徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

『中原中也の手紙~安原喜弘へ~』展―神奈川近代文学館―

2013-07-06 21:00:00 | 日々彷徨



 関東各地で、日中の最高気温が軒並み35度以上を記録した。
 これでは暑いわけだ。
 そして、やっと関東甲信地方は梅雨が明けて、いよいよ夏本番を迎えた。
 今日の文学散歩は、神奈川近代文学館だ。

     汚れっちまった悲しみに
     今日も小雪の降りかかる
     汚れっちまった悲しみに
     きょうも風さえ吹きすさぶ・・・(中原中也「白痴群」)

 








詩人中原中也は、普段から切手や葉書を持って歩いていた。
彼は知人や友人に、多くの手紙を書き送っては、 いつも自分が感じたり考えたりしたことを、誰かに伝えようとしていたので、手紙はそのため の大切な手段であった。
中也の手紙の中で、友人安原喜弘宛ての102通が、最も多く現存する手紙だ。

中原中也(1907-1937)は、1928年(昭和3年)安原と出会って、同人誌を通して活動を共にし、生涯にわたって文学を通じて交友した。
中也の没後、安原が著した『中原中也の手紙』は、中也研究の第一級の伝記資料もといわれている。
それは、短い生涯を生きた中也と安原の、青年期の友情を超えた魂の記録として、貴重な資料だからだ。
・・・中原が初めてその仮借なき非情の風貌を私の前に現したのは昭和三年秋のことであった。(安原喜弘)

今回、会場で初めて一堂に展示される、全102通の手紙で、二人の交流の軌跡がわかりやすく紹介されている。
7月21日(日)には詩人蜂餌耳氏の講演や、8月2日までの隔週金曜日にはギャラリートークも予定され、また7月13日(土)・27日(土)の両日には、1976年シネマ・ネサンス、岩崎寿弥監督(平成25年5月死去)の映画『眠れ蜜』の、記念上映会(入場無料)も行なわれる。
この映画『眠れ蜜』は、根岸とし江長谷川泰子吉行和子和田周岸部シローらが出演、「若」「熟」「老」と三世代の女性が‘自分自身’という役柄を演じるオムニバス作品である。
この映画の中で、中原中也のかつての恋人で、京都から上京後、中也からのちに小林秀雄のもとに走った長谷川泰子が「老」を演じている。

昭和11年11月16日中也の満2歳になる長男が亡くなり、それから49日間家から一歩も外出せず、悲嘆にくれながら、般若心経を詠んで暮らした中也だったが、翌年結核性脳膜炎を発症し、30歳の若さで死去した。
生前最後に住んでいた家は、鎌倉寿福寺の境内にあった。
何にしても、早逝を惜しまれる詩人である。
この企画展『中原中也の手紙』展は、8月4日(日)まで神奈川文学館で開催されている。