実際にあった朝日新聞の記事から着想を得て、気鋭の中江和仁監督が構想20年をかけて、この作品を完成させた。
これもまた、ある愛(?)の物語である。
もしも、同棲相手の素性が全て嘘であったらどうするか。
そうだ。ちょっと怖い話だ。
この物語は、映画企画コンペで優勝し、映画化にこぎつけたいきさつがある。
まあ、観ても損のない映画ではなかろうか。
食品メーカーでヒット商品の開発に力を注ぐ、キャリアウーマンの由加利(長澤まさみ)は、同棲5年目を迎えた心臓外科医の恋人、桔平(高橋一生)との結婚を真剣に考えるようになった。
そんなある日、刑事2人が自宅を訪ねてきて、桔平がくも膜下出血で意識を失い、病院へ搬送されたという。
ところが、身元確認の過程で、桔平の職業や名前のすべてが嘘と判明したのだ。
由加利は桔平の正体を調べようと思い、探偵の海原(吉田鋼太郎)を雇い、彼が書き溜めていた小説を手掛かりに、小説の舞台となっていた瀬戸内へと向かうのだった。
会社の由加利と研修医の桔平は同棲5年目だ。
幸せの中にあったが、意識不明となり、名前も職業も嘘だと分かった。
由加利は桔平の過去を探る旅に出る。
愛した人は本当は誰だったのか。
由加利という女性は自分本位で、周囲を顧みずに突き進む女性のようで、共感を呼びそうな役どころではない。
本当に嫌な女であろう。
設定はミステリアスで興味深いのだが、謎を解明していく過程はいささか物足りない。
登場人物の設定に重厚感はない。
うすっぺらで、嘘をついていた桔平の理由も何だかすっきりとしない。
ドラマはそんなこんなで全容がもたついているように見える。
暗いテーマを扱いながら、笑いを織り交ぜていくあたりはいいとしても、3時間近い上映時間は間延びしてどうも・・・。
でも、なかなかの実力派俳優陣をそろえているだけに、ドラマをしっかりと支えている感はする。
物語の展開もちょっと窮屈な感じがあったりして、そうかと思うとほどほどにしなやかな余韻を持たせたり、演出には中江監督の鮮やかな手腕の見せ所も大いなる救いだ。
ドラマにはファンタジックな要素や回想シーンなども多々加わって、面白おかしい場面もある。
ヒロイン由加利は難しい役どころだが、演出によく答えて長澤まさみの熱演が光っている。
しかしまあ、結論からいってしまうと、中江和仁監督の映画「嘘を愛する女」は一見ミステリアスに見せて、観終わってみると人間模様を濃密に描いた、結構純粋で素直なラブストリーではないか。
[JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点)
次回は日本映画「花筐 HANAGATAMI」を取り上げます。
まあ、映画ってわからないことがあるものですね。