戦う者の人生は、戦わぬ者よりはるかに美しい。
そうなのだろうか。
美少女が、熾烈な戦闘を繰り広げる、バトルアクションというべきか。
ザック・スナイダー監督のアメリカ映画だ。
これまた、荒唐無稽な妄想ヴィジュアルの、ちょっと絢爛たる展開で・・・。
友情や裏切りを超えて、弱き者たちの悲しみを照らし出す、幻想的な物語世界だ。
時は、1960年代・・・。
愛する母親を亡くし、莫大な財産を狙う義理の父の謀略で、ベイビードール(エミリー・ブラウニング)は、僻地の精神病院ノック・ハウスに送り込まれる。
病院に閉じ込められたベイビードールは、しかし、生きる勇気を失ってはいなかった。
彼女は、本当の自由を手に入れるために、つらい現実から抜け出し、戦うことを決意する。
ベイビードールは、苦痛と孤独だけを友としてきた4人の少女たちと、武器をとり、ともに戦うことを呼びかける。
それは、病院からの脱走であった。
戦場では、巨大な侍や、ゾンビ兵士に行く手を阻まれるが、美少女戦士たちは、バーチャルな兵器を巧みに使いこなし、力を合わせて、賢者の導きで勝利を重ねていく。
そこは、現実世界のルールなど、すべてを無視した、想像を絶する世界だ。
この戦闘は、実は主人公の想像(妄想)で、妄想は二層、三層へと入りこんで多重化し、現実とのあいまいさを切り刻みながら展開する。
つまりは、展開にも無茶苦茶な演出があり、どうせ観るからには、ややこしいことはあまり気にしないことだ。
美少女キャラクターを使った、“脳内もの”と割り切った方がよいようだ。
ザック・スナイダー監督のアメリカ映画「エンジェル ウォーズ」は、アニメやコミックのゲームの影響を感じさせる演出で、観客を酔わせる想像世界だ。
それもそのはず、病院から脱走するために繰り広げる戦いは、ベイビードールがダンスに興じている間の、彼女の妄想から生まれているのだ。
<妄想×妄想=自由?>で、少しの間でも、浮世の現実を忘れさせてくれる、異次元の世界に遊んでみる手もありかと・・・。
ドラマは、幻想的な映像美を、ふんだんに見せてくれる。
とにかく何の制限もない、怖いもの知らずのスナイダーワールドだ。
ただし、このドラマには、いささか重苦しさが漂う。
思い切り、素直に笑うというわけにはいかない。
少女たちが、セーラー服もどきのへそ出しルックのコスチュームで、武器を使って、思う存分に暴れまわる姿に爽快感はあっても、ドラマの底にあるのは「虐待」だからだ。
少女たちは、いかにして空想世界を制し、自分たちの運命を変えることができるか。
テンポあり、ファンタジーありで、あっという間の1時間49分だ。
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いわゆる「ジャパニメーション系」の作品なのですね。カワイイ女の子が並み居る敵をバッタバッタと薙ぎ倒す。
少女が戦いの果てに見いだすのは・・・,といった作品でしょうか。
(これって、やっぱり陰鬱なる抑圧からの解放でしょうかしらね。)