OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

熱血ライブのグリフィン

2008-01-15 17:18:48 | Weblog

今日も寒かったですね、まあ、冬は寒くて当たり前ですけど……。

そして、こういう時こそ、熱い演奏が聴きたくなります――

The Man I Love / Johnny Griffin (Polydor / Black Lion)

1970年代前半のジャズ喫茶では決定的な人気盤! ジャズロックやクロスオーバー、あるいはフュージョンに浮かれていようとも、これが鳴り出せば、忽ち店内はハードバップに雰囲気一変でした。

告白すれば、私はこのアルバムでジョニー・グリフィンに邂逅したのです。

録音は1967年3月30~31日、コペンハーゲンのカフェ・モンマルトルでのライブセッションで、メンバーはジョニー・グリフィン(ts)、ケニー・ドリュー(p)、ニールス・ペデルセン(b)、アルバート・ヒース(ds) というイケイケのカルテット――

A-1 The Man I Love
 ガーシュイン兄弟が書いた名曲で、ジャズ史的にはベニー・グッドマンやコールマン・ホーキンスの名演が決定版とされていますが、これだって負けていません。
 アルバート・ヒースの熱血ドラムソロによるイントロからジョニー・グリフィンがテーマーメロディを豪快にブロー! ピアノとベース、そしてドラムスの適度なバラバラ感が異様にキマッています。
 そしてアドリブパートではジョニー・グリフィンがひたすらに疾走し、リズム隊が追いかけるような展開ながら、実は4人がここでもバラバラをやりながら、ひとつの目標に収束しようと苦闘する様が限りなくハードバップしています。
 あぁ、ついつい音量を上げてしまいますねぇ。
 そしてケニー・ドリューが、あの歯切れの良いピアノタッチと強烈なストライド奏法も交えた熱演ですから、たまりません。歌心よりも過激な熱血が、大いに魅力です!
 またニールス・ペデルセンの速射砲のようなベースソロの背後ではアルバート・ヒースがしぶといブラシ♪ 途中からは完全にベースの独立独歩になりますが、今度はシンバルで挑みかかるアルバート・ヒースのテンションも高く、そのまんま、ジョニー・グリフィンのド派手なフィナーレに繋げる展開も、自然体で完璧だと思います。

A-2 Hush-a-Bye
 原曲はユダヤ人モードの伝承歌らしいのですが、とにかく哀愁のメロディラインが人気の秘密♪ ですからジョニー・グリフィンの悠然とサブトーンを使ったテーマ演奏が、まず魅力満点です。
 そしてアドリブ先発のケニー・ドリューは最初、テンポをフリーにしながら暗中模索……。ここでアルバート・ヒースがスティックを落とすミステイクも憎めません。
 しかし自己の進路を決めてからは、グルーヴィな4ビートで歌いまくりの好フレーズが連発され、気分は最高♪
 こうしてグッと盛り上がったところで再登場するジョニー・グリフィンが、また素晴らしいです。なにしろベースだけをバックにグリグリの息遣いというサブトーンがド迫力過ぎて、音が歪んで強烈な印象です。
 もちろん歌心と熱いエモーションの噴出も凄まじく、ニールス・ペデルセンも過激なツッコミを入れたりしますから、その後に入ってくるアルバート・ヒースも魂のドラミングです。
 う~ん、これぞジャズ! ハードバップの真髄だと、聴く度に感銘を受けてしまうのでした。

B-1 Blues For Harvey
 ジョニー・グリフィンが書いたグルーヴィなハードバップ曲ですから、豪快な演奏は当たり前ながら、正直、ちょいとダレ場もあるのが真相です。
 というか、テーマメロディからアドリブに入っていくまでのジョニー・グリフィンが煮えきらず、リズム隊の必死の煽りも、些か虚しい雰囲気で……。
 しかし、だんだんに熱くなっていくバンド全体の勢いは流石で、ジョニー・グリフィンの支離滅裂気味のアドリブも格好がついていくのです。
 このあたりはケニー・ドリューも同様で、テンションの高いノリは健在ながら、イマイチ纏まりの無いアドリブは??? アルバート・ヒースの投げやり気味のドラミングが、逆に味わい深いほどです。

B-2 Sophisticated Lady
 ところが続くこの演奏が素晴らしい♪ デューク・エリントリンが書いた気品あふれるメロディを優しく、そしてハードボイルドに吹いていくジョニー・グリフィンの大名演! サブトーンの鳴りも素晴らしく、またケニー・ドリューのコードワークも最高という伴奏が光ります。
 あぁ、全く歌っているとしか思えないアドリブは、豪快で繊細な表現の極地かもしれません。
 そしてリズム隊だけのパートになってからは、ニールス・ペデルセンのベースが一段と素晴らしく、ケニー・ドリューも雰囲気に浸りきったピアノを聞かせてくれるのです。もちろんアルバート・ヒースは控えめな好演♪
 ですから最後にもう一度、暖かくて凄みのあるテナーサックスが鳴り出せば、これがジョニー・グリフィンの真髄と納得してしまいます。
 最高!!!

B-3 Wee
 ビバップ時代からの定番曲が、ここでは猛烈なスピードで演じられています。もちろん、こうしたテンポはジョニー・グリフィンの得意技ですから、一瞬の淀みもなく修羅場を駆け抜ける爽快感!
 2分ほどの短い演奏ですから、多分、バンドテーマだったんでしょうねぇ。観客も拍手喝さいで、アルバムは終了します。

ということで、些か荒っぽい部分も聴かれますが、それこそがライブの熱気と魅力だと思いますし、ジャズは本来、一発の瞬間芸ですから、その場の勢いが記録されたレコードこそが、真髄と言えるかもしれません。

こういう姿勢、私は好きですねぇ。

ちなみにこのアルバムは、A面がジャズ喫茶の定番でしたから、B面を聴いたのは自分で買ってからの事でした。そしてしばらくは「Sophisticated Lady」ばかり聴いていましたですね。

コメント
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