勤務地は雪国だというのに、今年も雪が少なくて、本音は大助かり♪
とはいえ、こんな異常気象では、後が恐くなるばかりです。
ということで、本日は――
■The Poll Winners Ride Again ! (Contemporary)
昨日はモノラル盤の優位性について、ちょっと触れましたが、ステレオバージョンが圧倒的に良いというアルバムも、確実に存在しています。
例えば本日の1枚は、録音の良さでは定評のあるレーベルで作られていますから、モノラルとステレオの両バージョンで素晴らしい鳴りが楽しめるはずですが、アルバムプロデュースの本質を思えば、ステレオバージョンに軍配が上がると思います。
というのは、この作品は当時の楽器別人気投票で首位に立っていた3人が、対等の立場で奥儀を極めんとしたインタープレイ集ということから、左にレイ・ブラウン(b)、真ん中にバーニー・ケッセル(g)、そして右にシェリー・マン(ds) が定位したミックスが、最高の快感♪
しかもボリュームを上げると、左右のスピーカーから飛び出した音が空中で交じり合い、立体的な桃源郷が現出するのです。
ちなみにこうした企画が成立した経緯については、以前にアップした「ザ・ポール・ウィナーズ」と「ザ・ポール・ウィナーズ・スリー!」をご一読願いたいのですが、このアルバムは彼等の 2nd アルバムとして、最高傑作と認められる事も多い名盤です。
録音は1958年8月19&21日、演奏はもちろん、録音を担当したロイ・デュナンの芸術的手腕も堪能出来ます――
A-1 Be Deedle Dee Do
バーニー・ケッセル作曲によるブルースで、イントロからテーマにかけて、早くも3人の妙技が味わえます。特に繊細に震えるようなところから野太い4ビートウォーキングに入っていくレイ・ブラウンのベースが、たまりません。
バーニー・ケッセルも完璧なアドリブ構成ですし、レイ・ブラウンのアドリブのバックで聞かせるコードワークも、ステレオバージョンが完全に気持ち良いのでした。
A-2 Volare
有名なイタリア歌謡曲が、素晴らしいアレンジで楽しめる名演です。特に右チャンネルから聞こえるシェリー・マンのドラムスは大技・小技の連発で、最高!
さらに左チャンネルのレイ・ブラウンが、これまた絶妙のベースワークで彩りを添えれば、アドリブパートに入ってからは、正統派4ビートでスイングしまくるバーニー・ケッセルが凄いです。
まさにこれこそが、第一人者の輝きでしょうねっ♪
A-3 Spring Is Here
バーニー・ケッセルがリードして、有名スタンダードが案外素直に演奏されていきますが、レイ・ブラウンのベースが一筋縄ではいきません。終始、繊細な音使いで唯我独尊の響きが痛快なんですねぇ♪ スローな情感が素晴らしいです。
このあたりはオスカー・ピーターソンのピアノトリオと似たような展開でもありますが、シェリー・マンのドラミングが特に個性的なので、如何にも白人的スマートさが全面に出た仕上がりのようです。
A-4 The Surrey With The Fringe On Top
いきなり炸裂するシェリー・マンのドラムス、そしてレイ・ブラウンのリードベースがあって、バーニー・ケッセルが暴れのフレーズ! こうして始るスタンダードの解釈は、三者三様の思惑が見事に合致した名演になっています。
バンドが一丸となったグルーヴは豪快ですし、バーニー・ケッセルのアドリブも力強く、グイノリのレイ・ブラウンにビシバシとキメを入れるシェリー・マン! 緻密なアレンジも嫌味になっていませんから、流石だと思います。
特にクライマックスでのシェリー・マンのドラミングは、凄いですねぇ~~~♪
B-1 Custard Puff
レイ・ブラウンのオリジナルということで、作者のベースが大活躍なんですが、決して独善的ではなく、トリオの各人に見せ場が用意されたアレンジも秀逸です。
シェリー・マンのスティックも冴えわたり、煽られたバーニー・ケッセルが暴走気味になるところも微笑ましく、しかし全体はレイ・ブラウンのベースが手綱を握った名演だと思います。
こういう、ほどよいグルーヴが、このバンドの持ち味かもしれません。
B-2 When The Red, Red Robin Comes Bob, Bob Bobbin' Along
なんとも長ったらしい曲名ですが、一応はスタンダードらしいです。私はここで初めて聴いた曲なんですが……。
肝心の演奏は凝ったアレンジが、些か??? テンポがコロコロ変わって落ち着きがイマイチでしょうか。それでもバーニー・ケッセル主体のアドリブパートでは、トリオの絡みも豪快にキマッています。やはり名人は違うということなんでしょうねぇ。
B-3 Foreign Intrigue
バーニー・ケッセルのオリジナルで、ちょっと哀愁のラテン歌謡曲みたいですが、本質はモダンジャズがバリバリという快演になっています。
アップテンポでブッ飛ばすトリオの勢いは素晴らしく、シェリー・マンがキメまくってのドラミングは、特に痛快です。
B-4 Angel Eyes
説明不要の大人気スタンダードということで、聴く前からちょいと楽しみな演奏なんですが、まずバーニー・ケッセルが一人舞台のテーマがシブイ♪ サビから入ってくるドラムス&ベースも心地良く、縦横無尽にアドリブするレイ・ブラウンのベースの鳴りが、さらに印象的です。
B-5 The Merry Go Round Broke Down
オーラスは軽快なアップテンポの楽しい演奏です。
アレンジも疎かになっていませんが、シャープなシェリー・マンのドラミングが強烈です。またゴマカシを極力避けようと奮闘するバーニー・ケッセルも憎めませんねっ♪
ということで、各チャンネルから鳴っている楽器の分離、エッジの鋭さは最高で、ステレオバージョンを大音量で聴けば、迷わずに陶酔する瞬間までも楽しめます。
というような事を書きながら、実はモノラル盤は所有していません。ですから、相等に無責任かもしれませんが、このアルバムに限っては、ステレオ盤が優位だと確信しているのでした。
暴言、ご容赦願います。