OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

エディ・ハリスとレス・マッキャン

2009-01-06 11:30:01 | Soul Jazz

Swiss Movement / Les McCann & Eddie Harris (Atlantic)

嗜好品には好き嫌いがつきもので、もちろんジャズも、そのとおりでしょう。

本日ご紹介のアルバムなんか、モロにそれです。なにしろ主役のレス・マッキャンとエディ・ハリスという2人は、特に我が国においては評論家の先生方からは蔑まれることも多いですし、往年のジャズ喫茶でも敬遠状態……。

ですから、結局は何かの「はずみ」で聞いて好きになるか、あるいは???の気分になるかは、全くの運と自らの嗜好の問題かと思います。

ちなみにレス・マッキャンは少年時代からゴスペルを歌い、ピアノの弾いていた黒人プレイヤーですから、モダンジャズを演奏するようになってからもソウル&ファンキーゴスペルな味わいが強い存在です。

またエディ・ハリスは、やはり子供の頃にはゴスペル合唱隊をやっていたそうですが、何時しか音楽業界に入ってからはピアノやクラリネット、さらにテナーサックスを演奏するマルチな活動をしていたそうです。そして1960年になって映画「栄光への脱出」のテーマ曲をテナーサックスで演じてヒットを出し、さらに独自に開発した電気サックスを吹いて人気を得たところから、我が国では正統派では無いとレッテルを貼られ……。

ということで、そうした2人がコンビを組んでの演奏には、最初っから妙な先入観がつきまというのは、さもありなんでしょう。

しかしサイケおやじは、決してゲテモノ喰いではなく、そういうのが大好きなんですねぇ~~~♪

録音は1969年6月21日、モントルージャズ祭でのライブセッションで、メンバーはエディ・ハリス(ts)、レス・マッキャン(vo,p)、リロイ・ヴィネガー(b)、ドナルド・ディーン(ds)、そしてベニー・ベイリー(tp) という強力な布陣です。

A-1 Compared To What
 いきなりレス・マッキャンがイケイケのゴスペルグルーヴを炸裂させ、同時にメロウなソウルフィーリングも醸し出す最高のピアノを聞かせてくれます。ドナルド・ディーンのリムショットも良い感じ♪
 曲はロバータ・フラックも歌っていた有名なメロディなんですが、ここでのファンキーな作り返しは絶妙ですねぇ~。ジワジワと絡んでいくエディ・ハリスの電気サックスにもシビレますよ♪♪♪ もちろんアドリブパートではエグイ音使いとシンプルにして毒気に満ちたフレーズが、たまらなくファンキーです。
 レス・マッキャンのボーカルも「力み」が良い方向に作用して逆にリラックスした感じでしょうか。バンドのテンションの高さが尚更に熱くなっていきますから、ベニー・ベイリーのトランペットがダーティな雰囲気なのも納得されると思います。
 あぁ、実に楽しいですねぇ~♪
 クライマックスでエディ・ハリスのテナーサックスがチャールズ・ロイドになるのはご愛敬? いえいえ、これが「その場の雰囲気」ってやつでしょうねぇ~♪ レス・マッキャンのピアノがガンガンに突っこんでいくのも、痛快です。

A-2 Cold Duck Time
 エディ・ハリスの作曲とされていますが、まるっきり前曲の続編的なグルーヴが楽しいかぎり! それでもリロイ・ヴィネガーのペースがモダンジャズの矜持を保っていますし、エディ・ハリスのテナーサックスは意想外とも思えるクールな味わいが結果オーライです。
 しかしレス・マッキャンとドナルド・ディーンがグルになってファンキーグルーヴを叩きつけてきますから、ただでは終わりません。ついに途中から電気アタッチメントのスイッチをオンにして奇声まで発してしまうエディ・ハリス! さらに過激な姿勢まで見せてしまうベニー・ベイリーのトランペットが飛び出せば、観客も狂熱の拍手喝采です。
 そしてレス・マッキャンの真っ黒なピアノがグリグリのゴスペルジャズロックですよっ!
 こうしたケレンとスタンドプレイ寸前のスタイルは、イノセントなジャズファンには受け入れられないかもしれませんが、楽しいことに変わりはないですねぇ。
 本当にそう思っています。

A-3 kathleen's Theme
 そうした空気を読んだのか否か、これはなかなかに正統派モダンジャズの4ビート演奏です。エディ・ハリスのテナーサックスが、またまたチャールズ・ロイド風になっているのも憎めませんねっ♪ つまりジョン・コルトレーンの音符過多症候群が涼やかに演じられて、その場を混乱させてしまうというか……。
 しかしリズム隊が実に真っ当で、リロイ・ヴィネガーが十八番のウォーキングベースで土台を固め、演奏全体を強烈にスンイグさせていくのでした。

B-1 You Got It In Your Soulness
 レス・マッキャンが作った陽気なゴスペル系のハードバップで、メリハリの効いたリズミックなブルースですから、作者のピアノが大活躍です。この弾みきったノリは唯一無二でしょうねぇ~~~♪ 思わず腰が浮いてしまいます。
 そしてエディ・ハリスのテナーサックスが不思議な浮遊感を表出させて登場すれば、リズム隊がますます強力なビートで煽りたてるという展開が実にエグイです! あぁ、これはもはやヒステリー女とヤキモチ男の恋愛遊戯でしょうか、非常に濃密なソウルグルーヴとゴスペルジャズのエッセンスが横溢していると感じます。
 ベニー・ベイリーも火に油という熱演ですし、レス・マッキャンの大迫力のピアノが炸裂するクライマックスは、本当に修羅場で歓喜悶絶ですよっ! 観客の大歓声といっしょに、思わず拍手してしまいます。

B-2 The Generation Gap
 これもレス・マッキャンのオリジナルで、ちょっとモード系新主流派の変態ジャズロックという感じでしょうか? 小賢しいドラムスと場違いなベースのノリが逆に良い感じだと思います。
 そしてエディ・ハリスのテナーサックスがクールな暴虐というか、相当に暴れた後には、ハッと我に返ったようなコントラストがニクイ演出です。しかもリズム隊が共謀しているんですねぇ~。このあたりは聴いていて納得するしかないと思います。
 ですからベニー・ベイリーの熱演が自然体なのが救いというか、非常に説得力のあるアドリブになっていて、流石! リズム隊もここは会心のジャストミートでしょうねぇ~♪ 続くレス・マッキャンのピアノが緩急自在の自己主張となるのも、高得点です。

ということで、A面ド頭のタガが外れたようなウキウキ演奏に惑わされると、続くモダンジャズ本流の存在感がシンドイかもしれませんが、やっていることは同じです。レス・マッキャンもエディ・ハリスも極めて保守派のプレイヤーであり、大衆芸能の本質を大切にしているのです。

そういうところ敬遠されては、本当に立つ瀬が無いというか、個人的には妙に頭でっかちな演奏よりは、こういうものを好んでしまいます。ちなみに、実は似た様な手口はアーチー・シェップとかファラオ・サンダース、マリオン・ブラウンあたりの所謂前衛フリー派も使っているわけですから、一概にシャリコマとは言えないでしょうね。

特にエディ・ハリスは、なかなか聞けないひとりですが、このあたりから聴いていくのも良いんじゃないでしょうか。

コメント
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