以前は無料だったのに、いつからか、両替にまで手数料がかかることになってしまった。
銀行で、両替するのはやめることにした。
あまりにも、馬鹿馬鹿しい。
以前は、両替に手数料なんてなかった。
お金など払わずに窓口でも、機械でも簡単にできて便利だった。
このあいだ、350円を5円玉に両替しようとして、手数料の高さに怒って、行員のネクタイを引っ張ったとして、28歳の男性が、暴行容疑で逮捕されたという。
暴力はいけないが、怒るのも分かる。
何でも、手数料だ・・・。そういう時世になってしまった。
有難くないことだ。
銀行によっても、多少の違いはあるらしいが、或る都市銀行では、残高証明書の発行手数料は、525円から2100円まであるそうだし、通帳の再発行手数料は、1050円だと言う。
同じ銀行同士でも、振込み手数料は今や当たり前で、とにかく何でもかんでもかかりすぎる。
・・・それはさておき、銀行の預金の利息は驚くほど安い。
一方融資を受けようとすると、その条件は厳しく、こちらの利息は高い。
融資の条件を緩和すれば、都知事のあの銀行みたいなことになる。
それは、そうだろう。
銀行も、慈善事業ではない。自己の不利になることをするわけがない。
・・・或る銀行で、こんなことがあった。
あれは、多分中小企業の社長さんだったと思う。
融資を申し込んで、どうも審査で断られたらしかった。
会社の景気のよかったときには、よく面倒をみてくれたのだろう。
それが、景気が悪くなってから、急に貸し渋るようになったのだった。
その銀行の融資の窓口で、口角泡を飛ばして怒鳴っていたっけ・・・。
「今じゃよう、カネのありそうなところには、お宅の営業さんもさ、足しげく日参してさ、そこではぺこぺこと頭をさげて、三顧の礼で預金してくれ、預金してくれって言うじゃねえか。うちが、売り上げが伸びてるときは、しょっちゅう来てくれてそう言ってた。それが、ちょっと業績が不信だからって、手のひらかえすように、こんなに変るもんかね。・・・俺たちがさ、本当に困っているときには、貸してくれと言ったって、貸しちゃあくれねえ。逆に早く返済しろだと!冷たいもんだ。変れば変るもんだ。あんたたち、誰のおかげで高い給料もらってると思ってるんだい。それじゃあ、どんなに綺麗なこと言ってたってよ、紳士ぶってる、体(てい)のよい高利貸しと変らねえじゃねえか・・・!」
・・・まあ、思い切ったことを言ったものである。
あまりの声の大きさに、周囲の人たちも、唖然としていた。
その時接客していた、あのまだ若かった支店長の、一瞬凄んだ顔が忘れられない。
・・・そして、こんなこともあった。
或る金融機関の、開店直前のことだった。
「お前たち!」とか「お前らが!」とか、「いいな!・・・話がまとまらないうちに、帰って来るんじゃねえぞ。分かったな!」と、部下に命令しているような声が聞こえた。
まだシャッターが降りている店内から、朝礼でもやっているのか、大きな怒鳴り声で檄をとばしている支店長の声のようだった。
まるで喧嘩を売っている、ヤクザのようであった。普段柔和な支店長の顔からは、とても想像できなかった。
銀行って、何なのだろう。
特に、弱者である中小企業への融資となると、貸し渋りはひどく、零細業者は資金繰りに行き詰まって、自殺にまで追い込まれた社長もいる。
今でも、こうした格差は縮まるどころか、小泉改革の影響もあって、確実に広がりつつある。
銀行は、高利で庶民を泣かすサラ金業者に多額の融資をし、保険金を国民から騙し取った(?)大手生保は、保険不払いで巨額のカネの上に胡坐をかいている。
これを、行政の怠慢と言うのか。
・・・降り続く雨とともに、枯葉が、かさこそと舞い落ちて、秋の風も一段と冷たくなってきた。