徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

「情けは人の為ならず」ー供与されるものー

2007-11-13 07:42:03 | 寸評

軍需専門商社「山田洋行」元専務の逮捕で、防衛省の利権に検察のメスが入った。捜査の成り行きが注目される。
いまのところ、元専務の容疑は、業務上横領ということになっているが、裏金の一部が、前防衛事務次官に流れた事実がなかったかなどを含めて、全容の解明が急がれている。

最近になって、前次官が、10年ほど前にかつての直属の部下だった防衛省の現職課長に、投資目的で2千数百万円を預けたことが分かった。
投資は失敗したらしいが、上司、部下の関係でこれだけの金額のやりとりはいかにも不自然で、違和感を覚える。
事態は、防衛省の課長クラスを巻き込んだ、底なしの構造汚職の様相だ。
テロ特措法どころの話ではなくなってきた。

「山田洋行」元専務から幾度となく繰り返された、前次官や、その妻への接待、饗応、物品買い与えなどが、次官への利益供与には当たらないのだろうか。
元専務は、前次官の忙しいときには、その妻だけでも週に2,3回、東京・赤坂の高級クラブなどに接待していたと言われる。
頻繁に行われた、こうした接待料金は、全部「山田洋行」側に負担させ、前次官不在のときでも、次官本人と同等の扱いでなされたという。
家族をも取り込んだ、ズブズブの接待攻勢の実態が明らかになった。

そこまでして、元専務の受けた見返りは何だったのだろうか。
ゴルフや、飲食接待が賄賂に当たるのかどうか。
特捜部は、慎重に検討している。
接待汚職事件については、過去にも摘発例はある。
しかし、これとて、いろいろと立件も難しい面があるようだ。

元専務と前次官の会談の席には、防衛省の役職関係者は勿論、与野党の大物政治家も同席していたとされる。
捜査が、政界に及ぶのも時間の問題かもしれない。

90年代の半ばに、大商社三井物産が、約40年に渡って保持し続けてきたと言われる、アメリカのゼネラル・エレクトリック社(GE)の販売代理権が、規模も売り上げも、けた違いに小さい「山田洋行」に移った。
その時の奪取劇は、今でも、防衛省内の語り草になっているそうだ。
勿論、「山田洋行」の責任者は宮崎元専務だった。
当時、「手だれの宮崎には気をつけろよ」と、注意する声も上がっていたと言う。
元専務の、「相手を接待漬けにして、『落ちる』のを待つ」独特のやり方については、アメリカでも、彼が奪い取った、次期輸送機(CX)用のエンジンの代理店契約にからんで、まことしやかにささやかれた噂である。
まさに、それは“アリ地獄”そのものだったようだ。

酒席や女性を使って、相手を篭絡させる・・・。
こうした手法で、元専務は防衛省内部に深く入っていったようだ。
元専務の見返りが、防衛省の装備品調達の便宜の供与だったであろうことは、誰の目にも明らかだ。
それでなかったら、一体何のために、守屋前事務次官は、異様に過剰なまでの接待を受ける必要があっただろうか。

・・・世の中、ギブ・アンド・テイク(与えて、取る)である。
こうした商取引に、慈善事業などありえない。
何かを求め、期待するからこそ供与するものがあるのだ。
そんなことは、疑いのない話だ。

「山田洋行」元専務は、前事務次官を接待漬けにして、何を求めたのか。
前事務次官は、それに対して、何を供与し、どう答えたのか。
国会の証人喚問で、前次官は、肝心のこととなると、「記憶がありません」「わかりません」「そういう事実は全くありません」としらを切った。
それでは、例えば、夫人同行のゴルフなどで、何故偽名を使ったのか。
また、何故偽名を書くように、元専務は指示したのか。

その後の取調べでも、前次官の発言といくつかの矛盾する点が出てきたと言われ、新たに偽証罪の疑いも出ている。
近く参議院でも承認喚問が行われるが、そこで、改めていろいろと追求されることになるだろう。
前次官は、今度は何を語るのだろうか。

元専務の前次官に対する利益の供与と、それがあるからこその、前次官の元専務に対する便宜の供与・・・。
これらが、全く何も無かったなどと、誰も信じる者はいない。
与えるから求める。求められるから与えるのだ・・・。
おのずから、そこには、「利益の供与」と「便宜の供与」が成り立つ構図である。

・・・「情けは人の為ならず」と言うではないか。
人に同情する、情けをかけるということ、それは、決して他人だけを益することではない。人に情けをかけておけば、その善い報い(?)は、必ず巡り巡って、自分に返ってくるということだ。
人に親切にしておけば、あとできっといつか善い報いがある。
分かりきったことである。
だから・・・、ネッ~!