徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

国際児童画展―神奈川県立地球市民かながわプラザにて―

2013-07-05 12:36:18 | 日々彷徨



 絵画を通して、世界の文化や暮らしを理解しようと、7月28日(日)まで「かながわビエンナーレ国際児童画展」が、横浜市栄区あーすぷらざ(TEL 045-896-2121)で開かれている。
 1979年から隔年で実施されてきたこの催しも、今年で17回目だ。
 日本をはじめ、エジプト、ルーマニアなど世界92カ国1地域の、4歳から15歳の2万4000点余りの応募作品から、大賞を含む520点の入選作品が、会場狭しと展示されている。

 いずれも、児童たちならではの発想や視点から描かれており、個性的で色とりどりの豊かな表現が、展観者を楽しませてくれる。
 会場には、画用紙一杯にクレヨン、水彩、油絵、毛糸、切り絵などで描かれた、カラフルな作品が並んでいる。
 大人でも、思わずはっとするような素晴しい作品もある。
 明日の世界を担う子供たちの、夢と想像力は眩しいばかりだ。
 本展終了後は、8月28日(水)から、県内16会場でも巡回展が開催される。
 入場無料。
   


映画「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」―国家を揺るがした禁断の愛の物語―

2013-07-04 06:00:00 | 映画


 ニコライ・アーセル監督デンマーク映画だ。
 愛と権力、そして陰謀と裏切りが織りなす、禁断のロマンである。
 古風な王朝ロマンスではあるが、これはデンマークでは誰もが知っている事件で、映画の史実もほぼ正確だそうだ。
 史実をもとにした大河ドラマである。

 画面の美しさとリアりティに加え、デンマークという国の人々が繰り広げる宮廷ドラマだけに、大変興味深い。
 実在した登場人物たちの、生死を賭けたドラマは、息をもつかせず、最終局面までぐいぐいと引っ張っていく。
 実在の歴史をロマンスに書き換えるのは、映画の最も得意とするところだ。
 この作品では、精細な演出の効果と相まって、それを成功へ導いている。
 ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞作品である。






     
18世紀後半のヨーロッパ・・・。

教会の力を背景に、貴族が圧制を敷いていた時代の、偽らざる実話である。
1766年、英国王太子の美しき娘、カロリーネ・マティルデ(アリシア・ヴィカンダー)は、英国を離れ、デンマーク王、クリスチャン・7世(ミケル・ボー・フォルスガードのもとに嫁いできた。
しかし、国王クリスチャンは精神状態が不安定であると知り、カロリーネは人生に希望を失う。
それどころか、聡明なカロリーネに対して、屈辱的な振る舞いを繰り返すクリスチャンに、憎しみさえ感じるようになった。
ほどなく王の子を身ごもり、宮廷で祝福を受けるカロリーネだったが、夫との面会を拒み続け、唯一の友である女官を夫に追放されてしまい、次第に孤立を深めていく。
息子を出産したカロリーネは、1年か2年クリスチャンがヨーロッパを外遊することを告げられる。
彼女は「私は関係ありません」と答え、内心で自分を呪うのだった。

1768年、そこへ当時知識人や思想界の間で広まっていた啓蒙思想に傾倒していた、ドイツ出身の医師ストルーエンセ(マッツ・ミケルセン)が、国王の侍医として現われる。
クリスチャンは外遊中に精神状態が悪化し、ハンブルグで足止めを食らっていた。
ストルーエンセはランツァウ伯爵(トマス・ガブリエルソン)らの提案で、国王の侍医に急遽推薦されたのだった。
そんなストルーエンセを、カロリーネは最初はいけ好かない男だと思っていたが、啓蒙思想に傾倒していることが分かってから、好奇心を刺激され、本を借りたりするうちに恋に落ちる。
・・・国王の影に隠れて、王妃と侍医が密会を繰り返すことになった。

国王から全福の信頼を受け、王妃を愛人としたストルーエンセはその立場を利用して、国王の言動を操作し、王に代わって政府の権力を掌握する。
彼は、その力をデンマークの近代化のために使い、啓蒙思想そのままに、貴族の反発を排しながら、拷問を禁止したり、民生の向上を押し進め、思想家ヴォルテールからも称賛の手紙を受け取るようになる。
ストルーエンセが、王の代わりに国の改革に着手し始め、市民の暮らしを憂うカロリーネも自由主義を唱え、その想いが二人をより深く結びつけていくことになり、お互いの熱烈な想いを抑えることができず、仮面舞踏会の夜に結ばれる。
カロリーネは初めて幸せを感じ、改革の成功も信じるのだった。
しかし、性急な改革は貴族層の反感を買い、保守派の抵抗も激しく、一方でストルーエンセの子を身ごもったカロリーネと彼との不倫をかぎつけた、皇太后ユリアーネ・マリーエ(トリーヌ・ディルホム)は、国を揺るがすような政変を起こそうと画策していた。
欲望渦巻く宮廷の権力争いの中で、カロリーネとストルーエンセの許されざる愛の結末が迫ってきていた・・・。

デンマーク王クリスチャン7世妃カロリーネは、痛ましい運命に翻弄された王妃で、彼女が野心家の侍医と愛し合うようになり、それは間もなく公然の秘密となる。
それだけならさして問題ではなく、王は妻よりもストルーエンセの方を大切に思い、頼りにしていた。
問題なのは、厄介な政治の方であった。
ストルーエンセが事実上の摂政として、独裁政治を行うようになったからだ。
王と王妃を手玉に取るドイツ人が、デンマーク啓蒙の中心にいたわけだ。

王と妃の最初の出会い・・・、森の木陰でかくれんぼうをするような国王の姿に、新婦の期待が一気にしぼみ、夢と期待はそれだけで絶望と変わった。
ストルーエンセとの逢い引き、あふれる緑を背景に、遠い故郷を想い出す王妃・・・。
決して新しくはない古風な演出だが、胸熱くなるシーンをいっぱいに散りばめ、メロドラマの要素に歴史大作の風合いが加味されている。
ストルーエンセを演じる、「偽りなき者」で主演したマッツ・ミケルセンは北欧の至宝ともいうべき存在だし、王妃役のアリシア・ヴィカンダーはヨーロッパ期待の若手で、ヒロインの揺れ動く心情を繊細に演じ、王の悲しみと切ない感情を、みずみずしい演技で表現するミケル・ボー・フォルスガードと、彼らの豪華な共演も見ものだ。

ニコライ・アーセル監督は、日本でもヒットした「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」の共同脚本担当の俊英だ。
この「ロイヤル・アフェア」の物語は、世界史のどこにも表舞台には出てきていないし、教科書にも載っていない。
そういうドラマのいかに多いことか。
デンマーク映画「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」は、国の改革に乗り出した野心家の侍医と王妃を軸に据えて、愛と権力、陰謀と裏切りのデンマーク王室最大のスキャンダルを描いて、文句なし大いに楽しめる歴史大作だ。
     [JULIENの評価・・・★★★★☆](★五つが最高点