OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

パット・メセニーは千両役者

2009-01-09 12:10:40 | Jazz

Live In Philadelphla / Metheny, Hancock, Holland & DeJohnkette
                                        (Jazz Vip = DVD)

CD時代以降、復刻物で嬉しいのがボーナストラックという添え物です。特にサイケおやじの場合は、完全にそれが目当てということが少なくありません。

本日の映像作品も、本篇はテレビ放送もあったはずですし、パッケージ化も過去にされていたブツなんですが、これは昨年に再発されたものながら、素敵なオマケが付いています。

まずはその前に肝心の本篇は、ジャック・ディジョネットのリーダー盤「Parallel Realities」発売に関連して行われた1990年の特別ライブ巡業から、プロショットの映像が存分に楽しめます。

収録は1990年6月23日、フィラデルフィアでのステージから、メンバーはジャック・ディジョネット(ds) 以下、ハービー・ハンコック(p,key)、パット・メセニー(g)、デイヴ・ホランド(b,el-b) という凄すぎるカルテットです。

 01 Shadow Dance
 02 Indigo Dreamscapes
 03 Nine Over Reggae
 04 Solar
 05 Silver Hollow
 06 The Good Life
 07 Blue
 08 Hurricane
 09 The Bat
 10 Cantaloupe Island

結論から言うと、明らかに一座のスタアはパット・メセニーです。なにしろ映像の作りやお客さんの反応、さらにはこのDVDそのものが、パット・メセニーをウリにしているのがミエミエなんですねぇ~。

しかしそれは決して悪いことではありません。実際、ギターシンセも含めて各種のエフェクターを自在に使いこなし、またエレキとアコースティックの区別無く、ギターの魅力を存分に披露するパット・メセニーは、間違い無くスタアの輝きがあるのです。

そのあたりはド頭の「Shadow Dance」から明確に記録されていて、まずはジャック・ディジョネットの短いドラムソロからスタートし、メンバー紹介のMCによってデイヴ・ホランド、ハービー・ハンコックが登場し、最後に軽やかに現れてギターを持つ瞬間のバット・メセニーのカッコ良さ! さらに演奏はラテンもフュージョンもゴッタ煮のリズムと4ビートが激しく交錯する展開ながら、パット・メセニーのギターは全く容赦無い姿勢で、他の3人を圧倒するのです。

またメロウフュージョンど真ん中の「Indigo Dreamscapes」では完璧なメロディ優先主義のアドリブが素晴らしく、モダンジャズ保守本流というマイルス・デイビス作の「Solar」では、新主流派も真っ青の流麗にしてテンションの高いモード節を演じています。

もちろん先輩の3人も負けてはいません。中でもデイヴ・ホランドは激したようなベースソロを随所で披露し、特に「Hurricane」でのアドリブは強烈至極! またハービー・ハンコックの律儀で物分かりの良いところは、融通がききすぎる感もありますが、上手くバンドを纏めていると思います。

気になるジャック・ディジョネットは、音声ミックスの具合もあるかと思いますが、ちょっと軽く叩いているような、あるいは往年に比べて些かパワーダウンしているような気も……。しかしキース・ジャレットなんかとやっている時よりは、ずっと楽しそうに見えますよ。このあたりは、ちょっと複雑ですが……。

演目の中では、やはり「Cantaloupe Island」に期待してしまいますが、サイケおやじ的には、ちょっと肩すかし……。それよりもジャック・ディジョネットがジョン・アバクロンビー(g) と組んでいたハードロック系のバンドだったゲイトウェイの十八番、「Blue」がパット・メセニーで楽しめる喜び! 奥深い胸キュンのメロディがジンワリと演じられ、陰鬱と浮遊感の巧みな融合が本当にたまりません♪♪♪

全10曲で100分を超える長丁場であり、カメラワークも凝っていませんから、正直言えば飽きる場面も確かにあります。しかしパット・メセニーのギターテクニックは存分に観られますし、何よりのこんな凄いバンドが普通に楽しめるというのは、幸せ以外の何物でもありますまい! 贅沢言ったら、バチあたりますよね。

それとパット・メセニーの頑固な一面というか、意外に妥協しない人だなぁ……、なんて思いました。

さて、いよいよここからが私的にはお目当てだったボーナストラックです。

 11 Broadway Blues

1981年9月19日、ウッドストックのジャズ祭からのライブセッションで、メンバーはパット・メセニー(g)、ミロスラフ・ヴトウス(b)、ジャック・ディジョネット(ds)、デューイ・レッドマン(ts) という布陣で、ちょうど名盤「80/81 (ECM)」の頃ですから、4ビートを基調としたイケイケの演奏が強烈です。

パット・メセニーのギターは余計なエフェクターを使わないストレートな音色ですし、ジャック・ディジョネットは激しいブッ叩き! そしてミロスラフ・ヴトウスはツッコミ鋭いウォーキングにアルコ弾きのエキセントリックなペースソロと大活躍!! デューイ・レッドマンは、正直、こんなもんかもしれませんが、バンド全体の勢いは強い印象を残しますから、本当に熱くなります。ちなみに演奏時間は9分半ほどですが、音質も画質も良好です。

 12 Guitar Clouds

これはパット・メセニーのソロパフォーマンスで、タイトルどおりに「雲」の映像を挿入したイメージトラックになっています。しかしパット・メセニーのギターからは、こよなく美しいメロディが、それこそ泉のように溢れ出て、最高に心地良い7分間が過ごせますよ。ちなみに収録されたのは1991年とクレジットされています。

ということで、パット・メセニーのファンには絶対のマストアイテムになるでしょう。もちろん普通のジャズ者、あるいはギター好き、ロック好きにとっても驚愕の演奏に違いありません。少なくともパット・メセニーの人気の秘密の一端は理解出来ると思います。

う~ん、それにしてもメインのライブ演奏から既に18年も経っているんですねぇ~。なんか夢のような気がしていますが、きっと自分が齢を重ねたせいなんでしょう……。ホロ苦いような気分が、妙に心地良かったりします。

コメント
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