OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ソニー・ロリンズの自由ってなんだ!?

2009-01-15 12:05:24 | Jazz

Freedom Suite / Sonny Rollins (Riverside)

全盛期の録音であるにもかかわらず、ソニー・ロリンズがリバーサイドと契約していた時期のアルバムは、案外と聴かれていないんじゃないでしょうか。

それには様々な理由があろうかと思いますが、例えば本日のアルバムなんか直訳邦題が「自由組曲」で、しかもタイトル曲が片面1曲とあっては、聴く前からフリージャズをやっている先入観が濃厚ですよねぇ……。

だいたい瞬間芸が基本のモダンジャズにおいて、「組曲」という言葉は、なんとなく造り物という感じがしますし、それはビッグバンドや企画作品ならば良い方向に作用するんでしょうが、ここではピアノレスのトリオセッションとあって……。

しかしもちろん、結果は豪快にして躍動的、さらに湧きあがるような歌心も満喫出来る傑作盤になっています。

録音は1958年2&3月、メンバーはソニー・ロリンズ(ts)、オスカー・ペティフォード(b)、マックス・ローチ(ds) という物凄さです!

A-1 The Freedom Suite (1958年3月7日録音)
 これが前述したような先入観の強いトラックですが、内容は概ね4つのパートを素材にした強烈なアドリブが楽しめる名演です。
 それはテンションの高いリズム隊と共謀してソニー・ロリンズが躍動的な瞬間芸に興じる最初のパートから、強烈なトリオの面々が鋭く絡み合いを演じていますから、思わず手に汗握るという熱さなんですねぇ~♪
 ソニー・ロリンズはもちろんのこと、ポリリズムでタイトなビートを敲き出すマックス・ローチ、メロディ優先主義でありながらエグイ事をやらかしいるオスカー・ペティフォード! このあたりは同じピアノレスの傑作盤「Way Out West (Comtemporary)」や「A Night At Village Vanguard (Blue Note)」との聴き比べも楽しいところでしょうが、よりシャープでヘヴィに進化変質しているここでのグルーヴも、私は大好きです。
 それは続くワルツテンポのパートでは、マックス・ローチのシンバルが絶妙のスパイスとなってバラードのパートへ受け継がれ、ソニー・ロリンズの泰然自若としたテナーサックスの豪放な魅力を存分に引き出すのです。オスカー・ペティフォードのネクラな独白のようなベースソロも、マックス・ローチのドラミングがあればこそ、自然に聴いていられる感じでしょうか。
 そして最後のパートがゴスペルもラテンビートもゴッタ煮にしてポリリズムで味付けしたような激しい演奏となって、ソニー・ロリンズが猛烈な勢いで怒涛のアドリブに専念すれば、マックス・ローチが鬼のようなドラミングで頑固に対峙! その両者をさらに煽るのがオスカー・ペティフォードのブンブンブンに突っ込んだベースですから、たまりません。
 このあたりは、まあフリージャズの前哨戦と言えなくありませんが、基本はあくまでもハードバップですから、痛快至極! 「組曲」を構成する各パートのテーマメロディも作曲はソニー・ロリンズという明快なものですし、バラードの部分なんか、ちょっと某スタンダード曲にクリソツですよ。
 ちなみに原盤裏ジャケットに、わざわざ囲みで掲載されているソニー・ロリンズのコメントにもあるように、この曲は当時のアメリカの黒人差別や人種問題への提起と抗議によるものとされているようですが、私が初めて聴いた時にはそんな事は知る由も無く、しかしそんな社会問題を取り上げなければ成り立たなかった1960年代の我が国ジャズ評論の一部勢力が、このアルバムの先入観に拍車をかけてしまった事実は、いやはやなんともです。
 おそらく今でもジャズのガイド本には、そんなこんなが書かれていると思われますが、まずは虚心坦懐に楽しんでも許されるんじゃないでしょうか。

B-1 Someday I'll Find (1958年2月11日録音)
 さて、そんな様々な思惑があったA面とは無縁なのがB面でしょう。尤も同じバンドが演じているのですから、豪快にしてスリル満点の楽しい仕上がりは「お約束」です。
 この曲は一応はスタンダードらしいのですが、あまり知られていないわりには素敵なメロディ♪♪~♪ それをソニー・ロリンズが躍動的なワルツテンポで豪放磊落に吹いてくれます。もちろんドラムスとベースのハイテンションはご推察のとおりですから、ハードにスイングしまくっていますよ♪♪~♪
 う~ん、それにしてマックス・ローチが凄すぎますねっ!

B-2 Will You Still Be Mine (1958年2月11日録音)
 これはお馴染み、マット・デニスが書いた粋なメロディですから、この時期のソニー・ロリンズにとっては自由闊達な歌心を全開させる大名演♪♪~♪ オスカー・ペティフォードのペースも単なるサポートではなく、豪快な4ビートウォーキングに加えて自己主張も鮮やかですし、マックス・ローチのタイトなドラミングも流石だと思います。
 全く3分に満たない演奏時間が悔やまれますねぇ~。

B-3 Till There Was You (1958年2月11日録音)
 私の世代ではビートルズのバージョンが有名という素敵なメロディのスタンダード曲ですね、きっと。それはポール・マッカートニーの鼻歌的なボーカルのイメージが強いのですが、ここでのソニー・ロリンズもまた、ゆったりと歌う魅惑のテナーサックスを聞かせてくれます。
 寄り添うオスカー・ペティフォードのペースワークも素晴らしく、ソニー・ロリンズのアドリブの天才性を見事に引き出し、さらに想像力豊かなベースソロも最高という、まさに貫禄の存在感を示していると思います。
 ちなみに後年、このアルバムが再発された時には別テイクも加えられていましたが、それもまた劣らない名演でした。

B-4 Shadow Waltz (1958年2月11日録音)
 刺激的なポリリズムをバックに些かオトボケを演じるソニー・ロリンズの芸風は唯一無二でしょうねっ♪ ここでもオスカー・ペティフォードのペースが大活躍していますが、テーマではネボケていたソニー・ロリンズが後半になって持ち前のアドリブ感覚を目覚めさせるあたりは、なんともいえない瞬間芸の醍醐味でしょう。
 悠然と構えてエネルギッシュなマックス・ローチは流石というか、ニラミが効いていますね。

ということで、このアルバムタイトルと裏ジャケットのソニー・ロリンズの宣言によって、リアルタイムのアメリカでは白人主導の評論と業界の思惑からして、あまり売れなかったと言われています。それゆえにタイトルを「Shadow Waltz」に変更しての再発盤も……。

しかし虚心坦懐に聴けば納得の名演集に違いありません!

ソニー・ロリンズは現在まで息の長い活動を続け、何時の時代もトップであり続ける偉人ですが、やはりこの頃が全盛期だと思う私にとって、このアルバムも大好きな宝物になっています。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする