「恋愛適齢期」(03)、「ホリデイ」(06)などロマンティックな大人のラブコメディで知られる、ナンシー・マイヤーズ監督が、風変わりな友情関係をハートフルに描き出した最新作である。
女性監督ならではの、女性の複雑で繊細な心理描写は見どころたっぷりで、現代女性のリアルな本音が満載だ。
ウィットに富んだセリフの数々も軽やかで心地よい。
そして、ちょっぴりお洒落な人生ビジネス指南書のような・・・。
世の中で頑張っている女性に、勇気と明るい希望をもたらすヒューマンドラマだ。
家庭を持ちながら、何百人もの社員を束ねるファッションサイトを運営する会社の社長であるジュールズ(アン・ハサウェイ)は、女性なら誰しもがあこがれる華やかな世界に身を置きながら、仕事と家庭を両立させ、女性の理想像を絵にかいたような人生を送っているように見えた。
しかし、そんなジュールズに人生最大の試練が訪れる。
幼い娘を持つジュールズは、夫が仕事を辞めて専業主夫になったことで、私生活を両立させていたのだ。
多忙な仕事をこなしていく中で、夫の浮気疑惑が持ち上がり、自分の仕事優先の生活を見直す羽目になる。
そんな悩める彼女のアシスタントして、会社の福祉事業として雇用することになった40歳年上のシニア・インターンのベン(ロバート・デ・ニーロ)がやってくる。
若い女性ボスは、ジュールズの補助についた高齢男性部下を当初は疎ましく思っていたが、彼の人間力を目の当たりにして、次第に信頼を置き始めるのだった。
ベンの豊かな人生経験に裏打ちされた誠実な人柄や仕事ぶりに触れて、ジュールズは人生の知恵を学んでいく・・・。
女性経営者と会社に新たに雇われた70歳男性とは、ざっと40歳もの年の差があり、一見そんな上司と部下の物語なのである。
ジュールズは一生懸命に仕事をし、直感に優れているが、危なっかしいところもある。
ベンは包容力たっぷりで、父性的な存在だ。
高齢化時代の生きがい探しという側面と、女性の社会進出などの同時代的な背景を盛り込み、素直に見ている分にはは結構楽しくもある。
女性監督のせいか、作品には大人の女性の好物がいっぱいで、ファッションもインテリアも舞台設定も、どこをとってもお洒落な目配りがあるのは好感が持てるとしても、主人公はもちろん、彼らを取り巻く老若男女の登場人物たちの人間関係の描かれ方は薄味だし、働く女の葛藤のドラマとしてはちょっと弱いところもある。
浮気をしている夫についても、妻と夫の関係についても描き足りない。
ロバート・デ・ニーロは古き良き時代の男性を演じていて、豊かな表情とともになかなかいい味を出しており、とにかく相手の話によく耳を傾けるあたり好感が持てる。
彼は迷える女性の幸せへの案内人のような存在で、映画も現代女性の心癒される人生応援シネマといったところだろうか。
一方、マイヤーズ監督の要請によく答えたか、三十代のアン・ハサウェイの洗練されたファッションも見どころがあり、女性のひたむきで前向きにとらえた生き方を描いて、軽やかながらドラマは温かく清々しいものがある。
アメリカ映画「マイ・インターン」は、アカデミー賞女優のアン・ハサウェイとこの賞を二度受賞しているロバート・デ・ニーロが見せるハートフルな物語である。
面白さも楽しさも中程度ではあるが、何の抵抗もなく観られる作品だ。
[JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点)
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一時の清涼剤です。
デ・ニーロのとぼけたような洒脱さには、くすくす笑ってしまいますが・・・。
はい。