OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ビバップなメンツのハードバップ映像

2009-01-08 12:04:45 | Jazz

We Remember Bird / Sonny Stitt & J.J. Johnson (Impro-Jazz = DVD)

先日は正月の下らない顔合わせ宴会で、しかも作り笑いで心にも無いことを言ってしまった自己嫌悪からでしょうか、その後にはネタ探しで散財してしまったですが、全然、後悔していません。

その証拠とも言えるのが本日ご紹介のDVD♪

内容はソニー・ステットと J.J.ジョンソンがチャーリー・パーカー追善企画のバンドを組んで行った1964年の欧州巡業から、ベルリンとロンドンでのテレビ放送用フィルムを復刻した嬉しいブツです。

なにしろメンバーがハワード・マギー(tp)、J.J.ジョンソン(tb)、ソニー・ステット(as)、ウォルター・ビショップ(p)、トミー・ポッター(b)、ケニー・クラーク(ds) という物凄さ! 皆様がご存じのように、ソニー・ステットを除いては全員がチャーリー・パーカーのバンドではレギュラーを務めた歴史の生き証人であり、ソニー・ステットにしてもビバップ系サックス奏者としては、チャーリー・パーカーのスタイルを最も自分流に演じることが出来る名人ですから、白熱の演奏は期待を裏切っていません。

1964年9月26日、ベルリンで収録のセッション:約32分

01 Buzzy
 これは番組テーマとして音だけしか流れませんが、番組タイトルの「In Memoriam Charlie Parker」という字幕とスタジオのセットがなかなか律儀で、如何にもドイツ制作という感じが微笑ましいところです。このあたりは、例のジョン・コルトレーン&エリック・ドルフィーのテレビフィルムと共通するものがありますね。

02 My Little Suede Shoes
 さて、ここからが本番のライブセッションで、山台に設置されたケニー・クラークのドラムセットを真中に円陣となって居並ぶメンバーが白熱の演奏を聞かせてくれます。
 曲はチャーリー・パーカーが書いた楽しいメロディですから、ケニー・クラークの素晴らしいラテン&4ビートに導かれた、これぞモダンジャズのノリが最高です。テーマのサビでソニー・ステットが軽く吹いていくフェイクだけで、それが立派に証明されているんじゃないでしょうか。本当にウキウキしますよ♪♪~♪
 そしてアドリブパートではハワード・マギーの露払いに続き、J.J.ジョンソンが余裕のスライドワークを披露した後、ソニー・ステットが前半はオトボケながら、後半はガチンコという物凄さで、演奏時間が予定よりもオーバーしているのがミエミエの熱演です。
 するとウォルター・ビショップまでもが、あのメリハリの効いたタッチでガンガンにピアノを鳴らすんですから、これはもう、ハードバップの真髄です。そんなメンバーから常に目を放さずに的確なサポートを続くけるケニー・クラークが、実はバンマスという真相も強いですねぇ~♪ 俺はちょっと吹き足りないよっ、というハワード・マギーの表情も憎めません。
 気になる画質はモノクロですが、「A」ランクだと思います、

03 Lover Man
 チャーリー・パーカーと言えば絶対に避けて通れないスタンダード曲で、その経緯についてはハワード・マギーのアルバム「The Return Of (Bethlehem)」をアップした時に簡単に書いていますが、そういうものが付いて回るのが宿縁というものでしょう。
 ここではソニー・ステットが主役となって見事な演奏を聞かせてくれますが、如何にもというカメラワークもあって、素直に楽しめると思います。

04 Now's The Time
 これもビバップの聖典というブルースをアップテンポで演じたハードバップの極みつき! 迫力の合奏に続いて J.J.ジョンソンが神業スライドワークを披露すれば、ハワード・マギーは緩急自在、さらにトミー・ポッターがグイノリのペースソロですから、本当に血が騒ぎます。
 そして体を揺すりながらのソニー・ステットが熱血のアルトサックス! その真剣な表情と十八番のフレーズの乱れ打ちには、モダンジャズの最前線で活躍し続けた矜持と自然体の素晴らしさが滲み出ていると思います。
 さらにウォルター・ピショップが、どうにもとまらない山本リンダ現象のハードタッチを聞かせれば、ケニー・クラークのドラミングが火に油です。そのあまりのツッコミぶりに他のメンバーが苦笑いという場面も微笑ましいですねぇ~~♪

ということで、このベルリンでのセッションはカメラワークも練られていますし、演奏も安定した楽しさが満喫出来ます。特にウォルター・ビショップとケニー・クラークが印象的でした。またソニー・ステットが意外にもアクションが多い人だということも、ちょっとした発見です。

1964年10月18日、ロンドンで収録のセッション:約33分

06 Buzzy
 このロンドンのセッションではお客さんを入れてのスタジオライブ形式となっている事もあり、演奏は尚更に熱くなっています。画質はこれも「A」ランクのモノクロで、コントラストがそれなりに強くなっているのも、私の好み♪
 さて、この曲もチャーリー・パーカーが書いた代表的なブルースですが、テーマリフからリズム隊がガンガンにハードバップしていますから、フロント陣も油断がなりません。まずはハワード・マギーが持ち前の熱血でビバップ主流の突進節! その直線的なトランペットのスタイルはなかなかに貴重だと思います。
 またソニー・ステットが安定した中にも鋭いフレーズを交えてのサービス精神は流石のところですし、その後ろで踊り出してしまうハワード・マギーも、全く憎めませんねっ♪
 そしてJ.J.ジョンソンがベルリンでの冷静さとは逆に、物凄い熱演! やはり観客を前にすると燃えるんでしょうねぇ。緩急自在に十八番のフレーズを連発する爆裂節には本当に圧倒されてしまいます。
 さらにここでもウォルター・ビシッョプが絶好調で、ガンガンにブッ飛ばしています。それはメロディ優先とは決して言えませんが、その勢いとやる気の凄味はビバップそのものじゃないでしょうか。

07 Lover Man
 ここでも演じられる宿縁の名曲は、ベルリンと同じくソニー・ステットが中心になっていて、その安定性ゆえにそれほどの変化はありません。しかし個人的にはこちらのバージョンを好みます。
 それは映像とかカメラワークが自分好みというだけのことで、アップの多様とか照明のメリハリがモダンジャズしている気分なのです。
 まあ、このあたりは観てのお楽しみでしょうね。、

08 Now's The Time
 さて、ここでのオーラスもハードバップのブルース大会! リズム隊をバックにフロントの3人が横並びで合奏するテーマの勢いが良いですねぇ~♪
 そして J.J.ジョンソンがハードバップど真ん中の豪快なトロンボーンで、その流麗なフレーズ展開は圧巻です。しかし続くハワード・マギーがハッスルしすぎた所為でしょうか、些か迷い道というトンパチなアドリブが??? しかし後半は見事に立ち直って面目を保つのも、ジャズの楽しみかと思います。
 また冷静な4ビートで好サポートに徹していたトミー・ポッターの強引なペースソロも強烈ですし、J.J.ジョンソンがソニー・ステットの出番を奪ってしまうように再びのアドリブに入れば、ケニー・クラークがソロチェンジに入ろうとしたり、ここは呆れ顔のソニー・ステットの表情も楽しいところ♪
 しかしいよいよアドリブを演じるソニー・ステットには、もちろん動じる気配は微塵も無く、全くのマイペースです。続くケニー・クラークを中心としたソロチェンジも手慣れた緊張感が結果オーライでしょうねっ♪
 それはウォルター・ビショップの飛び跳ねピアノの好調さに繋がって、演奏は尚更に熱くなっていくのでした。う~ん、このファンキー感覚が絶妙!

ということで、既に述べたように、このパートではお客さんが入っているので、演奏は相当に熱くなっています。特に J.J.ジョンソンが良いですねぇ~♪

全体としては、前半のケニー・クラーク、後半では J.J.ジョンソンが好調という感じなんですが、全篇を通してソニー・ステットの安定感が抜群です。

またハワード・マギーやトミー・ポッターの動く姿は極めて貴重ですし、特にトミー・ポッターの実力が明かされるのは痛快至極! それとウォルター・ビショップの全盛期の姿にも胸が熱くなるでしょう。その硬質なピアノタッチとイケイケに突っ込むスタイルは好き嫌いがあるかもしれませんが、ここでの演奏は上出来だと思います。

ちなみに、このチャーリー・パーカー追善の巡業は、同じフロント陣によるライブ音源として「Tribute To Charlie Parker (RCA)」というアルバムに同年7月のニューポートジャズ祭のステージが収録されていますが、やはり映像の魅力は大きいですねっ! また同じ演目ゆえに瞬間芸というジャズの本質も興味深いと思います。

貴重度も本気度も高い演奏映像集として、お楽しみ下さいませ。

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