OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

コルトレーンの印象といえば、これっ!

2009-01-29 13:31:19 | Jazz

Impressions / John Coltrane (Impulse!)

生まれつきの体質なのか、ほとんど酒に酔わないサイケおやじは決して酒席を好みませんが、それにしても昨夜の酒は、思いっきり不味かったです。

というのも最近、縺れている仕事の内幕や裏事情という、知りたくもなかった話や泣き事を聞かされて、なんだぁ、マジでやっていたのは自分だけだったのか、という真相に愕然とさせられたから……。

本当に踊らされていた自分が情けないというか……。

それゆえに本日は朝っぱらか、こんな過激盤で憂さ晴らしです。

内容は皆様がご存じのとおり、ジョン・コルトレーンが自分のレギュラーバンドにエリック・ドルフィーを招き入れて敢行した、歴史的な1961年11月のヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ音源に、少し後のスタジオセッションから選ばれた演奏を組み合わせて作られた名盤です。

A-1 India (1961年11月3日、ヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ)
 オドロの情念が爆発した、如何にもコルトレーンな過激な名演で、メンバーはジョン・コルトレーン(ss)、エリック・ドルフィー(bcl)、マッコイ・タイナー(p)、レジー・ワークマン(b)、ジミー・ギャリソン(b)、エルビン・ジョーンズ(ds) という鬼の様なバンドです。
 もちろんライブセッションとあって、その場の空気の熱さと緊張感は怖いほどですが、それが聴き手の興奮と魂の高揚に密着しているのは言わずもがなでしょう。
 2人のベーシストがウネリまくった大波を作れば、エルビン・ジョーンズが強烈なポリリズムで空間を埋め尽くす土台があって、ジョン・コルトレーンもエリック・ドルフィーも忌憚の無い心情吐露に専念します。特にソプラノサックスでネクラなヒステリーを演じるジョン・コルトレーンに対し、バスクラリネットでそうしたドグマの呪縛から逃れんと咆哮するエリック・ドルフィーというコントラストが激しすぎますねぇ~。演奏が進むにつれてドロドロに煮詰まっていく展開には、ただただ、身を任せる他はありません。
 そういうわけですから、マッコイ・タイナーはほとんど演奏に入り込んでいくことが出来なかったのか、ポツンポツンとしか音を出せない引っ込み思案な伴奏ですが、それが意想外に効果的というか……。
 とにかく重量感満点、凄いとか言えない演奏には、金縛りにあってしまいます。

A-2 Up 'Gainst The Wall (1962年9月18日録音)
 前曲から1年ほど後のスタジオセッションからの短い演奏で、メンバーはジョン・コルトレーン(ts)、ジミー・ギャリソン(b)、エルビン・ジョーンズ(ds) というピアノレストリオによる、些かひねくれたブルースですが、これが如何にも「コルトレーンのブル~ス」になっています。
 ポリリズムでヘヴィなビートを敲き出すエルビン・ジョーンズは、何時ものとおりの爆裂エネルギーを噴出させ、ウネウネクネクネと身を捩るジョン・コルトレーン、それを冷ややかに支えるジミー・ギャリソンという構図は、本当に変な感じ……。
 しかしこういうクールな姿勢こそが、実は当時のモダンジャズ最先端というわけでしょうねぇ……。アトランティック期の「Plays The Blues」を引き継いで、さらに発展させようとした目論見かもしませんが、ちょいと物足りません。
 ただし前曲の激しさの後では、妙に心地良いのも確かです。

B-1 Impressions (1961年11月3日、ヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ)
 あまりにも有名なジョン・コルトレーンの定番演目の、これが公式初出バージョンという熱血ライブ演奏です。
 メンバーはジョン・コルトレーン(ts)、マッコイ・タイナー(p)、ジミー・ギャリソン(b)、エルビン・ジョーンズ(ds) という至高のカルテットとされていますが、実はラストテーマの最後の最後に一瞬だけ、エリック・ドルフィー(as) が参加しているのはご愛敬!?
 そして演奏は典型的なモードジャズの激烈な展開が存分に楽しめます。いや、今となっては楽しめるというのも一部のファンだけかもしれませんが、それでも私の世代のように、ジャズ喫茶で青春を過ごした皆様には、唯一無二の時間じゃないでしょうか。
 エルビン・ジョーンズのドカドカうるさいドラミングは痛快なほどにジャズ心を直撃してきますし、自分から険しい道を選んでしまうようなジョン・コルトレーンの苦行のアドリブ、それを後押しするジミー・ギャリソンのペースはブリブリブリ! さらにほとんど入り込む余地のないマッコイ・タイナーの心境は如何に!?
 とにかく疾風怒濤ですよっ、これは!

B-2 After The Rain (1963年4月29日録音)
 前曲の興奮と心のざわめきを静かに癒してくれる、ジョン・コルトレーンが書いた静謐なメロディが、なかなかに精神性を強くして演奏されます。
 メンバーはジョン・コルトレーン(ts)、マッコイ・タイナー(p)、ジミー・ギャリソン(b)、ロイ・ヘインズ(ds) という、諸事情でエルビン・ジョーンズが抜けていた時期の録音ですが、実に濃密な仕上がりになっています。
 率直に言えば、スローテンポながら重厚なリズム隊のグルーヴに思わせぶりなジョン・コルトレーンの表現がジャストミートした結果としての心地良さ♪♪~♪ このアルバムでは、ほとんど活躍していないマッコイ・タイナーも、いかにも「らしい」装飾フレーズで彩を添えていますし、気になるロイ・ヘインズも得意のオカズを押さえて堅実な助演には好感が持てます。

ということで、以前にご紹介した「Live At The Village Vanguard」と並び立つ名盤の中の大名盤です。しかも発売されたのが1963年ということで、この頃にはジョン・コルトレーンの過激な姿勢が業界からもファンからも認められていたらしく、最初から非難の対象となっていた前出盤とは比較にならないほど、発売直後から絶賛されたと言われています。もっとも売上は先行して世に出ていた「Ballads」には及びませんが……。

しかしタイトル曲はモダンジャズの定番となるほどのメロディとして知られ、またそのアドリブパターンやフレーズ構成は、コルトレーンと言えば、これっ! というほどに強いイメージとして残ります。

ジャズ喫茶の大音量で聴くのが、やはり一番好ましいと思いますが、自宅での鑑賞でもついついボリュームを上げざるをえませんから、高級ヘッドホーンが欲しくなったりします。

やっぱりアブナイなぁ、このアルバムは! でも、必ずスカッとしますよ。

ちなみにヴィレッジ・ヴァンガードでの音源は後に残された録音が集大成され、同じ演目でもさらに激しく、痛烈な結果を出したテイクも聴かれますが、やはり基本はこれと「Live At The Village Vanguard」でしょうね。

コメント
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