OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

スタンダードを吹くパーカーが好き

2009-01-11 12:31:13 | Jazz

Night & Day / Charlie Parker (Verve)

幾何学的なテーマメロディとエキセントリックなアドリブフレーズ、テンションの高いビート感で吹きまくるチャーリー・バーカは、もちろん素晴らしく感動的ですが、スタンダード曲を演じても、また格別の良さがあります。

ですから、私はこのあたりのオーケストラと共演したアルバムが、かなり好きです。

もちろん1曲あたりの演奏時間は短く、それはSP等のシングル盤用セッションということで、アレンジもカッチリ纏まっていますから、そこがアドリブ第一主義というガチガチのジャズ者や評論家の先生方にはイマイチ好まれていないようです。

否、そういう先入観が一番、いけないわけですが、実際に聴いてみれば、チャーリー・パーカーという天才の素晴らしいメロディフェイクの芸術、アドリブの鋭さとリラックスした演奏姿勢、さらにアルトサックスの鳴りの凄さにゾクゾクさせられること、請け合いです。

さて、このLPは1950年から1952年にかけて制作されたストリングやビックバンドとの共演セッションを纏めたものですが、主役はあくまでもチャーリー・パーカーだけですから、メンツ的な興味はほとんど無いと言っていいと思います。

 A-1 Temptation (1952年1月22日録音)
 A-2 Autumn In New York (1952年1月22日録音)
 A-3 Lover (1952年1月22日録音)
 A-4 Stella By Starlight (1952年1月22日録音)
 以上の4曲にはジョー・リップマン編曲&指揮のオーケストラが付いています。そして演目もお馴染みのスタンダードばかりとあって、チャーリー・パーカーのメロディフェイクの天才性とアルトサックスそのものの響きが堪能出来るのです。
 妖しいラテン調のオーケストラアレンジが魅惑のメロディを彩る「Temptation」では、アドリブパートがグイノリの4ビートですから、チャーリー・パーカーが殊更にあざやかなブレイクや十八番のフレーズを存分に聞かせてくれますよ。ほとんど白木マリが踊りそうな雰囲気が実に良いですねっ♪
 またアップテンポでオーケストラと激しく対峙する「Lover」では、めくるめくパーカーフレーズの嵐が最高! ジョー・リップマンのアレンジもツボを外していませんし、トロンボーンやトランペット、ピアノのソロパートも破綻していませんが、やはりチャーリー・パーカーの主演賞は間違いないところだと思います。
 そして甘~いストリングスと見事な協調関係を聞かせる「Autumn In New York」は、しかし素直に吹いて尚、ジャズの魂が溢れる出るチャーリー・パーカーの素晴らしさに完全降伏ですし、豊かなオーケストラサウンドに包まれて驚異的なメロディフェイクを披露する「Stella By Starlight」に至っては、本当に聴かずに死ねるかという気分になりますよ。
 とにかく聞かず嫌いは勿体ないという演奏ばかりだと思います。

 A-5 Dancing In The Dark (1950年7月5日録音)
 このアルバムの中では一番古いセッションからの演奏で、 レイ・ブラウン(b) とバディ・リッチ(ds) をリズム隊の要としたカルテットがストリングスオーケストラと共演する趣向になっています。ちなみにアレンジは、これもジョー・リップマンですから、アルバム全体の色合いは統一されていますので、ご安心下さい。
 というよりも、どんな企画セッションでも泰然自若としてアルトサックスを鳴らすチャーリー・パーカーの貫禄が眩しいかぎりですね。

 B-1 Night And Day (1952年3月25日録音)
 B-2 Almost Like Being In Love (1952年3月25日録音)
 B-3 I Can't Get Started (1952年3月25日録音)
 B-4 What Is This Thing Called Love (1952年3月25日録音)
 この4曲もジョー・リップマンのアレンジによるオーケストラが付いていますが、そのメンバーの中にはフレディ・グリーン(g)、オスカー・ビーターソン(p)、レイ・ブラウン(b)、ビル・ハリス(tb) といった名手が参加していますから、なかなか強烈なグルーヴが侮れない演奏となっています。
 まずは激しく咆哮するオーケストラがウキウキするようなメロディを浮き立たせる「Night And Day」では、チャーリー・パーカー以外にもオスカー・ピーターソンのピアノ、正体不明のトランペットが素晴らしい露払いの後、いよいよ主役の猛烈なアルトサックスが痛快! フレディ・グリーンのリズムギターも強い印象を残します。
 それは同じくスイングしまくった「Almost Like Being In Love」や「What Is This Thing Called Love」、グルーヴィにアレンジされた「I Can't Get Started」で軽やかに飛翔しながらエグイ音使いも特徴的という、チャーリー・パーカーならではのウネリと最高の協調関係となって、たまらないものがあります。オーケストラの演奏そのものも、実にカッコイイ!
 この時期のチャーリー・パーカーは甘っちょろいという先入観なんて、一発でブッ飛ぶんじゃないでしょか。これも聴かずに死ねるか!? だと思います。

 B-5 Laura (1950年7月5日録音)
 アルバムの最後は徹底的に甘く、それがある種の幻想性を導くというストリングスオーケストラとチャーリー・パーカーが聴かせる極北のメロディフェイクが桃源郷です。
 まあ、正直言えば、アレンジも陳腐だし録音そのものが些かチープですから、ショボイと決めつけられればミもフタもありませんが、チャーリー・パーカーが甘さの中にもスパイスの効いたフレーズとビート感で、これを演じてくれる、ただそれだけでアルバムの締め括りにはジャストミートの名演だと思う他はありません。

ということで、企画の優先性が強いですから、案外と聴かれていないアルバムかもしれません。しかしスタンダード曲を吹くチャーリー・パーカーという事に限れば、最良の1枚じゃないでしょうか。もちろん「ウイズ・ストリグス」のセッション盤も同様の素晴らしさがあると思いますが、こちらはストリングスよりはビックバンド系の派手な演奏ですから、より躍動する歌心が楽しめるというわけです。

個人的にはリラックスして聴こうとしても、チャーリー・パーカーということで、どうしても構えてしまうんですが、基本はジャズの楽しさの追求が制作意図なんでしょうね。

コメント
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