本日も忙しかったです。
昨日、自分の周囲だけ時間が早く流れていると書きましたが、実は自分がノロくなっているから、そう感じるだけかも……。
つまりアインシュタイン博士の説は、間違っていなかったんですねぇ……。
自分では懸命にやっているつもりでも、全てに対する処理能力は落ちているんでしょうか……。時の流れは、やっぱり無慈悲です。
ということで、本日も時の流れを無視して輝く演奏を――
■Al And Zoot / Al Cohn Quitet Featuring Zoot Sims (Coral)
似た者同士とか気の合う仲間というのは、やっぱり良いです。本人達も、周囲をも和やかにしてくれますからねぇ~。
ジャズ界においては、アル・コーンとズート・シムズの名コンビが特に有名で、テナーサックス奏者としてのスタイルと実力は伯仲していましたから、機会がある度に一緒にチームを組んで演奏していました。もちろんレコーディングも多数残されていますし、駄演がほとんど無いというのも、驚異的でした♪
ただし2人の性格は正反対という噂です。
アル・コーンは律儀で作編曲が得意、ズート・シムズは酒好きの無頼派らしいのですが、一介のジャズファンとしては、ライブでもレコードでも、演奏さえしっかりしていれば、結果オーライです。
このアルバムはモダンジャズ全盛期の1957年に作られた傑作盤で、時代の流れはハードバップ~ファンキーの爛熟時代に向かっていましたが、ここでは白人系の和みスイングが展開されています。
録音は1957年3月27日、メンバーはアル・コーン(ts,cl)、ズート・シムズ(ts,cl)、モーズ・アリソン(p)、テディ・コティック(ds)、ニック・スタビュラス(ds) という、多分タイトルどおりに、当時のレギュラーバンドだったと思われます――
A-1 It's A Wonderful World
スタンダード曲ですが、割と単調なメロディなので、アドリブの冴えが演奏の良し悪しを決定づけそうな雰囲気です。そして期待どおりの、グルーヴィで楽しい演奏に仕上げていくのが、アル&ズートの素晴らしさ♪
アドリブ先発はアル・コーン、続いてピアノソロを挟んで出るのがズート・シムズですが、2人ともレスター・ヤング直系の滑らかな歌心を存分に発揮し、和みの世界を作り上げているのでした。
A-2 Brandy And Beer
アル・コーンの書いたハードバップ曲ですが、ファンキーでは無く、2本のテナーサックスの絡みを優先させたアレンジがスリリングです。
ここではズート・シムズが、まずドライヴ感満点に吹きまくり♪
リズム隊のテディ・コティックとニック・スタビュラスは、ジョージ・ウォーリントン(p) のバンド等、当時第一線のハードバップ・グループで要となっていた、これも名コンビの2人だけに、ここでの煽りも強烈です。
その所為か、アル・コーンは、なかなかハードなツッコミを聴かせています。
A-3 Two Funky People
ゆるやかなテンポで演奏されるアル・コーンのオリジナル曲ですが、タイトルとは裏腹に、2人がクラリネットでオトボケも交えた和みの時間を創出してくれます。
アドリブでは、多分、先発がアル・コーンでしょう。
ズート・シムズのクラリネットも珍しいところですが、ソフトな音色で魅力的です。
またテディ・コティックやモーズ・アリソンが秀逸なソロを取れば、背後では2人のクラリネットが絶妙な彩りを添えるあたり、なかなか芸が細かいと思います。
A-4 Chasing The Blues
即興的に2本のテナーサックスが絡みつつ進行するブルースですが、ハードバップというよりは、カンサスシティ風のグルーヴィな味が最高です。
アドリブ先発のズート・シムズは柔らかめの音色でスタッカートのフレーズまで繰り出す妙技ですが、それを引き継ぐアル・コーンは、それをダーティな味に変換するという荒業です。
このあたりは決してハードバップでは無く、如何にも白人らしいブルース解釈というところでしょうか? 軽妙な楽しさが満喫出来ます。
B-1 Halley's Comet
西海岸風のアレンジが冴えるアル・コーンのオリジナル曲です。
こういうサックス・アンサンブル的な演奏と、猛烈なドライブ感に満ちたアドリブの世界を両立させているところが、アル&ズートの凄い魅力です。
もちろんクライマックスは両者のテナーバトルで、おそらく先発がズート・シムズかと思われますが、アップテンポなのに一糸乱れぬ演奏が見事です。
B-2 You're A Lucky Guy
シブイ選曲のスタンダードで、ここではテナーサックスの絡みを中心にした、楽しいバージョンに仕上げています。
快適なリズムを送り出すリズム隊も素晴らしく、アル&ズートのアドリブも淀みがありません。もちろん歌心も満点♪
B-3 The Wailing Boat
アップテンポで豪快な演奏が楽しめるアル・コーンのオリジナル曲です。
とにかくノリの良さと流れるようなアドリブメロディの連続は圧巻の一言で、先発のアル・コーンが若干ハードに迫れば、ズート・シムズは自然体のスイング感で応酬するという展開が最高です。
リズム隊も絶好調で、ホーン陣と対決するドラムス、揺るがぬ土台を作るベース、さらに煽りまくりのピアノと、ここだけ聴けば完全なハードバップですが、アル&ズートは中間派よりはモダン寄りの、所謂モダンスイングなので、自分達のペースを貫き通す潔さが魅力になっています。
B-4 Just You Just Me
オーラスはアル&ズートの基本になっているレスター・ヤング(ts) が十八番にしていたスタンダード曲なので、興味深々です。
ここではアップテンポでストレートにアドリブが楽しめる展開で、まず先発のアル・コーンが快適なソロを披露すれば、続くズート・シムズも負けじと猛烈なドライブ感でスイングしています♪
このあたりはバトル物の常として、どうしても勝ち負けとか気になりますが、アル&ズートに関しては2人一役という雰囲気が強く、ただただ楽しいジャズを聴いて満足という良さがありますねぇ~♪
ということで、これは気軽に聴いて楽しいアルバムです。おそらく名盤扱いにはなっていないでしょうが、聴けば虜の仕上がりは絶品!
繰り返しになりますが、もうひとつの名コンビというテディ・コティック&ニック・スタビュラスの縁の下の力持ちが、好ましくもあります。
またアル&ズートは、ジャズ史の中では時代の先端を行くスタイルではありませんでしたが、長期的な人気があったことは事実として、ジャズの本質を突いていたと思います。
そういう本物には、時の流れなんて問題にならないのが、ジャズの楽しさです!