1800年昔の、中国戦乱の歴史を描くPartⅡだ。
ジョン・ウー監督のこの大作は、ハリウッドを凌駕する壮大なスケールで、大いに楽しませてくれる。
PartⅠ以上の、文句なしの面白さだ。
「三国志」の中で、最も人気の高い「赤壁の戦い」のクライマックスに、全編の二分の一以上を費やしている。
西暦208年、帝国を支配する丞相・曹操(チャン・フォンイー)は、対抗勢力を殲滅すべく、80万の大軍を率いて遠征に赴く。
これに対し、劉備(ユウ・ヨン)と孫権(チャン・チェン)の僅かに5万の連合軍は、長江の赤壁で対峙する。
劉備の軍師孔明(金城武)の才知と、孫権の司令官周瑜(トニー・レオン)の勇猛さで、はじめは曹操軍が大きな打撃をうける。
しかし、200隻の船を持つその主力は健在で、いよいよ決戦の時を迎える。
連合軍は、軍師孔明が、気象の変化(風向き)を読み、敵の心理を突く作戦で、大軍を撃破しようとする。
曹操軍80万の兵、2000隻の戦艦に対して、連合軍はたったの5万、200隻の戦艦で、絶体絶命のピンチに勝機を見出したのだ。
結果的に、それは、軍師孔明の奇策と知恵が功を奏したのだが・・・。
闘う心、忠義の心、野望の心、信じる心が未来を変える。
命がけで人を信じ、人を愛した男たちがいた。
彼らは、未来の見えない時代の、生きる希望だったと言いたいのか。
敵役の曹操を演じるチャン・フォンイーは、なかなか風格のある演技を見せてくれるし、孔明役の金城武も役柄といい、演技といい、いい仕事をしている。
もうこの作品については、百聞は一見に如かずである。
スケールの雄大なスペクタクル映画として、極上のエンターテインメント作品だ。
曹操、劉備、孫権という、三国時代を作りあげた人物やその子孫は、結局は一人として中国を統一することができずに滅んでいったのだが・・・。
アメリカ・中国・日本・台湾・韓国合作の「レッドクリフ PartⅡ」は、ある意味では痛烈な男の美学を追及しているような気もする。
凄惨な戦いをくぐり抜けて、生き残ったのは・・・。
この作品の底辺にあるのは、やはり‘義’と‘愛’ということになるのだろうか。
黒澤明を敬愛し、「七人の侍」を絶賛してやまない監督ジョン・ウーの「三国志」への思いは、いやがうえにも伝わってくる。
日本人作曲家、岩代太郎の映画音楽もこれまたよかった。
楽曲は、全編フルオーケストラで、東京交響楽団の演奏だが、現代的なサウンドと琴、横笛など、「東洋の感性」を融合、駆使して、迫力満点の壮大な世界観を演出している。
この人、あこがれのジョン・ウー監督をわざわざ北京に訪ね、売り込みの直談判から一年半後に、オファーがあったのだそうだ。
撮影は一年三ヶ月余りに及び、監督とは、寝食を共にして、アジアの国境を超えて交流を深めたそうである。