OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

凄いリズム隊と気鋭の2人

2009-01-19 11:35:42 | Jazz

Blowing In From Chicago / Cliff Jordan & John Gilmore (Blue Note)

ジャズにはリズム的興奮が優先する場合が確かにあって、それゆえにリズム隊を目当てに演奏を聴いてしまう事が度々あるわけですが、このアルバムもサイケおやじは、それが目的で入手した1枚です。

なにしろシルバー、ラッセル、そしてブレイキーとくれば説明不要、あの「バードランドの夜」でハードバップを高らかに宣言した3人組ですからねぇ~♪ 夢よ、もう一度と期待して、それが存分に叶った熱演盤というわけです。

しかし主役は、リアルタイムで売り出し中だった若手黒人テナーサックス奏者の2人ということで、決してバックの3人はジコチュウな事はやっていませんから、流石だと思います。

録音は1957年3月3日、メンバーはクリフ・ジョーダン(ts)、ジョン・ギルモア(ts)、ホレス・シルバー(p)、カーリー・ラッセル(b)、アート・ブレイキー(ds) というクインテットですが、フロントの2人は後にホレス・シルバーとアート・ブレイキーに雇われて其々のバンドレギュラーとなるのですから、オーデション的な因縁も楽しいところでしょう。

A-1 Status Quo
 なんとなく耳に馴染んだコード進行とメロディフェイクの雰囲気から、おそらくは有名スタンダード曲を改作したと思われるオリジナルで、原盤裏ジャケット解説によれば、シカゴで活躍中だったテナーサックス奏者のジョン・ニーリーが書いたそうです。そしてこれが、前述「バードランドの夜」の雰囲気を濃厚に再現しているんですねぇ~♪
 それはなんといっても、リズム隊の熱気溢れる躍動感!
 独特のシンコペーションでガンガンに飛び跳ねるホレス・シルバー、ボンボンと弾むカーリー・ラッセルのペース、さらにビシバシに煽って爆発的なアート・ブレイキーという、この3人だけでハードバップの根源的な魅力が見事に演じられています。
 そして当然、鋭角的なジョン・ギルモアから灰色の情熱というクリフ・ジョーダンへと続くテナーサックスのアドリブにも、黒人ジャズの真髄がたっぷりと表現されているのです。
 あぁ、こんなアップテンポでも重量感を失わない演奏は、大袈裟じゃなくて、モダンジャズの世界遺産だと思います。アート・ブレイキーのドラムソロが炸裂する大団円までの全てが、痛快!

A-2 Bo-Till
 ラテンリズムを上手く使ったクリフ・ジョーダンが十八番のオリジナル曲♪♪~♪ そしてアドリブパートからはグイノリの4ビートという、ハードバップの美しき流れが楽しめます。
 クリフ・ジョーダンからホレス・シルバー、そしてジョン・ギルモアと受け渡されるアドリブは緊張と緩和の手慣れた雰囲気も漂いますが、アート・ブレイキーのドラミングが臨機応変に大技・小技を繰り出していますから、新進気鋭の2人も油断ならない結束が結果オーライのようです。

A-3 Blue Light
 ジジ・グライス(as) が書いた哀愁の隠れ名曲ですが、強靭なリズム隊の存在があればこその快演がたまりません。実際、このグルーヴィな雰囲気は、作者自身が幾つか残しているバージョンよりも魅力的だと、サイケおやじは思うほどです。
 そのキモは弾みの強いカーリー・ラッセルのペースワークで、4ビートのウォーキングからアドリブソロへ入っていくところのワクワク感とか、アート・ブレイキーとの共謀関係も流石だと思います。
 そして幾分ギスギスした心情吐露に徹するジョン・ギルモア、アート・ブレイキーに煽られてしまうホレス・シルバー、まろやかな黒っぽさを表現するクリフ・ジョーダンと続くアドリブソロの充実度も、ブルーノートならではですね。

B-1 Billie's Bounce
 チャーリー・パーカーが書いたモダンジャズではお馴染みのブルースリフも、このリズム隊があっては、尚更にエグイ魅力が発散した大熱演になっています。とにかく爆発的なアート・ブレイキーのドラムソロがイントロなって始まるテーマ合奏の勢いからして物凄く、どこへ飛んでいくからわからないようなエネルギーが充満しているんですねぇ~~♪
 クリフ・ジョーダンからジョン・ギルモアと続くテナーサックスのアドリブにしても、怖いバックに煽られて全力疾走! 一瞬の弛みも許されない緊張感とヤル気は実に感度良好です。
 そしてお目当てのリズム隊はガンガンの奮闘で、特にホレス・シルバーの伴奏は、それだけ聴いても熱くさせられるほどですが、アドリブソロではベースとドラムスのコンビネーションを冷静に探りつつ、忌憚の無い潔さ! だんだんと熱くなっていくアート・ブレイキーが憎めません。
 ですからクライマックスのソロチェンジでは、フロントの2人が余計に肩に力が入ってしまったというか、しかしそれもアート・ブレイキーのドラムソロで上手く纏められているのでした。

B-2 Evil Eye
 クリフ・ジョーダンが書いたマイナーブルースの傑作曲で、おそらくは曲想よりも幾分早いと思われるテンポ設定が、ここでは良い感じ♪♪~♪
 アドリブ先発のジョン・ギルモアがボクトツとしたハードボイルド節を聞かせれば、クリフ・ジョーダンは作者の強みを活かした哀愁節で対抗するあたりが高得点です。
 またホレス・シルバーの気分はロンリーなピアノも捨て難く、こうして時折に出す味わいも、シルバー節のキモだと思います。
 そしてクライマックスではテナーサックスの滋味豊かなソロ交換が、決してバトルではない味わい深さで秀逸です。あぁ、このパートが、もっと長かったらなぁ~~、なんて贅沢を言いたくなりますよ、きっと。

B-3 Everywhere
 オーラスはホレス・シルバーの書いた典型的なハードバップ曲ですが、アート・ブレイキーの落ち着きの無いドラミングが、そのテーマ演奏を???なものにしている感があります。
 しかしアドリブパートの痛快さは、このセッションの出来良さを証明するもので、2人のテナーサックス奏者は其々に未完成な部分が逆に魅力ですし、素敵なスパイスを効かせたリズム隊の躍動感は、決して派手ではありませんが、唯一無二だと思います。

ということで、ジャケットからテナーバトル物を期待するとハズレかもしれませんが、強烈無比なリズム隊がフロントの2人を盛り立てながら、凄い自己主張とバンドの纏まりを成し遂げた名セッション盤だと思います。

ちなみにホレス・シルバーとアート・ブレイキーはジャズメッセンジャーズという看板と実情を巡ってコンビを解消していながら、実は以降も度々の共演を残していて、そのどれもが特別な魔法に満ちています。

またカーリー・ラッセルもビバップ時代からモダンジャズの創成に大きく関わった偉人でありながら、健康問題でリタイアしたと言われていますから、このアルバムは特に「お宝」度数も高いのですね。

そして見事なハードバップの桃源郷という1枚として、素直に楽しめる作品だと思います。

コメント
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