徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「ワン・デイ 23年のラブストーリー」―惹かれあう男女の友達以上恋人未満?―

2012-07-03 16:00:00 | 映画


 男女の友情は、永遠の命題だという人もいる。
 愛があるからこそ、あえて友達で踏みとどまるのか。
 それとも、一線を越えた恋となるのか。
 人生に「もし」はない。
 だから、その時々の選択に、その後の運命がかかっている。

 ロネ・シェルフィグ監督アメリカ映画である。
 ロンドンとパリを舞台に、男女の23年間にわたる恋と友情を描く。
 毎年7月15日にスポットを当てて・・・。
 お互いに惹かれあいながらも、友人でいることを選択した男女の、特定の日を切り取って、二人の心の 移り変わりを綴るラブストーリーなのだ。

 ヨーロッパを中心にベストセラーとなった同名小説を、原作者自身の脚本で映画化した。
 それぞれの道を歩みながらも、二人はどんな運命をたどったのか。
 こんな昔話のようなドラマを、ずっとずっと前に幾度も観たような気がする。
 作品の趣向は、一見斬新だが、さて・・・?
      
二人の出会いは、1986年7月15日だった。
その日が、大学の卒業式だった。
真面目でしっかり者のエマ(アン・ハサウェイ)と、自由奔放で恋多き青年デクスター(ジム・スタージェス)は、その日初めて言葉を交わした。
意気投合した二人は、お互いに惹かれるものを感じながらも、そのまま恋に発展させることはなかった。
エマは、自分の恋心を隠しつつ、デクスターとの友情関係を続けていく。

1989年、エマはロンドンで暮らし始めていた。
1990年、デクスターはパリを謳歌していた。
1992年、二人でフランス旅行をし、エマは秘めていた想いを告白するが、デクスターは割り切った人間関係を望んでいた。
1994年、家族とのトラブルに頭を悩ましたデクスターは、エマに電話をするが、その時エマは別の人と会っていた。
1996年、エマは恋人と同棲しながらも、デクスターとの再会に胸がときめく。久しぶりの再会だったが、酒に溺れるデクスターを見ていられず大喧嘩をし、別れを決意する。
2000年、友人の結婚式で二人が再会する。二人はすれ違いを繰り返しながら、それぞれの人生を歩んでいく。
2003年、作家として成功し、パリで暮らすエマのもとに、離婚したデクスターがやってくる。彼からの初めてのプロポーズに、エマは新しい恋人の間で心が揺れる。二人の転機となる、23年目のその日に・・・。

・・と、まあこの時系列にはいささか食傷気味となるのだが、二人の23年間の軌跡をデートムービーとみる分には、まずそれだけの話だ。
人生流転23年間のエマアン・ハサウェイ)を見ていると、人生ってこんなものかなあという気がしてくる。
当たり前と思っていた一日が、忘れられた一日に変わるとき、あるひとつの愛の形に納得するのだろか。
二人の主人公は、十代から四十代まで、23年間の気持ちの微妙な変化、時間の変遷を一応丹念に演じてはいる。
その時代に流行していた音楽やファッションなど、ディテールにも当然こだわりの感じられる作品だが、演出の手法は別として、とくに新しい隠し味があるというものでもない

登場人物の男性も女性も、特別の魅力ある(?)キャラクターだとも思わない。
その二人が強く惹かれあうというからには、もっと、二人の愛の心理に迫らなくてはいけないはずだ。
23年という歳月に何があろうとも、ただ惹かれあったというだけでは、ドラマに何の深みも奥行きもない。
一番大切な部分が、描写不足では・・・。

ロネ・シェフリグ監督は、デンマーク人女性らしく細やかな目配りのきいた、好感のもてる演出の割には、突っ込み方が浅く弱い。
大体、23年間と聞いたら、大変な時間の流れだ。
人の心、とくに男と女というこの厄介な代物が、23年間かりに友情を保ち続けたとしても、そこにはいろいろな状況が介在し、どちらにとっても複雑な人生の構図が描かれるのは必至だ。

人は、結局ひとりでは生きられないものだ。
愛も、お金も、必要なのだ。
学生時代にデクスターと同じジーンズ姿の同級生だったエマが、23年後の今成功してベストセラー作家として名をなし、パリに住み、洒落たファッションに身を包み、パリジェンヌなみだ。
そして、離婚したデクスターに会うと、何故か熱い心がよみがえる・・・。
そんな女心もあるのだろうか。

ロネ・シェルフィグ監督「ワン・デイ 23年のラブストーリー」は、23回という忘れられない「7月15日」だけを切り取って、男と女の軌跡を紡いだ物語だ。
1日でも、ときには4年分を撮ったシェルフィグ監督の言うように、登場人物の外見(服装)やまわりの風景が変わるのはもとより、時系列で見つめる演出はそれなりに気づかいもあったと思われる。
そして、確かにそうだ。
人々は、今現在を大切にするようになった。
人生は、遠回りばかりしていられない。
     [JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点