日本200名山と300名山の中に、残雪期ではないと登れない山がある。笈ヶ岳と野伏ヶ岳それに猿ヶ馬場山。どれも北陸の山々だ。早めにかたづけてしまおうと意気込んで出かける。
4月12日、朝6時松江発。中国縦貫道から舞鶴若狭自動車道を経て北陸自動車道小松ICから笈ヶ岳登山口に向かう。登山口は、白山スーパー林道料金所の入り口、中宮温泉近くにある。素晴らしい天気の下、桜を気にしながら進む。当初の計画は、最初に笈ヶ岳を登る事だった。しかし、ゲートが閉まっていて登山口まで行けず今回はあきらめる。登山口となる中宮温泉は、連休頃から営業開始とのこと。それまでは除雪や道路の整備で一般は入れないらしい。(笈ヶ岳については、後に記す) 仕方なく、野伏ヶ岳に向かう。荒島岳登山口前を進み、道の駅九頭竜湖で車泊。地図で見るとこの近くから野伏ヶ岳登山口まで道路がつながっている。この道路は、白山中居神社朝日線とある。
翌13日、早朝スタートしたがこの道も途中で進入禁止。がっくり来たが気を取り直しもう一つの道路に回る。こちらは、東海北陸自動車道に並んで走る国道156号の道の駅「白鳥」付近から入る道で、中居神社に通じている。一山越えて石徹白(いとしろ)の集落に出ると中居神社がありそのすぐ下の橋を渡ると駐車場だ。すでに2台の車が停めてあった。急ぎ支度をしたが8時5分のスタートとなる。
駐車場です。部分的に雪ががあった。左の大杉の下あたりが白山中居神社。
雪の積もった林道を歩くこと2時間30分で牧場跡に出る。
一気に視界は広がり野伏ヶ岳が現れた。天気は良く上々のコンディション。先行者の足跡を辿りながら尾根に向かう。途中、テレマーカーに出会うが、この方は登山では無いらしい。牧場の奥からダイレクト尾根の横っ腹に取り付く。急な登りでへとへとになりながら登りきる。
左奥が野伏ヶ岳
ここから頂上までが正念場だ。しばらく登ると、前方に2名の先行者を見る。様子を伺うに、かなりバテているようだ。よろよろとした足取りで超スローテンポなのがよく分かる。これを見たらなぜか急に元気が出た。サッサと追い越して先に出る。今まで足下を固めてもらっていたから交代することにもなる。
この尾根を一気に滑り下ることになる。
二人組もだいぶん登って来ました。後一息、頑張れ。
緩み始めた雪の尾根道を登り切ると野伏ヶ岳の頂上だ。標識は雪の下で、頂上の目印は何もないが、ここから上は何も無いからやはりここが頂上だろう。バックは白山か?
写真を撮りスキーを着ける。雪質はザラメ。ショートで滑るには最高です。頂上からスタートするとすぐに遅れて登って来た2人組と出会う。一人はガイドさんらしが、年配なのでバテバテの様子でした。後ろの男性はニコニコしてこちらは元気そう。頂上の標識が見えなかったというと、ここらはみんなそうだと言われた。今登ったばかりの尾根筋に沿って滑り下る。まことに快調。途中から、牧場に向かって樹林帯の中を滑る。だいぶ雪も腐っていたが無事平地まで下りる。
あっけないと言えばそれまでだが山スキーとはこんなもの。林道は、杉の枝葉で埋まりあまり滑れないが、それでも板を着けたまま下るといよいよ雪も切れてきた。板をザックに縛り付けて歩き始めるとせせらぎの音が聞こえだして間もなく駐車場に着く。中居神社前で一人の男性に出会う。彼は、300名山も、花の100名山も、富士山をはじめとした高い山100山も、各県の最高峰もすべて登ったそうだ。今は、あまり有名でない山を登り歩いているとのこと。色々な登り方もあるものだと感心する。
今日は、8時5分スタートで、12時40分頂上。下山したのは14時50分でした。この後、白川郷に行き、猿ヶ馬場山の登山口を確認してから道の駅「白川郷」で車中泊。夜半から雨。明日は雨模様らしい。
14日(土)。
朝方雨はやむが、山々は深い霧におおわれ天気は良くない。仕方なく、この日は白川郷の見学とする。10時過ぎ、白川郷温泉に入りさっぱりする。カメラ片手に街をぶらつき、ついでにまた登山口まで行ってみると何と車が一台止まっている。こんな日でも登山者はいるものなんだと感心する。猿ヶ馬場山への登山口は、ちょっと分かりづらい。案内板など何一つ無い。明善寺のすぐ横手の狭い道を入り、右に曲がる。周囲は雪だったが車が入れる範囲でかいてある。夏なら、この道もかなり奥まで車は入りそうだが保証はない。この日は、入れるところまで入ると1台だけはおけるスペースがあり、一番に来たものが止めることが出来る。たいていの人は、町の有料駐車場(500円くらい)に止めるようだが、季節的には無料駐車場もある。城山に登り白川郷の全景を眺める。夜景など素晴らしいだろう。
城山からの白川郷
翌15日(日)、早めに起きて登山口へ急ぐ。車は無かったが、スキー板を担いだ男性がやって来た。ここは初めてだそうだが、ヘルメットに重そうなスキー板だ。体は頑丈そう。その後から、間もなく単独の女性が来る。こちらはスノーシューで身軽そう。自分は、駐車場を確保したのでゆっくりと朝食でも摂ろうと思っていたのだがそうも行かなくなって来て食べながら準備に入る。今度は、やせ形の男性が現れる。山スキーにシールを貼ってあった。富山の人でここは3度目だそうだ。ただし、天候の加減で頂上まで登ったことはないとのこと。場慣れしているのだろう、シールを貼った板でサッサと登っていく。
富山の男性。登るのは早い。
こちらもあわただしくスタートする。間もなくヘルメットの男性に追いつき追い越す。ゆっくりやりましょう。峠のような所で、女性と富山の男性が休憩していたが、私の姿を見るとすぐにスタートした。朝はまだ下が固いので、スノーシューは要らない。女性もそれに気づいたらしい。
左が猿ヶ馬場山。右が帰雲山。帰雲山まで登れば頂上は近い。
結局、6時5分にスタートして10時50分頂上着。富山の男性もだいぶバテていたがタッチの差で追い越せなかった。
頂上標識は顔を出しています。バックは白山。
良い天気に恵まれて360度の大パノラマです。富山の男性にいろいろと山の説明を聞く。御岳、乗鞍、北アルプスの連山がすべて見渡せるのは珍しいとのこと。
北アルプス全山が・・・。カメラに収まりきらない。
アップした写真。右手に大キレットが見える。槍も薬師も剣も見えます。
一休みしてから先にスタートする。今日もショートスキーは快適。ルンルンで滑り下る。ヘルメットの男性と出会う。私のスキーをうらやましそうに見ていた。彼のスキー板は重くて大変だとのこと。いよいよ調子に乗って滑る。
右手上の方が頂上。あまり急な斜面はないが結構おもしろい。このまま駐車場まで滑って帰れると思っていた。
帰雲山を過ぎたあたりで板を担いだ登山者数名に出会う。「良いですね」とうらやましそうに話しかけられる。「この季節はショートスキーのものですよ」などと軽くかわして益々良い気分になっていたら転倒した。やれやれと思いながら起き上がろうとすると、右足の板が見えない。一瞬、流れ止めが切れたのかと思った。板は雪の中にもぐりこんで見えないが、なにやらビンディングのかけらのような物が出てきた。左のスキー板にセットされていた留め具が割れて外れ、ばらばらになったということでした。ここまで来て歩いて下りるのはしゃくなので、雪の中から板を掘り出しザックに結びつけて片足で滑ってみる。トニーザイラーのようには行かないが、歩くよりは少し早そうなので転びながらもとにかく下りる。そのうちに、片足スキーおもしろくなり幾分滑れるようにもなってきた。結局、下の林道まで出てから板を外し、車まで歩く。これからは、片足スキーの練習もしておこうと思った。車に帰ったのが1時50分。結構早く帰れたものだ。
白川郷の湯で、富山の男性と再会する。風呂の中で暫しお話をして別れる。帰りは、御母衣ダム沿いを通る。この途中で荘川桜に出会う。
花はまだでした。
正に桜の怪物。樹齢450年くらいだそうです。
東海北陸自動車道には、荘川ICから入り名神の養老SAで車中泊。買い込んでおいたビールをたらふく飲んで酔っ払って寝る。深夜に目覚めてから又運転をはじめ、中国縦貫の西宮名塩SAで再度寝る。昼前に松江に帰りました。
おまけ
笈ヶ岳 今回は登れませんでしたが・・・。
北陸自動車道小松ICから360号線で白山スーパー林道を目指す。途中おもしろいものに出会う。仏御前の碑。
仏御前は、平家物語に出てくる有名な白拍子。歌も踊りも出来る当時の有名な芸人といったところか。平清盛に呼ばれ芸を見せ大いに気に入られるがやがて忘れられる。物語には、もう一人の白拍子が出てくるが結論としては、世のはかなさを知り仏門に入る。こんな所で生まれ育ったのかとなにやら気になったので寄ってみた。詳しくは、平家物語仏御前の部を読まれたし。
途中下車を終えて、一路スーパー林道へと向かう。道の駅「瀬女」を過ぎると間もなくスーパー林道入り口のゲートにぶつかる。ここから登山口まで約4キロなので車を置いて歩いてみる。
ゲート前から笈ヶ岳方面。
発電所のダムの放流。すさまじい勢いで雪解け水が・・・。
登山口近くで雪を搔いていました。連休までに間に合わせるようです。ここは、中宮温泉の近く。
雪かきの横を抜けてあるいていた作業員の方が車の中で休んでおられた。笈ヶ岳への登山口を訪ねたら、「知らん」と一言。そして、「こんな所に来ては危ないじゃないか」としかられる。相手にならないのでしばらく歩き回り周りの様子を見て引き返す。確かに、危険が一杯だ。雪崩か落石が起きてもおかしくない。
ゲートのすぐ上にブナオ観察舎というものがありました。
笈ヶ岳は、200名山の中で北海道のカムイエクウチカウシとならび山頂までの時間の掛かることで東西の横綱だそうです。しかし、笈ヶ岳は最近では中宮温泉前あたりから日帰り出来るようになっています。但し、12時間から14時間くらい掛かるようですが・・・。残念だが今回はあきらめて道が開通してから再度訪れることにしました。
今回 完