■Blakey featuring Art Blakey (EmArcy)
アート・ブレイキーといえば、なんと言ってもジャズメッセンジャーズなんですが、その基本は例の「バードランドの夜」で奇跡の名演を繰り広げた1954年のクインテットであり、翌年に正式旗揚げするジャズメッセンジャーズまでの間に残されたレコーディングも、ハードバップの真髄として大いなる魅力に満ちています。
それは例えばホレス・シルバー名義でブルーノートに吹き込まれ、後にジャズメッセンジャーズ名義で纏められたクインテット作品、そして本日ご紹介のアルバムが代表的なものでしょう。
録音は1954年5月20日、メンバーはアート・ブレイキー(ds) 以下、ジョー・ゴードン(tp)、ジジ・グライス(as)、ウォルター・ビショップ(p)、バーニー・グリッグス(b)、という実力派が集められています。
A-1 Minority
ジジ・グライスか書いた自身の代表作で、後にはビル・エバンスも演じていますから、ジャズ者にとっては耳に馴染んだテーマメロディでしょう。それをここでは、グッと重心の低いアフロのリズムとグイノリの4ビートを巧みに混ぜ込んだ、如何にもアート・ブレイキーという演奏で楽しめます。
あぁ、エキゾチックな味わいと黒人感覚が、実に見事な融合ですね♪♪~♪ これこそがハードバップのキモという感じです。
そしてアドリブパートに入っては、鋭くてハートウォームなジジ・グライス、妥協しないジョー・ゴードン、ハッスルしまくったウォルター・ビショップという素晴らしいソロが続き、ビシッと纏まったバンドアンサンブルも流石だと思います。
A-2 Salute To Birdland
これもジジ・グライスが書いたアップテンポの素敵なハードバップ曲で、さまざまな既成のビバップフレーズが上手く使われているのがミソでしょうか。ちなみにジジ・グライスは、このセッション中、1曲を除いて7つのオリジナルを提供していることから、おそらくはこのハンドでの音楽監督を任されていたと推察していますが、独特の白っぽい音色で真正ビバップのフレーズを吹きまくるアドリブも凄いと思います。
また小型ガレスピーと言われていたジョー・ゴードンの熱血トランペットやガンガンに突進してくるウォルター・ビショップの頑張りも、最高に気持ちが良いですね。
A-3 Eleanor
どうやらビバップの有名リフ「Jumping With Symphony Sid」のイタダキ的改作曲なんですが、これもまたスカッとする演奏になっています。
それはアート・ブレイキーの強いバックピートに煽られたアップテンポのグルーヴが、本当にビバップとは一線を隔したノリになっていて、意外なファンキー節を聴かせるジジ・グライスから火傷しそうなジョー・ゴードンと続くゴキゲンなアドリブソロ、またリズム的な興奮も感じさせるウォルター・ビショップのピアノには、本当にウキウキされられますねぇ~~♪
臨機応変にビートのリフを作っていくアート・ブレイキーも流石だと思います。
A-4 Futurity
これもアート・ブレイキーならではアフログルーヴが全開したハードバップの快演で、正体不明で加わっているコンガが良い感じ♪♪~♪
そして痛快なアップテンポで疾走するアルトサックス、流麗にしてフックの効いたフレーズを連発するトランペット、ホレス・シルバー調を強く感じさせるピアノと続くアドリブパートまで、なかなかに完成度が高い演奏が楽しめるのでした。
B-1 Simplictiy
アップテンポで、ちょいと無機質なテーマメロディから熱いアドリブに入っていくという、如何にも当時の最先端を感じさせる演奏です。
中でもジョー・ゴードンの歌心排除系のアドリブが曲想そのまんま! そしてウォルター・ビショップやジジ・グライスまでもが、これまでとは些か異なるクールな姿勢を聞かせるあたりが、新しいということなんでしょうか……。、
個人的には、もう少しの温もりが欲しかったような……
。
B-2 Strictly Romantic
ところが一転、こんどはシンミリ系の演奏となり、華麗な装飾に専念するピアノ、甘いメロディのテーマ、ゆったりとして強いビートのリズム隊という、ちょっとこのバンドには不似合いの展開が……。、
しかしトランペットとアルトサックスの絡みで聞かせるアドリブパートの面白さは、ハッとするほど良い感じです。
B-3 Hello
これまた前曲の焼き直し的な演奏で、スローに展開されるメロディの基本が同じという、なんだかなぁ……。
ジジ・グライスのアルトサックスは艶やかに歌っていますし、ジョー・ゴードンのミュートも味わい深いのですが……。う~ん、ネタギレか……。
B-4 Mayreh
なんていう嘆きをブッ飛ばすのが、オーラスに用意されたこの熱演!
曲は前述した「バードランドの夜」でも伝説的な快演となっていたホレス・シルバーのオリジナルということで、ここでの面々も尚更に熱が入っています。まずは勢いに満ちたテーマの合奏からして凄いですねぇ~~♪
そしてウォルター・ビショップがホレス・シルバーに負けじとイケイケの爆裂ピアノ! もちろん同じグルーヴを追求した潔さが高得点ですから、続くジョー・ゴードンとジジ・グライスもアート・ブレイキーとのソロチェンジを交えながら必死の自己主張で、ハードバップの真髄に迫っています。
ということで、原盤は10インチなので1曲あたりの演奏時間は3分前後のトラックばかりですが、その密度は充分に濃いと思います。
録音そのものもエマーシー特有の明るくてパンチのある音作りですから、重心の低いピート感が特徴的! それはハードバップの基本となるものでしょう。
ちなみにアート・ブレイキーはクリフォード・ブラウン(tp) やルー・ドナルドソン(as) を擁した前述「バードランドの夜」クインテットを続けたかったそうですが、諸事情からそれは不可能ということで、次なる新展開を模索していた時期の演奏が、このセッションだったと思われます。
また音楽監督的な立場と私が勝手に推測しているジジ・グライスにしても、データ的には前日にアート・ファーマー(tp) と、あの「When Farmer Met Gryce (Perstige)」のA面に収められた名セッションを演じていただけに、気合とヤル気がガッチリと入っています。
個人的にはA面を愛聴していますが、もしもCDがあればBラスの「Mayreh」を追加して聴き通したいほどですねぇ~♪