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ブッシュのイラク増派の行く末は その2  ‥‥千里眼‥‥

2007年02月18日 13時31分50秒 | Weblog
 アメリカ軍増派直後、新統一司令部を設置し、アメリカ軍とイラク治安部隊・イラク警察を統合的に運用できる体制を整え、大規模掃蕩作戦を展開してきた。
 ところが、増派以前に較べてテロ(一般的にはそう表現されているのでそれに従うが、私はこの表現には異議がある)は逆に激化してきている。大きな事件だけを取り上げても、以下に見るとおりである。1月24日からバグダッド市内での大規模な掃蕩作戦が行われているが、日本ではその状況の報道はなされていない。

・中部カルバラ地区では、1月20日米兵5人襲われ、1人死亡、4人拉致されその後殺害。武装集団は米軍服を着て米兵身分証明書(おそらく模造品)を持ち、2箇所の検問を通過、州庁舎内に入り込み、実行におよんだのだ。この日だけで、26人の米兵が死亡。

・1月28日、バグダード西部のスンニ派の住むアディル地区で、女子高に迫撃砲が打ち込まれ、生徒5人死亡、約20人負傷。同日、サドルシティーのシーア派地区では、爆発で13人死亡。同じく同日、北部キルクーク地区では、自動車爆弾でクルド人16人死亡。

・イラク内務省発表では1月の死者数は1971人。実際の死者数はこれを上回るだろう。

・2月1日には中部ヒッラ地区で、連続自爆テロにより61人死亡。この日だけで、合わせて1日だけで計81人死亡。同日のアメリカ軍・イラク軍の掃蕩作戦では、シーア派の聖地ナジャフ近郊で、武装勢力を約250人殺害。おそらくこれはシーア派のサドル派の民兵であろう。

・2月3日、バグダッド市内のシーア派居住区のサドリア地区でのトラックの自爆テロで、135人死亡、300人以上負傷。一回の爆発の犠牲者としては、イラク開戦後、最悪の死傷者数となった。

・2月4日 バグダッドのイスラム教スンニ派居住のアダミヤ地区複数の迫撃砲が打ち込まれ、15人死亡 50人以上負傷。

・2月5日、バグダッド市内で2台の自動車爆弾で18人死亡、100人負傷。

・2月12日、バグダッド中心部のシーア派の多いショルジャン市場での3台の自動車爆弾テロで79人死亡、165人負傷。さらに1キロ離れた別の市場でも爆弾の爆発で9人死亡し21人が負傷。

 上記以外にも、連日爆弾テロが起こっている。アメリカ軍の増派で、本当にこの悲惨な状況をしずめることができるのだろうか。今のところは逆に激化しているとしか思えない。
 アメリカ軍の掃蕩作戦では、必ず無関係の市民がまきこまれ殺される。イラク人のなかにアメリカに対する憎悪を拡大・増幅していくことであろう。これが、アメリカ軍に対する爆弾テロの温床を拡大していくことになる。

 スンニ派の抵抗勢力・武装勢力は、一つにまとまった組織を作っているとは思えない。小さな組織がそれぞれ、ばらぱらに活動しているとしか思えない。それに較べるとサドル派の民兵組織はまだまとまっているようだ。が、これとて爆弾テロをおこなっている者たちは、やはり統一指導のもとに組織的に行動しているようには見えない。それだけに、掃蕩も困難をきわめるであろう。

 ブッシュは今回の増派で、治安を回復し、イラク政権に治安の権限を以上して、自分の任期中に、アメリカ軍撤退の条件を作るつもりであろうが、それはブッシュの楽観的な願望にすぎない。私はできないと思っている。ある程度表面的には、治安回復に成功したかのような状況を作ることは、ひょっとすると作れるかもしれない。それとて、シーア派とスンニ派の内紛はアメリカ軍の撤退後に再燃するに違いない。憎悪の連鎖はいまや鎮めることができないほど強くなっているのだ。さらに世界にテロを広げていく基盤をブッシュは作ったのだ。

 治安回復のための協力を他国に頼めないブッシュとしては、あれほど無視をし馬鹿にしていた国連に頼る以外には、道はないのだと思う。おそらく、史上最低の大統領という汚名をつけられて任期を終えることになろう。そして、アメリカの中東に対する影響力はかってないほどに後退することになろう。おそらくブッシュ後には民主党の政権が成立するであろう。その有力候補者は皆イラクからの早期撤兵を主張しているが、イラクの混乱を収拾するアメリカの責任をどう果たすのであろか。ブッシュが悪いのだではすまされる問題ではないのだ。

 
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4 コメント

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質問です (文科系)
2007-02-18 15:21:20
この混乱以外にも、ブッシュとマリクの仲違いとか、イラン告発とか、三艘目の空母派遣とか、あまりに酷いので質問します。

ブッシュって、背景など訳は分かりませんが、イラクをぐちゃぐちゃにしてイランを巻き込もうとする、今や「敵は本能寺」の確信犯になったのじゃないですか?
本日の別投稿への僕のコメントにサイトアドレスを紹介した田中宇氏などは完全にそう語っていますけど、どうなんでしょうね?

ご意見をお聞かせ下さい。
合わせてのお願いですが、別項「六か国協議」での僕の質問にもご意見をお聞かせ下さい。
返信する
文化系さんへ (千里眼)
2007-02-18 22:16:12
 この問題は、「その3」として取り上げるつもりでした。が、ここでその主要部分を資料の引用のない形で触れておきます。
 ずうっと以前にネオコンについての連載をこのブログに投稿しました。そのなかで触れましたが、「イラクのフセイン政権を倒し、‥‥それを皮切りに‥‥『民主化』・『自由化』するという中東全体の改変政策」をネオコンは唱えていました。基本的にブッシュはそれに同意していたはずです。この「ドミノ理論」はイラク戦争開始前後にいろんな形で報道されました。イラクの次はシリアとイランであったのです。

 そして、そのために意図的に、フセイン政権を倒した直後に、フセイン政権の幹部がシリアに逃れている、シリアは許せないという情報がネオコン系メディアを通して流されました。

 そして今、イランへの非難がブッシュの口から公式に語られています。一隻の空母を増派し、アラビア湾内に3隻の空母が常駐するという形になりました。この1隻の米原子力空母に匹敵またはそれ以上の航空機戦闘能力を持っている国はわずかロシア・フランス・イギリス・中国しかありません。一隻で巨大な戦闘能力を持った空母を3隻も配置したのです。イラクには空母を常駐させる必要はないので、明らかにイランに対する圧力のための配置です。

 写真まで示してイランがイラク武装勢力に高性能爆弾を供与しているというブッシュのやり口は、イラク戦争開始直前のやりかたそのものです。

 6カ国協議のでまとまった内容を見るとき、ブッシュのそれまでの北朝鮮政策と異質なものを感ずるのは、私だけではないでしょう。今までの政策を変更してまで、6カ国協議をまとめたのは、対イラン政策のためとしか思えません。私はそう思っています。アメリカ国内でも、ブッシュがイラン戦争を始めそうだという懸念が高まってきている、という報道がなされています。

 しかし、アメリカには当面のイラク問題で手一杯で、やりたくてもイラン戦争をやる余力はないでしょう。アフガンでもタリバンが勢力を回復してきています。アフガンへも3000の兵力増強を決定したばかりです。戦争をちらつかせながらイランへの恫喝を強めていると、私は見ています。ただ、追い詰められたブッシュの狂気がこわいですね。

 田中宇氏の見方は参考にはなりますが、同意はしかねます。「ネオコンの中にはわざと米国を衰退させようとしている勢力がいる」と彼は推測し、「イラク戦争の失敗、世界民主化計画による地域不安定化・反米化によって、アメリカの覇権の失墜をブッシュやネオコンが狙っている、という見解はあまりにも穿ち過ぎではないかと思います。たしかにそう考えればブッシュとネオコンの行動は整合性があることは認めますが。

 中東情勢と関連して、今後の見通しと、私自身の願望とこうあるべきという戦略を語りたい、それを「その3」の締めくくりにするつもりでしたが、もう少し情勢の推移を見てから投稿します。
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一言追加 (千里眼)
2007-02-19 09:32:08
 一言追加します。田中宇氏のイラク戦争についての見解は、結果論ではないかという感じを受けています。
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千里眼さん、ありがとう (文科系)
2007-02-19 13:47:12
質問に答えてくださってありがとうございました。

現在のアメリカの行動や、田中氏の最近のイラン論や、これらがあまりにも僕らの国際関係論の常識からかけはなれているので、質問してみたのです。

貴方のお説はある程度は理解できましたが、現在の異常性が余りにも酷いので、まだ半信半疑です。アメリカ全体が本当にイランを攻めないと言い出すまでは、全く油断ができないという心境で、それがいつになるのやら、また本当に攻めることがないのか、怖々と見ているというところです。
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