良いお天気が続く。気温もぐんぐん上がる。と同時に一枚一枚衣服も薄くなる。
近頃目に入った活字の中で気持ちを揺さぶった個所。
この本の中から、
堀川惠子:「教誨師」は死刑囚と面談を続けた一僧侶の記録。死刑囚の更正を手助けをしても結局は絞首刑になるとの現実に、翻弄され続ける僧侶の苦悩が描かれている。彼はやがてアルコール依存症となり、治療のために病院に通い、そのあとで死刑囚との面談を続けると言う日常を強いられる。当初、仏の道を説く自分がアルコール依存で苦しんでいるなどととても言えなかった。しかしある時、思わず彼は自分のアルコール依存症を死刑囚に漏らす。「自分も実は病んでいる」と。
すると死刑囚の態度が変わる。「よく分かる」と共感し「お坊さん、頑張れ」と励ましてくれる死刑囚が現れた。僧侶は気づく。今までは自分が援助を与え、死刑囚はそれを受けるという一方向の関係で自分が高見に立っていた。そのために本当の死刑囚の苦しみに寄り添えなかった。しかし自らの弱さに気付いた今、初めて隔ての壁が消えた、と。