あぁ、もう今年も1ヵ月ちょっとで終わりかぁ……。
自分の寿命も確実に縮んでいるわけですが、日々を大切にする意味でもプログだけは続けたいと思います。
ということで、本日は――
■Jimmy Smith At The Organ Vol.2 (Blue Note)
どんな世界にも押しの強い人はいるもんですが、ジャズ界ではジミー・スミスが、そうじゃないでしょうか?
というのは、完全に私的な推測に過ぎませんが、このアルバムを聴いてしまうと、そうとしか思えなくなります。
録音は1956年3月27日、メンバーはジミー・スミス(org)、ソーネル・シュワルツ(g)、ドナルド・ベイリー(ds) というベース抜きのオルガントリオです――
A-1 The Champ
ディジー・ガレスピーが書いたハードバップのブルースですが、ジミー・スミスは強烈なアップテンポで、これ以上無いウルトラ・ハードバップに演奏しています。
なにしろ初っ端からグイグイバリバリ! よくこんなに指と足が動くもんだと呆れるほどの躍動感! もちろん演奏はコーラスを重ねるにつれ、熱気が充満していくのです。
共演者も必死の追走というか、ソーネル・シュワルツの合の手風のリズムギターも激演ですし、ドナルド・ベイリーも魂のリズムキープが見事です。
そしてついに4分を過ぎたあたりから、ジミー・スミスは痙攣するようなフレーズも絡めながら、バンドメンバーを強引に引き連れて地獄のグルーヴを! 後を引き継ぐソーネル・シュワルツのギターが弛みそうになると、激を飛ばすかのようなツッコミまで入れるのですから、たまりません。
もちろんクライマックスは激情の嵐! 特に6分40秒目からの爆発的なノリは、聴いていて相当の覚悟を強いられます! しかもラストテーマの後には荘厳な教会ゴスペルのようなエンディングまでつけるのですから、全く天国と地獄を往復させられるような大名演になっています。
A-2 Bayou
一転してスローでハードボイルドなジミー・スミスのオリジナルです。
このムード満点な曲調は聴いていると、まるっきり日活ニューアクションの主人公になったような気分にさせられます♪ 俺は、渡哲也か藤竜也!?
う~ん、しかしジミー・スミスのオルガンからは容赦ない厳しいフレーズが出てきます。2分5秒目位から後のコード弾きで醸し出される世界は、重厚でハートにグサリと来る、激情と哀切です!
ギターとドラムスのサポートも自分の役割をしっかりとわきまえた好演ですし、これまた最高ですねぇ~♪
A-3 Deep Purple
これもスローな展開で、美メロのスタンダード曲が演奏されていますが、激烈なイントロから一転、ギターでテーマが奏でられる展開が本当に上手いと思います。実際、これが和むんですよねぇ~♪ 背後で蠢くオルガンのドヨヨ~、という低音の響きにもグッときます。
ただしジミー・スミスは自分のパートになると、和みよりも激情を優先させていますから、強引です! リスナーをどうしても自分の世界に引き込みたいという思惑でしょうか? しかしこれは、北風と太陽だと思うのですが、いつのまにかジミー・スミスが太陽になってしまうあたりが、天才の証明かもしれません。
スバリ、凄まじい演奏です。大音量で聴きましょうね♪
B-1 Moonlight In Vermont
これもムード先行型のスタンダード曲ながら、ここでも情熱が優先されています。
普通、こうゆうことをやられると、クサイ! とかダサい! と言われるのが常だと思うのですが、ジミー・スミスは持ち前の押しの強さで、臆面も無く乗り切っていくのですから、やはり大したもんだと思います。
もちろんそれは、ドナルド・ベイリーのキッチリしたビートの刻みにも助けられているわけですが……。憎めません。
B-2 Ready 'N Able
ジミー・スミス作曲の快適なハードバップです。
アドリブパートでは、まず先発のソーネル・シュワルツが幾分神経質なギターソロ、続くジミー・スミスは、これも若干忙しないスタイルに終始していますが、ドナルド・ベイリーが珍しく重量級のドラムスで煽りますから、不自然になっていません。
ソーネル・シュワルツはサイドギターで上手さを発揮していますし、このドラムスの録音はゴスペル色が強くて、大好きです。
そして終盤へかけて盛り上がっていくジミー・スミスのオルガンは、やっぱり押出しが強いです。
B-3 Turquoise
これもジミー・スミスのオリジナルですが、一転して幻想的な響きが支配的です。
ソーネル・シュワルツのギターソロも「間」を大切にしていますが、ダレる事が無いのはジミー・スミスの分厚いコード弾きの伴奏ゆえだと思います。
そして演奏がグイグイと盛り上がっていく展開には、ついついボリュームを上げさせられるのでした。
B-4 Bubbis
オーラスは楽しいゴスペルファンキーの世界です♪
ドナルド・ベイリーのドラムスは手拍子足拍子という感じですし、ジミー・スミスのオルガンからは楽しいフレーズがテンコ盛りで提供されています。もちろんソーネル・シュワルツのサイドギターも楽しく、またソロパートでは正統派ビバップブルースのリックで迫ってくれます。この人も私は大好きですねぇ~♪
あぁ、当時の黒人クラブでは、こんな演奏で盛り上がっていたんでしょうねぇ~♪ 行ってみたいなぁ、その頃へ!
ということで、圧倒的にハードバップで押しの強い作品です。
特にA面は冒頭から強引とも思えるアクの強さで、大音量で聴いていると、身も心も持っていかれるような気分にさせられます。それが天国か地獄かは、個人差でしょうが! とにかく凄いとしか言えません。
またB面のハードボイルドな雰囲気も捨てがたく、オーラスでノーテンキに盛り上がる布石だけとは言いたくありません。こちらも大音量が必須かもしれません。
それとジャケットに写っているジミー・スミスの表情と仕草は、当にアルバムの内容そのものズバリです!
押しの強さに圧倒されるのも、たまには良いもんです♪