3月15日、鏡ヶ成から大山寺までスキーを担いで縦走を始める。先般、下蒜山からここ鏡ヶ成までをやっているので残りの部分をクリヤーし、一応中国オートルートをつないでみたいと思ったからだ。
8時鏡ヶ成をスタート。昨夜降った雪が駐車場で10センチほどあったろうか。 山に入るにつれ雪も深くなる。新小屋峠への道はまだ閉鎖され雪も多そう。ゲート前に車が止まり、数名が登山の準備をしていた。どうも新小屋峠から烏を目指すようだが、私はカーラ谷左の尾根を目指す。
今回もショートスキー持参だが、新雪のシール歩行には向かないのが欠点。板が短いため先端が雪に埋もれ余分な力が加わるからだ。山の条件にあわせ道具を使い分けるのは難しいことだと痛感する。
しかし、今日はまだツボ足で充分歩ける。杉林を抜けると視界が開けてくるが、適当に歩いていたので少しばかり余分な時間を浪費した。赤い目印テープが見つかりホッとする。後はこの目印を忠実に追うことにする。
振り返るとまだ雪を残している鏡ヶ成スキー場が一望される。その向こうに、先週苦労して歩いた山々が・・・。
雪の烏ヶ山に登るのは十数年ぶりだろうか。以前は、年末の大晦日に登り、日の出を見ることにしていたので、数年間通った。元日の頂上で、いつも同じメンバーの人たちに出会ったが、彼らは今でも山を続けているだろうか。その折、朝日に染まる大山の話を聞いたが、息を飲む美しさとのことだった。いつかそんな大山の写真を撮りたいと思う。私はその後、年末は富士山に通うことにしたので烏ヶ山には長い間ご無沙汰だ。
カーラ谷の雪は深そうだ
尾根筋で唯一のテント場付近より、眼前に最初のピークが姿を現す。
意外なリッジ。以前はこれほどでは無かったようだが。
展望が開けてくると頂上は近い。まず手前のピークに取り付く。ブッシュにスキー板が引っかかり登りづらい。数年前の地震によってできた崩壊地点を乗り越える。手前のピークに立つと、眼前に烏ヶ山の主峰が現れる。幾分荒れた感じのするやせ尾根を渡るように越し、最後の岩場に手をかける。いよいよ頂上だ。
頂上は深い雪
頂上より
一息入れていると、どこからか人の声。見ると新小屋峠から登ってきたらしい人たちの姿がカーラ谷上部の尾根に見える。頂上まではまだだいぶありそうだ。
鏡ヶ成を9時にスタートして、頂上到着は10時40分。だいぶ時間がかかったがこんなものだろう。
写真を撮り終え、直ぐに烏ヶ山のトラバースにかかる。今コースの中でも課題となる一つだが降りてみなければわからない。
夏道は雪で埋まっているのでおおよその見当で灌木を頼りに雪の中を下る。柱状の巨大な岩峰を横に見る辺りからトラバースだ。雪の付き方は十分とはいえないが、アイゼンは効きそうだし、ホールド代わりになるブッシュもある。慎重に渡る。滑ったら終わりだろう。なぜか冬のジャンダルムを思い出す。あそこのトラバースもスリルは満点。
息をこらしてカニのように横へ移動するとロープが現れる。このロープをつかんでホッ一息。難場を終えたと喜ぶのもつかの間、激しくえぐられたようなガレ場が現れる。ほんの1~2mなのだが、これは以前にはなかった。ロープがかなり下の方に渡されているが、そこまで降りることはとうてい不可能。ただ、雪をかむった木の枝がたれさがっているのでこの枝をつかみながら渡ることにする。冷や汗ものだ。
冷や汗もののトラバース。このコース要注意の箇所だ。
一息ついて 遙かに船上山方面への山脈
蒜山方面もはるかに
カーラ谷上部
烏ヶ山を越え、尾根伝いに進む。まもなく、以前から気になっていた広い雪の斜面の上端に出る。ここで初めてスキーを付ける。幾分クラストしているが思い切って滑り込む。斜度も適度にあり、いい斜面なのだがあまり下部まで滑るわけにはいかない。登り返しが大変だからだ。たぶんまっすぐ滑り下れば駒鳥小屋の下辺りに出ることになる。
ここは斜滑降気味に滑り尾根に戻ると、鳥越峠はもう近い。尾根筋を細かいターンを繰り返し鳥越峠に到着だ。
良さそうな斜面だが・・・
唯一滑降できた斜面を遙かに
峠からしばらくツボ足で登り、途中からシール登高に切り替える。突然スキーで滑った跡や、シールの跡などが現れる。どうも振り子沢をやった人たちのもののようだ。キリン峠に立つ。青空をバックに槍ヶ峰が美しい。キリン沢の雪はだいぶ減っているが、槍尾根末端から鍵掛峠方向に流れる沢はまだ滑降可能か?。
キリン峠より
キリン沢の雪は少ない
キリン峠から槍尾根に登り、三の沢の景観に見とれる。まだまだ滑れそうだ。アイゼンの跡も見える。ただ、槍尾根は崩壊が激しく、道ははっきりしない。雪がたっぷり着いている時期はいいのだが、今日は歩くに中途半端だ。案の定、道を間違えたり、妙な溝に入ったりで苦労する。天気がいいからいいものを、ガスっていたらどうだろう。
槍ヶ峰の下の道らしい跡を登り切り、やっと尾根に立つことができた。剣ヶ峰から天狗ヶ峰への雪のスロープが素晴らしい。今日は逆縦走をする気はないから天狗峰を下る。
三の沢
大山縦走路はナイフのよう
振子沢へ上部にスキーヤーの跡。私は、小すべりから剣沢に滑り込むが、雪面が堅くしばらくは斜滑降で安全下降。ユートピア小屋の少し上から、滑った跡が見えるのは、小すべりを敬遠したからだろう。
振子沢
剣沢より
雪の安定した辺りから、最後のすべりを重ね、三鈷峰下の小石の散乱するガレ場を下る。下宝珠の沢との出会いで板をはずす。
剣沢の落石
5時30分、大山寺に到着。とやま旅館泊。
これで一応、下蒜山から大山寺までを縦走したわけだが、スキー縦走にはほど遠い状態だった。雪が無ければしょうがない。日本オートルートにしても、スキーを担いで歩くことがほとんどだからこんなものと思うしかない。
翌日は、親切な宿の奥方に鏡ヶ成まで送ってもらう。よかった、よかった。