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山の記憶 (百名山・二百名山・三百名山)

山スキー、その他の山行もあります。

百名山の記録 羅臼岳

2014年11月07日 | 日本百名山

 2008年6月24日
 小樽~札幌~旭川とつなぎ美幌から網走に入る。途中小雨ぱらついたが、オホーツクは曇り空。網走監獄の観光案内板が目に付く。倶知安が自衛隊の町なら、網走は監獄(現刑務所)の町。それだけ、かっての監獄が果たした役割は大きい。監獄によって町が発達した例の一つだ。
 網走といえば、かって巷で流行った歌と共に映画「網走番外地」を思い出す。
                  春に春に追われし花も散る
                  酒(きす)ひけ酒(きす)ひけ酒(きす)暮れて
                  どうせおいらの行く先は
                  その名も網走番外地  

              網走刑務所(立っているのは人形)

    

           左の人物は、脱獄の名人(後に模範囚となる)

         

 


 高倉健さん主演の映画「網走番外地」の主題歌であるこの歌を、当時、飲むとかならずといってよいほど歌ったものだ。この虚無的で、もの悲しい調べに乗ってスクリーンに映し出されれる冬のオホーツクが記憶の片隅から消えないのは何故だろう。
  網走監獄はいわゆる記念館的な博物館として当時の姿を復元させたものらしく、網走刑務所とは別のものである。監獄が、歴史文化博物館として今なお残るのは、北海道開拓の歴史とも密接な関係があるからだ。
              

                    網走刑務所の歌

       

             

            遙か遙か彼方にゃオホーツク
           赤い真っ赤なハマナスが
                   海を見てます泣いてます
                   その名も網走番外地
 
 歌を口ずさみながら、車をオホーツク海沿いに走らす。斜里を過ぎ、ウトロに入る。オシンコタンの滝を横に見て岩尾別温泉の駐車場に車を止める。この駐車場はホテル「地の涯」のものらしく、登山だけを目的とする者の駐車場は限られていて、隅の方に移動させられる。
 今日は登山口までの下見だけなので車を置いて様子見だ。ホテルの横手をしばらくたどると狭いけれど車数台は置けそうな駐車場があり、その奥に木下小屋がある。登山口はこの小屋の前となっていて、登山ポストが置かれ、「クマよけスプレーお貸しします」のビラが貼ってあった。有料なのだろうが、どうしたものだろう。
 ホテルの駐車場に帰り、川沿いに整備された天然温泉を見物する。ホテルの従業員の方たちが整備されたそうで、無料となっている。
 今夜の宿泊地をウトロの「道の駅」と決めていたので、一旦引き返すこととする。オホーツクに沈む夕日を見ながらビールで乾杯。今日も車中泊とする。

 6月25日 羅臼岳
 北海道の朝は早い。松江と比べ緯度にして約12度の差があるので、時間にするとざっと44分の差があることになる。だから、4時にはもう明るくなっている勘定だ。
 朝はすぐに岩尾別温泉前の駐車場に移動する。4時25分、木下小屋前の登山ポストで登山者届けを済ませ、スタート。クマ注意の看板があるが、出くわさないようにと念じながら歩く。クマは、蜂の巣やアリの巣などを狙って出没するらしく、その場所が登山口をしばらく登った辺りらしい。
 私より早く登っている人がいるので幾分安心だが、危険地帯は早く抜けるのが一番だ。
 樹林帯の中にくねくねと続く道もいつしか尾根筋に入り、間もなくオホーツク展望台に到着する。下界は霧に被われ視界はない。羅臼が霧に包まれる日は、素晴らしい雲海を見ることができるそうだ。5時45分、弥三吉水に到着。水場の横に一張り程度のテントを晴れそうなスペースがある。冷たい水でのどをうるおしなおも登ると、極楽平だ。

          


 極楽平は、平坦地でもあり一息入れるのに良い場所。しかし、すぐに急登が始まる。急坂を過ぎ、霧も晴れて来た頃、行く手に雪渓が現れる。いよいよ大沢に到着。ここを詰めれば羅臼平。雪渓の端に先行者が休んでおられた。簡単な朝の挨拶を交わして、雪渓への登りにかかる。汗にまみれた身には、雪渓歩きは冷たくて気持ちが良い。息は切れるが、一気に羅臼平までがんばることとする。雪渓の溶けたあとの地肌には、沢山の花々が美しく咲き誇り、谷間を埋めている。これから本格的な花のシーズンを迎えることになるのだろう。エゾコザクラの可憐な花に励まされるようにして雪渓を詰めると羅臼平。
 右手にゴツゴツした岩を重ねた羅臼岳、左手にはゆったりとした起伏は三つ峰だ。ヒグマ対策のための看板が立てられ、金属製のボックスが置かれていた。食料類の管理のためらしく、匂いのするものは全てこのボックスに入れておけとのことだ。ここでキャンプをする登山者がいるのだろうか。

                      エゾコザクラ

             

 
  羅臼平から頂上へと登山道が延びて、その先に人影が見える。もう一人先行者がいるようだ。頂上直下に残るやや急な雪渓を慎重に登り、最後の岩場を越すと羅臼岳の頂に立つ。8時20分だ。知床半島の盟主、羅臼岳。

          

 1661mの頂上からは、雲海の彼方にクナシリ、エトロフ島が淡く浮かび上がって見える。そのずっと手前に硫黄岳が際だっているが、羅臼岳から硫黄山までの縦走は魅力的に見える。北海道に残された秘境が幾つかあるとすれば、このルートは、それを体験できる一本だろう。

          
 

 雲海に眠る北の大地は広く、果てしない。今日は、オホーツクの海を見晴るかすことはできないが、漠とした広大な自然のただ中に立っているのだというやや緊張した存在感に浸る。下の雪渓で出会った青年が登ってきて、あれこれ説明をしてくれた。彼は、どうも地元の人らしい。風が強く、寒い。写真を撮り下山する。青年はラーメンを作るといって風陰に姿を消した。腰にナイフを下げていたが、ヒグマ対策なのだろうか。
 羅臼平まで下り、一休み。この頃、ポツポツと登山者に出会う。青空も現れ、天気も良くないそうな気配。先ほど立った羅臼岳が、青空に映えて美しい。
 雪渓には、エゾコザクラを始めとして、チングルマ、エゾツガザクラ、アオノツガザクラ、チシマフウロなどの花々が嬉々として風に揺れている。北の大地に訪れたつかの間の春の喜びと命の燃焼を、花たちは無心に表現しているようだ。どの花も皆美しく、そして輝いて見える。
 雪渓もほぼ終わり、ふと振り返ると、先ほど頂上近くですれ違った男性が素晴らしい早さで下りてくる。感心して見ていると、アッという間もなく近づき追い越された。歩くというより走るといった感じだが、彼は、山岳マラソンの選手かもしれない。
 私もまねをして走る。下りなのでおもしろいのだが、つまずいて転倒する。少し足首を痛めたが、大したこともないようなのでまた追いかける。羽衣峠、仙人坂、極楽平と過ぎるがいっこうに追いつくような気配はない。樹林帯に入ると、ヒグマのことが頭をよぎり休む気にもならない。オホーツク展望台を過ぎ、間もなく終点かと思われる頃、やっと男性の姿が視野に入って来た。かれはもう余裕で歩いていた。
 登山口手前でやっと追いつく。ちょっとビックリした様子の男性と話しながら下る。、九州からやって来たというこの男性は、サロマ湖100キロマラソンに参加し、北海道の山々を走破する計画とのこと。この後、阿寒岳、幌尻岳を目指すという。
 私が、明日斜里岳に登るというと、「斜里岳は昨日登りました。羅臼岳の途中ですから・・・」と話された。11時45分駐車場着。この男性とは、また何処かの山でお会いすることを楽しみにして別れる。 
 

 
 


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