アジア方面に出張していた若い者から、某国製のブートDVDを土産にどっさりいたたぎました。露天で売っているらしいのですが、だいたい1枚が4~500円程度との事でした。
けっこう、美味しいブツがありましたですねぇ。
それらは近々、ご紹介するとして、本日は――
■Miles Davis Live At The 1963 Monterey Jazz Festival (MJF)
またかっ! と言われそうですが、マイルス・デイビスの蔵出しライブ音源です。入手したのは昨年ですが、聴いたのは今日というバチアタリ……。
なんというか、中身の想像がついてしまう演目がねぇ……。
でも聴いてみれば、やっぱりシビレます♪
録音は1963年9月20日、モンタレージャズ祭からのライブセッションで、メンバーはマイルス・デイビス(tp)、ジョージ・コールマン(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムス(ds) というレギュラーバンドです――
01 Waiting For Miles
一瞬、新曲か!? と思ったのですが、タイトルどおり、マイルス・デイビスがステージに現れるまでの間にメンバーがチューニングしている様子です。
ドンドンパンパンというトニー・ウィリアムスのドラムス、ワイワイガヤガヤ、ゲタゲタ笑う観客かスタッフ、突如、沸き起こる拍手喝采――
02 Autumn Leaves
という中で、いきなりマイルス・デイビスのミュートが泣きじゃくりです。曲は御馴染みの「枯葉」ですが、テーマメロディはグッと抽象化されていて、ほとんどアドリブだけという展開の中をロン・カーターが執拗に絡み、ハービー・ハンコックが上手いコードワーク、そしてトニー・ウィリアムスのテンションの高いブラシ♪
時期的には欧州巡業の後だけに、バンドの纏まりも一層素晴らしく、それゆえにマイルス・デイビスも好き放題が出来ている感じです。
う~ん、この緊張感!
アドリブの最終盤にはトニー・ウィリアムスがスティックに持ち替えて、バシッとキメたところからビリビリと電気が走ったかのような盛り上がりで、ジョージ・コールマンにアドリブが受け渡される瞬間が、最高にカッコイイ!
そしてここからはリズム隊が一段と自由主義というか、ジョージ・コールマンを翻弄しようと暴れるのですが、ジョージ・コールマンだって、一筋縄ではいきません。正統派の道筋を外すことなく紡ぎだされるアドリブの潔さ!
するとハービー・ハンコックが、これまた素晴らしいアドリブに突入です。一瞬、ビル・エバンスになったりするのはご愛嬌ながら、綺麗なタッチとリアルタイムでは斬新な音選びが、今日でも古びていないと思います。
演奏はこの後、ロン・カーターのアルコ弾きのアドリブも用意されていますが、マイルス・デイビスのラストテーマ吹奏が、なぜか「死刑台のエレベーター」を思わせると……。
03 So What
マイルスのバンドでは定番中の大定番ながら、テーマ部分で聴かれるトニー・ウィリアムスのスピードがついたブラシが強い印象を残します。
もちろんアドリブパートでも、トニー・ウィリアムスが大暴れ! ビシバシ、ドンドンと炸裂するドラミングを聞いているだけで満足してしまいます。マイルス・デイビスも必死なんですが、ケツを叩かれている雰囲気が濃厚で、どっちがリーダーか分からない感じです。ついにはアドリブに窮する瞬間までも!
ところがジョージ・コールマンが凄いです。何時もは流れすぎるフレーズが、ここではワザとギスギスさせているようなところもありますし、トニー・ウィリアムスの挑発にも安易に乗らない意気地が感じられます。アドリブ構成も、けっこう考えていたような……。
ですからハービー・ハンコックが、なかなか奔放に聞こえてきます。あぁ、熱くなりますねぇ~~~♪ 生涯の名演じゃないでしょうか!?
04 Stella By Starlight
盛大な拍手の中、ハービー・ハンコックがすぅ~っとイントロを弾いていくところが、素敵です。続くマイルス・デイビスのテーマ吹奏が、これまた絶妙の思わせぶりですからねぇ~♪
ところが、なぜか笑っている観客が???
まあ、それはそれとして、テーマメロディをそれほど崩さないマイルス・デイビスの上手さがニクイほどです。そしてそれが何時の間にかアドリブに変幻しているのですから、流石です。観客からも思わず拍手が♪ ただし肝心なところでトランペットの音程が危なくなったり、息切れがあったりするのも、ライブの醍醐味でしょうか。
またジョージ・コールマンの緩~いアドリブが逆に心地良いのも珍しく、途中からテンポアップしてグルーヴィな展開に持っていくのも楽しいところ♪
そしてハービー・ハンコックのパートは静謐で柔らかなムード♪ 何時もながら酔わされますが、逆にロン・カーターのベースソロは性急で、う~ん、いったい何があったのか!?
おまけにマイルス・デイビスのラストテーマ吹奏が、完全にハズシ気味……。う~ん……。
05 Walkin'
で、オーラスは大激走のモード大会! 観客からも待ってましたの大歓声です。
ところがマイルス・デイビスのアドリブが投げやりというか、どうでもいいようなフレーズしか吹いていません。せめてブルースしてくれてもバチはあたらんですよ。
しかし続くトニー・ウィリアムスがド迫力の大車輪ドラムソロ! こんなにストレートに敲きまくったのは珍しいんじゃないでしょうか。もちろん途中では一瞬テンポを落としますが、それでもどうに止まらないエモーションの爆発が痛快です。
さらにジョージ・コールマンが大熱演! リズム隊もツケイル隙がないというか、まるっきり、この人のリーダーセッションという様相になるんですねぇ~♪ アク抜きされたシーツ・オブ・サウンド! どうにもとまらないという山本リンダ現象です。
またハービー・ハンコック以下、リズム隊だけの演奏も爽快ですから、親分の乱入も虚しく響くのでした。
06 The Theme
前曲のラストテーマから続くバンドテーマは、些か気抜け気味ですが、マイルス・デイビスが早く帰りたいという感じに聞こえてしまいます。トニー・ウィリアムスなんか、スットコドッコイのヤル気が空回り……。
ということで、なんか今までお蔵入りしていたのが頷ける演奏です。つまりマイルス・デイビスが後半で息切れしているんですねぇ。
しかし前半の「枯葉」と「So What」は、やっぱり凄い出来になっていますし、後半はバンドメンバーの頑張りが存分に楽しめます。
同じ編成でのライブ盤「イン・ヨーロッパ」と比べると、バンドがよりアグレッシブになっていると思いますし、この後の「マイ・ファニー・バレンタイン」や「フォア&モア」のスマートな仕上がりよりは、些かドロ臭いあたりに魅力を感じます。
気になる音質は良好な立体ステレオ♪ ミックスはベースが大きくなっていますので、迫力があります。
ふっふっふっ、これだからマイルス・デイビスのライブ盤は、やめられないという事です。