赴任地で借りている家は、木立に囲まれた一軒家なんで、今の時期は落ち葉掃除が大仕事です。
今日は朝から昼間で、落ち葉と格闘でした。以外と重いんですよ。
で、疲れた昼メシ時は、そうだ! 「マイルスの枯葉」を聴こうと思いつつ、こんなん出してしまいました――
■Steamin' With The Miles Davis Ouintet (Prestige)
1956年の5月と10月に行われた、所謂マイルスのマラソンセッションからは、「ing」シリーズと命名された4枚のアルバムが作られましたが、その中でどれが一番好き? という論争(?)は、ジャズファンの楽しみのひとつです。
で、個人的には、多分一番人気が無いと思われる、このアルバムが好きですねぇ~♪ ははは……、天邪鬼の本領発揮です……。
言わずもがなのメンバーは、マイルス・デイビス(tp)、ジョン・コルトレーン(ts)、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) です――
A-1 Surrey With The Fringe On Top / 飾りのついた四輪馬車 (1956年5月11日録音)
ブロックコード主体にイントロを作るレッド・ガーランドにクッションの効いたドラムスのフィリー・ジョー♪ ここにブ~ンと入ってくるポール・チェンバースという最高のリズム隊があって、マイルス・デイビスのミュートが咽び泣く、それだけで満足の演奏です♪
あぁ、この抜群のテーマ解釈! そして緩やかなテンポで快適なアドリブパート!
ジョン・コルトレーンも、その雰囲気を壊さないように慎重に事を運びますが、やはり地金が出てしまい、ウネウネクネクネとゴタクを並べてしまいます。
そしてそれを軌道修正するレッド・ガーランドの洒脱なピアノが、素敵です。
こういうコントラストが、この時期のバンドの魅力だったんですねぇ~。イモにはイモの存在感がある、と言えばコルトレーンに失礼かもしれませんが、結果的に全体が名演になっているのですから♪
A-2 Salt Peanuts (1956年5月11日録音)
ビバップ時代からの狂想曲で、フィリー・ジョーが大暴れします!
もちろんバンドの各メンバーはアドリブで熱演しますが、全てはフィリー・ジョーの引き立て役に徹しています。それはマイルスとても同じ事で、それだけ、このドラマーを買っていたのでしょう。
そして意外にもジョン・コルトレーンが大奮闘のシーツ・オブ・サウンド! 短いソロながら、完成間近の響きが強烈です。
またリズム隊がキメのフレーズを入れたりするスリルも最高で、フィリー・ジョーの桧舞台を彩っているのでした。
A-3 Something I Dreamed Lats Night (1956年5月11日録音)
このアルバムの目玉という、スローな演奏です。
あぁ、この心に染み入るマイルス・デイビスのクールなミュート♪ 古いスタンダードをこれだけモダンに、ハードボイルドに解釈してくれるのですから、たまりません。
実際、私はこの演奏でこの曲が好きになり、いろいろと他のバージョンを漁ったのですが、ほとんど見つからず、結局、これが一番かと思います。
とにかく静謐で暖かく、これぞジャズという雰囲気が満点♪
ちなみにジョン・コルトレーンは参加しておらず、それも大正解でした。
B-1 Daine (1956年5月11日録音)
これも大好きな演奏です。
元ネタは古いスタンドードで、マイルス・デイビス以外ではセロニアス・モンク(p) とか、あまり演奏されていませんが、ここでの胸キュンバージョンは、もう最高です。
ミディアムの快適なテンポでテーマを絶妙に変奏していくマイルス・デイビスは、もちろんミュートで勝負しています。
リズム隊も絶好調のサポートで、ポール・チェンバースのブンブンベースが地味ながら、本当に良い味ですし、レッド・ガーランドも歌心優先♪ 余計な手出しをしないフィリー・ジョーも、逆に秀逸だと思います。
しかしジョン・コルトレーンは、思い余って技足りず状態……。懸命の吹奏に撤しますが、バランスが悪く、ミストーンまで出しています。ただ、繰り返しますが、そこのところが何とも憎めず、何度も聴きたくなるのでした。
B-2 Well You Needn't (1956年10月26日録音)
これだけが10月セッションからの演奏です。
曲はセロニアス・モンクが書いた過激なハードバップで、マイルス・デイビスも後々まで取上げ続けたお気に入りとあって、激烈な仕上がりになっています。
ここでのマイルス・デイビスはオープンで、幾分ハスキーな音色のトランペットは不思議な魅力に満ちていると、いつも感じます。ただしアドリブフレーズは煮えきりません。
続くジョン・コルトレーンは、5月のセッションよりは心に余裕があるような雰囲気ですが、まだまだアドリブそのものが不安定です。
ちなみに、この5月と10月のセッションの間にジョン・コルトレーンは急成長を遂げた云々と言われていますが、私に納得していません。むしろ5月のセッションの方が良い出来の演奏がありますから……。実際、このアルバムの「Salt Peanuts」は、これよりも強烈だと思いますねぇ。
またレッド・ガーランドが意表を突いて低音域で勝負しているのも珍しく、歌心完全拒否の変態ぶりを聴かせているのは、セロニアス・モンクへの対抗意識でしょうか? しかし、その背後で唸るポール・チェンバースのベースは、弦の軋みも生々しい奮闘ぶりで、続くアルコ弾きも過激になっています。もちろんフィリー・ジョーの凄さは最高!
B-3 When I Fall In Love (1956年5月11日録音)
これもマイルス・デイビス畢生の名演として歴史に残る名演とされています。
う~ん、本当ですねぇ~。この泣きのミュートと抜群のテーマ解釈♪ ホロ苦く優雅な響きには、ただただ聴き入るのみです♪
また中間部のアドリブパートで聴かれるレッド・ガーランドが、またまた素晴らしく、寄り添うポール・チェンバースも分かっている! としか言えません。
もちろんジョン・コルトレーンが参加していないのも、吉と出ています。
それゆえにハードバップというよりは、モダンジャズ! つまりモダンなジャズとは、こういう演奏なんだと、独り納得しています。
ということで、なかなかシブイ曲を集めたアルバムですが、全体の統一感、アナログAB面のコントラストも考え抜かれた構成に脱帽です。
ちなみにこれが発売されたのは1960年だったと言われていますが、当時はジョン・コルトレーンは上昇期、マイルス・デイビスは大スタアになっていましたから、4年前の演奏とはいえ、大いに売れたんじゃないでしょうか?
多分、ジャズ界全体も、リアルタイムの一般ファンからすれば、実はハードバップ全盛期だったと思います。
ジャズを語る上では録音年月日が重視されていますが、本当は発売されたレコード単位の順番で現状を探るのが、後追いファンの正しい姿勢かもしれません。