこのような本質を見抜くことができたのは、その硬骨もさりながら、イランなど米中東戦略が暴発したその渦中真っ只中に外務官僚として派遣されていた日々が出発点になっているに違いないのである。5回連載になる。

【 「従米か愛国か」(1) 文科系 
2013年01月03日 16時26分45秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など

1 前置き

 このブログをやり出してから7年間ずっと、一つの疑問があった。近年の世界情勢認識において誰が考えても最大の問題のはずだが、50年ぶりの冷戦終結後もアメリカの軍事力はなぜ減っていかなかったのかという問いだ。なんせ、リーマンショク以降も、世界の恐慌状態やますます深刻になる貧困層対策を尻目に、冷戦時の2倍を優に超える軍事充実なのである。世界の不幸の大本のひとつと述べても良いのではないか。これは日本にとっても最大の政治情勢問題なのであって、ここの正しい認識を抜きにしては日本のどんな政治・経済、社会問題も何一つ正確には分析できないという性格を有していると考えていた。そこへ格好の著者の好著が出て来たから、去年すぐに買って、読み始めていた。孫崎享の「戦後史の正体」と「アメリカに潰された政治家たち」である。前者は昨年8月、後者は9月の第一版第一刷発行である。悪書を読むのは人生最大の浪費と言うが、この著者と著作が僕の問題意識から言ってその正反対のものではないかと、まず示しておきたい。
 
 孫崎享はこういう人物だ。43年生まれで外務省に入省し、ウズベキスタンやイランの大使を歴任し、国際情報局長から、最後は防衛大学教授を務めていた。日本最高レベルの情報掌握者であって、かつ冷戦直後の93~96年にウズベキ大使を務めていたとなれば、冷戦後のアメリカ、その恥部などを最もよく知っている人物と言えるだろう。そういう人物が退職後の晩年に近くなって反米物を書くとすれば、これは一読の価値ありというものである。この2冊の本をしばらく紹介していきたい。

2 冷戦後の米最大課題二つ

 はじめに、冷戦後のアメリカと、その対日政策の始まりの部分を見てみる。以下『 』は、僕のエントリーでいつものように著作の抜粋だ。「戦後史の正体」第6章「冷戦終結と米国の変容」からとったものである。

 孫崎はこの章の書き出し近くで、こんな文章を引用している。後のアメリカ統合参謀本部議長コリン・パウエルが、議長就任の前年1988年春にソ連のゴルバチョフから打ち明けられた話なのである。
『1988年春、ゴルバチョフは私に「将来私は冷戦を終わらせるつもりだ。あなたは新しい敵を探さなければならない」と述べた。信じられない。しかし彼は本気だ。私は口にこそ出さなかったがこう思ったものである(中略)米軍がこれまで維持してきた膨大な兵士や兵器は不要になります。ソ連を仮想敵国として作られてきた軍事戦略も意味のないものになります』
『こうした状況のなかで米国が考えるべきことは次のふたつです。ひとつは「ソ連が崩壊したあとも、われわれは強大な軍事力を維持する必要があるだろうか。もし維持しようとした場合、国民の支持が得られるだろうか」という問題です。もうひとつは「日本の経済力にどうやって対抗するか」という問題です』

 終戦直後の日本の戦後方向を、アメリカ、占領軍が途中から転換させ始めたというのは有名な話である。足腰立たぬように押さえつける方向から、冷戦に対して活用していこうと。そのためにこそ、天皇を中心とした戦前からの種々の体質なども、一定温存し始めたのであった。これは、戦後史の定説になっているはずだ。その時以来の、日本の方向転換が冷戦終結によってなされ始めたと、そういうことなのである。どんなふうにして? (続く)】
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掌編小説 「日本精神エレジー」   文科系

2020年07月12日 10時56分19秒 | 文芸作品
「貴方、またー? 伊都国から邪馬台国への道筋だとか、倭の五王だとか・・・」
 連れ合いのこんな苦情も聞き流して、定年退職後五年ほどの彼、大和朝廷の淵源調べに余念がない。目下の大変な趣味なのだ。梅の花びらが風に流れてくる、広縁の日だまりの中で、いっぱいに資料を広げている真っ最中。
「そんな暇があったら、買い物ぐらいしてきてよ。外食ばっかりするくせにそんなことばっかりやってて」
「まぁそう言うな。俺やお前のルーツ探しなんだよ。農耕民族らしくもうちょっとおっとり構えて、和を持って尊しとなすというようにお願いしたいもんだな」

 この男性の趣味、一寸前まではもう少し下った時代が対象だった。源氏系統の家系図調べに血道を上げていたのだ。初老期に入った男などがよくやるいわゆる先祖調べというやつである。そんな頃のある時には、夫婦でこんな会話が交わされていたものだった。
男「 源氏は質実剛健でいい。平氏はどうもなよなよしていて、いかん」
対してつれあいさん、「質実剛健って、粗野とも言えるでしょう。なよなよしてるって、私たちと違って繊細で上品ということかも知れない。一郎のが貴方よりはるかに清潔だから、貴方も清潔にしてないと、孫に嫌われるわよ」
 こんな夫に業を煮やした奥さん、ある日、下調べを首尾良く終えて、一計を案じた。
「一郎の奥さんの家系を教えてもらったんだけど、どうも平氏らしいわよ」
男「いやいやDNAは男で伝わるから、全く問題はない。『世界にも得難い天皇制』は男で繋がっとるんだ。何にも知らん奴だな」
妻「どうせ先祖のあっちこっちで、源氏も平氏もごちゃごちゃになったに決まってるわよ。孫たちには男性の一郎のが大事だってことにも、昔みたいにはならないしさ」
 こんな日、一応の反論を男は試みてはみたものの、彼の『研究』がいつしか大和朝廷関連へと移って行ったという出来事があったのだった。

 広縁に桜の花びらが流れてくるころのある日曜日、この夫婦の会話はこんな風に変わった。
「馬鹿ねー、南方系でも、北方系でも、どうせ先祖は同じだわよ」
「お前こそ、馬鹿言え。ポリネシアとモンゴルは全く違うぞ。小錦と朝青龍のようなもんだ。小錦のがおっとりしとるかな。朝青龍はやっぱり騎馬民族だな。ちょっと猛々しい所がある。やっぱり、伝統と習慣というやつなんだな」
「おっとりしたモンゴルさんも、ポリネシアさんで猛々しい方もいらっしゃるでしょう。猛々しいとか、おっとりしたとかが何を指すのかも難しいし、きちんと定義してもそれと違う面も一緒に持ってるという人もいっぱいいるわよ。二重人格なんてのもあるしさ」
 ところでこの日は仲裁者がいた。長男の一郎である。読んでいた新聞を脇にずらして、おだやかに口を挟む。
一郎「母さんが正しいと思うな。そもそもなんで、南方、北方と分けた時点から始めるの」
男「自分にどんな『伝統や習慣』が植え付けられているかはやっぱり大事だろう。自分探しというやつだ」
一郎「世界の現世人類すべての先祖は、同じアフリカの一人の女性だという学説が有力みたいだよ。ミトコンドリアDNAの分析なんだけど、仮にイブという名前をつけておくと、このイブさんは二十万年から十二万年ほど前にサハラ以南の東アフリカで生まれた人らしい。まーアダムのお相手イヴとかイザナギの奥さんイザナミみたいなもんかな。自分探しやるなら、そこぐらいから初めて欲しいな」
男「えーっつ、たった一人の女? そのイブ・・、さんって、一体どんな人だったのかね?」
一郎「二本脚で歩いて、手を使ってみんなで一緒に働いてて、そこから言語を持つことができて、ちょっと心のようなものがあったと、まぁそんなところかな」
男、「心のようなもんってどんなもんよ?」
一郎「昔のことをちょっと思い出して、ぼんやりとかも知れないけどそれを振り返ることができて、それを将来に生かすのね。ネアンデルタール人とは別種だけど、生きていた時代が重なっているネアンデルタール人のように、仲間が死んだら悲しくって、葬式もやったかも知れない。家族愛もあっただろうね。右手が子どもほどに萎縮したままで四十歳まで生きたネアンデルタール人の化石もイラクから出たからね。こういう人が当時の平均年齢より長く生きられた。家族愛があったという証拠になるんだってさ」
妻「源氏だとか平氏だとか、農耕民族対狩猟民族だとか、南方系と北方系だとか、男はホントに自分の敵を探し出してきてはケンカするのが好きなんだから。イブさんが泣くわよホントに!」
男「そんな話は女が世間を知らんから言うことだ。『一歩家を出れば、男には七人の敵』、この厳しい国際情勢じゃ、誰が味方で誰が敵かをきちんと見極めんと、孫たちが生き残ってはいけんのだ。そもそも俺はなー、遺言を残すつもりで勉強しとるのに、女が横からごちゃごちゃ言うな。親心も分からん奴だ!」

 それから一ヶ月ほどたったある日曜日、一郎がふらりと訪ねてきた。いそいそと出された茶などを三人で啜りながら、意を決した感じで話を切り出す。二人っきりの兄妹のもう一方の話を始めた。
「ハナコに頼まれたんだけどさー、付き合ってる男性がいてさー、結婚したいんだって。大学時代の同級生なんだけど、ブラジルからの留学生だった人。どう思う?」
男「ブ、ブラジルっ!! 二世か三世かっ!?!」
一郎「いや、日系じゃないみたい」
男「そ、そんなのっつ、まったくだめだ、許せるはずがない!」
一郎「やっぱりねー。ハナコは諦めないと言ってたよ。絶縁ってことになるのかな」
妻「そんなこと言わずに、一度会ってみましょうよ。あちらの人にもいい人も多いにちがいないし」
男「アメリカから独立しとるとも言えんようなあんな国民、負け犬根性に決まっとる。留学生ならアメリカかぶれかも知れん。美意識も倫理観もこっちと合うわけがないっ!!」
妻「あっちは黒人とかインディオ系とかメスティーソとかいろいろいらっしゃるでしょう?どういう方?」
一郎「全くポルトガル系みたいだよ。すると父さんの嫌いな、白人、狩猟民族ということだし。やっぱり、まぁ難しいのかなぁ」
妻「私は本人さえ良い人なら、気にしないようにできると思うけど」
一郎「難しいもんだねぇ。二本脚で歩く人類は皆兄弟とは行かんもんかな。日本精神なんて、二本脚精神に宗旨替えすればいいんだよ。言いたくはないけど、天皇大好きもどうかと思ってたんだ」
男「馬鹿もんっ!!日本に生まれた恩恵だけ受けといて、勝手なことを言うな。天皇制否定もおかしい。神道への冒涜にもなるはずだ。マホメットを冒涜したデンマークの新聞は悪いに決まっとる!」
一郎「ドイツのウェルト紙だったかな『西洋では風刺が許されていて、冒涜する権利もある』と言った新聞。これは犯罪とはいえない道徳の問題と言ってるということね。ましてや税金使った一つの制度としての天皇制を否定するのは、誰にでも言えなきゃおかしいよ。国権の主権者が政治思想を表明するという自由の問題ね」
妻「私はその方にお会いしたいわ。今日の所はハナコにそう言っといて。会いもしないなんて、やっぱりイブさんが泣くわよねぇ」 
男「お前がそいつに会うことも、全く許さん! 全くどいつもこいつも、世界を知らんわ、親心が分からんわ、世の中一体どうなっとるんだ!!」
と、男は一升瓶を持ち出してコップになみなみと注ぐと、ぐいっと一杯一気に飲み干すのだった。


(当ブログ06年4月7日に初出。そのちょっと前に所属同人誌に載せたもの)
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