母が膝の手術で入院した病院に行ってきましたが、同室の人は皆、同じ病気でしたから、和気藹々とお喋りしていましたですね。
どうして女性は、ああもお喋りが好きなんでしょう。男性の病室なんか、静かなもんですが……。
ということで、本日は和気藹々という――
■Jazz Giants '58 (Verve)
ヴァーヴが十八番にしていたジャムセッション物の1枚ですが、そうした企画にありがちなド派手なブロー合戦は聞かれず、むしろ地味な仕上がりで忘れられないアルバムです。
録音は1957年8月1日、メンバーはハリー・エディソン(tp)、スタン・ゲッツ(ts)、ジェリー・マリガン(bs)、オスカー・ピーターソン(p)、ハーブ・エリス(g)、レイ・ブラウン(b)、ルイ・ベルソン(ds) という豪華絢爛なのですが――
A-1 Chocolate Sunday
スタジオで即興的に作られたブルースでしょうか、まずレイ・ブラウンの豪胆なベースが蠢き、ルイ・ベルソンのシンプルなドラミングに乗って、ジェリー・マリガンが口を挟む出だしが、なかなかに暗黙の了解というモダンジャズの醍醐味になっています。
そして、そのまんま続いていくバリトンサックスのアドリブに楽しい合の手を入れるハーブ・エリスのギター、ハーモニーっぽく絡むスタンゲッツもシブイですが、ギターのアドリブに入ってから、ようやく音を出してくるオスカー・ピーターソンの味わい深さが絶品で、実に良い雰囲気になっていくんですねぇ♪
う~ん、グルゥ~~~ヴィ! ミディアムテンポながら、強烈なビートを生み出しているリズム隊は最高で、ブラシとスティックを自在に使い分けるルイ・ベルソンが流石の存在感だと思います。
演奏はスタン・ゲッツが意想外の暖かさ、ハリー・エディソンの甘くて楽しいフレーズの連発に酔わされていきますが、やはりリズム隊が出色! それにしてもこんな地味な演奏がド頭に置かれているアルバムも、そうそうは無いでしょうが、聴くほどに虜になってしまうのでした。
A-2 When Your Love Has Gone
通常はスローテンポで演じられるスタンダード曲を、ここではアップテンポの快演に仕立てています。
まずオスカー・ピーターソンの快適なイントロからテーマはリズム隊だけの演奏ですが、既にアドリブになっていきますし、絶妙のタイミングで入ってくるスタン・ゲッツが、クール&ウォームの極み♪ 本当に歌心しかないフレーズの積み重ねは、天才の証でしょうか。
またハリー・エディソンが何時もながらの分かり易いモダンスイング節に撤すれば、ジェリー・マリガンは自分が中心となった絡みのアンサンブルを使って、場を盛り上げていきます。もちろん素敵な歌心と豪快なスイング感は忘れていません。
おまけにスタン・ゲッツが二度目のアドリブ登場まであるのですから、たまりませんねぇ♪ 何度聞いても楽しくて、ホンワカしてくる演奏だと思います。
A-3 Candy
モダンジャズではリー・モーガン(tp) の決定的なバージョンが残されているスタンダード曲も、このメンツにかかると一味違います。
まずオスカー・ピーターソンがテーマメロディを巧みに変奏し、ハリー・エディソンが暗黙の了解というアドリブに入りますが、背後ではゲッツ&マリガンというハーモニーの天才が絡んできますから、油断出来ません。
そしてスタン・ゲッツが神業的なアドリブの入り方を聞かせてくれます。もう、こんなフレーズは二度と出せないような気がするほどですが、この何気なさが天才の成せるところでしょう。もちろん続く全てのパートも最高! スタン・ゲッツは神様です。
さらにハーブ・エリスの地道なギターも感度良好ですし、終始、快適過ぎるブラシに撤するルイ・ベルソンの素晴らしさ! これがジャズだと思います。
もちろん最終パートはジェリー・マリガンが悠々自適のアドリブで、ディキシー調の展開も楽しい大団円が素敵です。
B-1 Ballad Medley
Lush Life / Gerry Mulliang
Lullaby Of The Leavs / Harry Edison
Makin' Whoopee / Ray Brown
It Never Entered My Mind / Stan Getz
ヴァーヴのジャムとくれば、バラードメドレーがお約束♪ ここでも各人が真摯に自己主張してくれますが、特筆すべきはオスカー・ピーターソンの伴奏の上手さです。
またスタン・ゲッツが絶好調! ここでのクールな佇まいは、もはや後光が射している感じですねぇ。
B-2 Woddyn' You
オーラスはこのセッションで一番派手な演奏です。
まずルイ・ベルソンのシンバルワークが強烈ですし、ハーブ・エリスがチャカポコのギター叩き!
ですからオスカー・ピータソンが火の出るようなアドリブを披露すれば、ジェリー・マリガンもちょっとムキになったような熱血バリトンが珍しいところです。しかしハリー・エディソンは、あくまでもマイペースという楽しさ優先モードですから、スタン・ゲッツも心置きなく天才性を発揮! 私のような凡人は、もはや聴き惚れるのみで、感動に絶句するのでした。
あぁ、もっとゲッツが聴きたい!
ということで、ジャムセッションの丁々発止と暗黙の了解が同時に楽しめる、素晴らしい纏まりのアルバムだと思います。
ちなみにタイトルの「'58」は、発売が1958年だったからと言われていますが、やはりこの時代でもスタン・ゲッツの天才性は、群を抜いていたと思います。