徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

「エスカレーター」ー油断は禁物ー

2007-08-29 04:30:00 | 寸評

 暑い日盛りの中に、夾竹桃の花が映えて、去りゆく夏を惜しむように降りしきる蝉時雨・・・。
 それでも、朝晩はひんやりとした秋の風を感じるようになった。晩夏である。
 
 その駅のエスカレーターは、いつものように順調に動いていた。
 今日も、多くの人たちが利用していた。
 エスカレーターは、上りも下りも共に二列に並ぶことができるわけだが、左側コース(普通)、右側コー
 ス(特急)と分かれているようだ。
 このルール(?)、一体誰が決めたのか知らない。
 上りエスカレーターの左側は、上から下まで切れ目なく人の列が続いていたが、、右側は空いていて、
 左側の人たちを追い越して駆け上がっていく人たちがいる。
 この右空けルール(?)が、マナーというのか、慣習というのか、いつのまにか定着してしまった。
 ところが、いまだにこのことをよく知らない人もいる。
 このルール(?)を知らない老婦人が、動いているエスカレーターの右側にぽつんと立ち止まっていた。
 そこへ、その右側コースを急ぎ足で上ってきた青年がいた。
 青年は、前がつかえて足止めされるかたちになった。老婦人は、気がついていない。
  「どいて下さい」とは言えない。
 たとえ言われても、その老婦人は身をよける場所がない。
 青年は、仕方なく待つことにした。エスカレーターは動いている。
 その時、左列(普通コース)にいた中年の女性が、何の弾みか、足を踏み外して転倒しそうになった。
  「あっ、危ない!」
 右列で、前がつかえて足止めされていた青年が、叫んだ。
 と、ほとんど同時に、左列のすぐ後ろにいた男性が、その中年の女性をうまく抱きかかえるようにした
 ので、彼女は転倒もせずに、よろめいただけですんだ。
 女性は、両手に大きな荷物をかかえていた。
 一瞬の機転で、女性を転倒から救った男性は言った。
  「大丈夫ですか」
  「御免なさい、すいません。有難うございました」
 彼女は、少し青ざめた顔で頭をさげた。
  「ああよかった」
 その男性のすぐ後ろにいた私も、右側にいた青年も、思わずほっとした。
 エスカレーターは降りるところに着いて、私たちも、何事もなかったように、エスカレーターを降りた。
 ほんの、数秒間の出来事だった。
 
 この時、中年女性のすぐ後ろにいた男性が、転倒しかけた彼女を支えきれなかったら、その後ろにいた
 私は、どうなっただろう。
 その男性が、女性を支えられずに弾みででよろめいたら、私もまたあおりを受けて、自分の後ろの人に
 ぶつかり、多分列の下の方の人まで将棋倒しになったかもしれない。
 そう思うとぞっとした。
 それに、それは状況から見て十分起こりうることだった。
 それが、大事に至らなかったのは幸いであった・・・。
 
 何も、エスカレーター本体の故障に限ったことではない。
 事故は、自分の不注意でだって起きる。自ら気をつける必要があるという教訓だ。
 ひょっとした弾みで、いつでも起こりうることだ。
 もしかして、一歩前に足を上げようとして、その足が上がらず、躓く(つまづく)なんていうことも・・・。
 

 エスカレーターの、空いている方の右側コースを普段からすいすい歩行し慣れている人も、勿論左側に
 立ち止まっている人も、要注意だ。
 右側コースの人は、一分一秒を争って(?)、急ぎ足で上り降りするわけだ。
 これは、皆が結構やっている。大きな声では言えないが、自分にも経験がある。
 つい右側に立ち停まることになっても、後ろから急(せ)かされているみたいでやってしまう・・・。
 ただ、ラッシュ時などに、急ぎの利用者のために、片側を空ける配慮を良き慣習だという側面は、勿論
 問題がないわけではない。
 とくに、エスカレーターの左側(普通コース)に並び損ねた高齢者が、やむを得ず右側(特急コース)をゆ
 っくり歩いている姿は、後ろから追われているように見えてつらい。

 このことは、駅に限らず、デパート、スーパーでも言えることである。
 或るデパートでは、エスカレーターでの歩行は大変危険だから、二列に並んで立ち止まって乗るように
 呼びかけているそうだ。
 本当は、その方が望ましいにきまっている。
 急ぐ人の気持ちも分からないではないが、右側を追い越されて、怖い思いをした人も多いことだろう。
 利用客の重大な転倒事故の防止のために、商業ビルや鉄道各社には、早急な安全対策を望みたい。

 事故が起きてからでは遅い。
 エスカレーターには、見えない危険がひそんでいる。
 気をつけたい。
  ・・・「逸る(はやる)心のエスカレート」・・・