OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ロックっぽい音で聴くジミーとバレル

2009-01-17 11:54:58 | Jazz

Blue Bash! Master Edition / Kenny Burrell & Jimmy Smith (Verve)

CD時代になっての再発は様々な問題点も含みながら、かなりマニア心を刺激するブツも少なくありません。

本日の1枚も、まさにそうした中のひとつとして、私は強く惹きつけられました。

もちろんこれはケニー・バレルとジミー・スミスが幾度目かの共演で、またまた作り出した人気名盤! しかしLPアルバムには明確なデータ記載が無く、参加メンバーもあやふやでしたし、アナログ盤そのものが幾つかのセッションから成り立っていた所為でしょうか、各トラックの音質と音圧、そしてミックスのバランスに多少のムラがあったりして、ちょいと仕上げが雑という感じが私には納得し難いところでした。

それがこの再発CDでは丁寧なリマスターによって、相当に改善されていますし、セッションデータもきちんと明らかにされています。しかも嬉しい別テイクのオマケ付き!

まず演奏メンバーはケニー・バレル(g)、ジミー・スミス(org) に加えてメル・ルイス(ds) が入ったトリオが基本となり、曲によってはミルト・ヒントン(b)、ジョージ・デュヴィヴィェ(b)、ビル・イングリッシュ(ds) が交代参加しています。

また録音データは1963年7月、エンジニアもお馴染みのルディ・ヴァン・ゲルダーの他に2人が担当していたようですから、ミックスの雰囲気も違って当然なのでした。

01 (A-1) Blue Bash (1963年7月16日録音)
 タイトルどおりにグルーヴィなミディアムテンポのブルースで、テーマ演奏ではメル・ルイスのドドンパなドラムスが楽しいところですが、アドリブパートではケニー・バレルがいきなりのハイテンション! メル・ルイスの幾分軽めのドラミングが逆に良い感じです。
 もちろんジミー・スミスもフックの効いたオルガンのアタックが冴えまくりですし、このあたりは如何にもヴァン・ゲルダーが得意の音作りながら、この再発リマスターによって、尚更に鮮やか印象が強くなっています。
 というか、ブルーノート時代の諸作に比べると白人のメル・ルイスがドラマーという事もありましょうが、よりスマートな都会的な質感が表出しているように思います。ちなみにプロデューサーはクリード・テイラーですから、さもありなんですね。
 しかしブルースとソウルは濃厚ですよ。

02 (A-2) Travelin' (1963年7月25日録音)
 そういうライト感覚の黒っぽさが完全に成功したのが、この演奏! 何よりも音の作り方、つまり録音の雰囲気が私にはロックインストに近い感じと聞こえます。ちなみにこの7月25日のセッションはニューヨークのベル・サウンド・スタジオですから、明らかにヴァン・ゲルダーとは違って当たり前でしょうね。
 肝心の演奏はアップテンポのゴスペルハードバップで、リズム隊はミルト・ヒントンとビル・イングリッシュが務めてますが、こうしたウッドペース入りのセッションゆえにジミー・スミスのオルガンからは何時もより軽快なフレーズが連発されています。
 またケニー・バレルのギターも音色のエッジが鋭い録音というか、モダンジャズ特有のドロ~ンという感じよりも、テキパキとしたロカビリー系の味わいが曲想にジャストミートだと思います。イケイケのドラムスとの相性も良いですねぇ~♪

03 (A-3) Fever (1963年7月25日録音)
 これまた哀愁のゴスペルハードバップで、グッと重心の低いグルーヴと軽めの音作りが最高に上手く融合した名演です。ジンワリと胸キュンのテーマメロディ、ずっしり響くウッドペース、軽快なリムショットに物分かりの良いギターの合の手♪♪~♪
 ジミー・スミスも泣きじゃくった思わせぶりからテンションの高いフレーズの連続技まで、実にツボを押さえたオルガンを聴かせてくれますし、ケニー・バレルのアドリブも事前に作ってあったかのような出来すぎフレーズばっかりです。しかし両者とも、実は十八番に徹しているだけなんですよねぇ~~♪ 流石!

04 (B-1) Blues For Del (1963年7月25日録音)
 ケニー・バレルがリードするテーマメロディの何気なさが逆に魅力という、ミディアムテンポのブルースです。しかもその背後では執拗にグチャグチャやっていたジミー・スミスが、アドリブパートに入った途端に激情のブルース&ソウルを告白するのです。その短いパートに全てを言いきる姿勢が素晴らしいですねぇ~♪
 またケニー・バレルの伴奏がエグイです。そしてシンプルながら充実のアドリブが最高です。ドラムスの残響音的な迫力と小技も潔いペースの存在も確かに強く、それは元の録音の素晴らしさと秀逸なリマスターによって、さらにグリグリと楽しめるのでした。
 演奏が進むにつれてエグミが強くなっていくジミー・スミスのオルガン! たまりませんねっ、本当に!

05 (B-2) Easy Living (1963年7月29日録音)
 これはお馴染み、和みのスタンダード曲をラウンジっぽく演じた息抜きのトラックでしょうか。実際、ケニー・バレルがつつましく弾いてくれるメロディフェイクが良い感じ♪♪ スローなグルーヴをダレさせない強いビートを打ち出すウッドベースはジョージ・デュヴィヴィェです。

06 (B-3) Soft Winds (1963年7月25日録音)
 このアルバムでは一番にハードバップらしい演奏で、曲はご存じ、ベニー・グッドマンの十八番ですが、モダンジャズでも名演がごっそり残されているブルースの極みつき! ですから、まさにこのメンツにとっては駄演など許されず、そして見事な答えを出しています。
 特にジミー・スミスのブチ切れたようなハイテンションは物凄いですよっ! オルガンのタッチの強弱を活かしきったアドリブ構成は、その前段で露払いを務めたケニー・バレルのジェントルなブルースフィーリングとは好対照の勢いで、2人がアドリブフレーズの応答を演じる場面も、実に楽しいです。
 このあたりは、あえて起用されたウッドペースの存在とエッジの効いた録音、カッチリしたリマスター効果が大きいと感じますし、「ジェントル」と書いたケニー・バレルのギターにしても、アナログ盤と比べると格段に生々しい「エレキ」の魅力が満喫出来るのでした。

07 (B-4) Kenny's Sound (1963年7月16日録音)
 アナログ盤ではオーラスに置かれた曲で、冒頭の「Blue Bash」と同じく、典型的なオルガントリオの演奏と音が楽しめますが、それにしてもジミー・スミスの足と手から放出されるウネリの強い4ビートウォーキングは魅力満点ですねぇ~♪ それはこのリマスターCDで尚更に感銘を受けてしまいます。
 ケニー・バレルとメル・ルイスのノリも抜群で、このアップテンポの演奏を決定的に熱くしています。

08 Travelin' (alternative take-2)
09 Fever (alternative take-1)
10 Soft Winds (alternative take-2)
11 Kenny's Sound (alternative take-9)
12 Easy Living (alternative)
13 Travelin' (breakdown take-4)
14 Kenny's Sound (alternative take-10)
 以上はオマケの別テイク群で、これも当然、楽しめますよ。しかもステレオのミックスバランスが異なっていたり、モノラルミックスだったり、さらにはスタジオ内の録音セッションの雰囲気も聴かれたりして、飽きません。
 なによりも演奏そのものが良いですからねぇ~~♪
 ただし、やっぱり完成テイクには及ばないものが確かにあります。ケニー・バレルが意外にもムラっ気な人だとか、ジミー・スミスの日常的なテンションの高さとか、そういう内幕が楽しめるところも、また良しなんでしょうね。

ということで、このCDのリマスターは極限すると、ちょいとロックぽい雰囲気も感じられますから、好き嫌いがあるかもしれません。そこでアナログを取り出して再聴してみると、些か納得出来なかったLP盤の音に、妙な説得力が……。

肝心の演奏は緊張と緩和のバランスが見事ですし、特にジミー・スミスはウェス・モンゴメリーとのガチンコ対決盤「The Dynamic Duo (Verve)」よりも、ずっとリラックスしているように感じます。それゆえに何時もとは些か違ったアプローチも聴かせてくれたんでしょうか、結果オーライですね♪♪

こんな自然なコラボ盤は、やっぱりジャズの魅力を体現していると思います。

ちなみにこのブツは三面見開きのデジパック仕様ということで、そのあたりにもマニア心を刺激されたというわけです。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする