これは、29日にエントリーした『サッカー川崎の「絶対的」強さはここ』の続きに当たるエントリーになる。僕はここで「川崎の、今ここでパスが受けられるという『フリー』の概念が、他のチームよりももっと深く探究されたものだ」と書いた。ところで、この0対4を反省した名古屋の吉田豊がこう述べていた。
『僕らのプレスが甘すぎた。もっと厳しく行かなければいけなかった』
さて、これで川崎のパスを名古屋は切れるだろうか。半分は正解だが、あと半分は難しいと思う。これは既に有名な話だが、川崎のパスは必ずしも「身方の足下」に出すものではない。ほんの小さなスペースに、出し手と受け手双方合意の上で早いパスを出す場合も多いのだ。憲剛の後継者・大島僚太が小さなスペースを使うことができるというのは有名な話で、相手が気づかない小さなスペースに走り込む人間に川崎特有の速いパスを出す時、マーカーがそれについて行けるだろうかという話になるのである。29日のエントリーでも、2010年代表パラグアイ戦における憲剛と香川の「パス・レシーブ」を描いたが、これはいわゆる「足下に出すパス」ではない。「小さなスペースにダッシュしていく身方の足下に出すパス」なのだ。これに対して、相手マーカーは予め「そこに走っていく」とは分からず、まず走る前の位置に詰めるのだから一瞬遅れるのが当たり前だろう。こんな相手のやり方に対してただ「密着マーク」というだけでは、止められるものではない。「このレシーバーが今どのスペースを使おうとしているのか」が分からなければ、プレスが遅れる理屈になるのである。
4日のこの戦いも、残念ながら名古屋は勝てそうもない。こちらが気づきにくい小さなスペースにダッシュしていく相手チーム選手の鼻先に出すパスをカットできるというのでなければ、パスもシュートも止められないのである。
Jのいくつかのチームが、川崎のこれを一定阻止できるようになれば、日本の世界順位は一桁になるのではないか。
『Jのいくつかのチームが、川崎のこれを一定阻止できるようになれば、日本の世界順位は一桁になるのではないか』
以前から横浜とか、今は鳥栖とかが、川崎のこの得意技を意識して取り入れていると思う。マリノスは攻撃中心に、鳥栖は守備の面で取り入れていると思うのだが、攻守どちらかでも取り入れれば、そのチームは他方も当然意識し始めることになる。
名古屋相手の鳥栖の2得点などでは、1得点目の酒井の受け走りとクロス、これを受けた林のスペース明けなどにそう感じた。林がニアでヘッド得点に走る時、初めマーカーを先に走らせてやり過ごしておいて、その後にできたスペースにゆっくりと走り込み、何か余裕を持ってファー側に長く鋭いヘッドを放っていた。
マリノスとサガンとは、まだまだ強くなる。
中村憲剛が川崎のレジェンド・ブラジル人選手、ジュニーニョにしごかれ、苦労を重ねて学んできたもの。それが今の川崎、「1ゲーム平均3得点狙い」を作り上げてきた大元です。ついでに言っておくと、新人当時の香川真司の日本選手としては希有な特長を最初に見いだしたのもこの憲剛の目でした。この二人がフル代表のなかで練習を重ねて、2010年ごろには珍しい形の得点を挙げている。このことを29日に細かく書いています。