玉依姫 様 (三四三)
『萬葉集』より。やはり。詠みびと知らずの、
つぎねふ やましろじを ひとづまのうまよりゆくに
おのづまし かちよりゆけば
みるごとに ねのみしなかゆ そこおもふに こころしいたし
たらちねの ははがかたみと
わがもてる まそみかがみに あきづひれ
おいなめも持ちて うまかへ わがせ
うまかはば いもかちならむ よしゑやし
いわはふむとも われはふたりゆかむ
山背道を、ほかの方たちは馬で行かれるのに、あなたは徒歩で行かれます。その姿を見るにつけ心が傷みます。私が母の形見として所持している、鏡と領巾をどなたかに買っていただいて、その代価で馬を買いましょうよ。
うれしいことを言ってくれるね。だがせっかく馬を買ったとしても乗れるのは大人一人だ、おまえは歩かなければならない。心遣いは嬉しいが、私はいままでどおり、徒歩でいいよ。
『萬葉集』より。やはり。詠みびと知らずの、
つぎねふ やましろじを ひとづまのうまよりゆくに
おのづまし かちよりゆけば
みるごとに ねのみしなかゆ そこおもふに こころしいたし
たらちねの ははがかたみと
わがもてる まそみかがみに あきづひれ
おいなめも持ちて うまかへ わがせ
うまかはば いもかちならむ よしゑやし
いわはふむとも われはふたりゆかむ
山背道を、ほかの方たちは馬で行かれるのに、あなたは徒歩で行かれます。その姿を見るにつけ心が傷みます。私が母の形見として所持している、鏡と領巾をどなたかに買っていただいて、その代価で馬を買いましょうよ。
うれしいことを言ってくれるね。だがせっかく馬を買ったとしても乗れるのは大人一人だ、おまえは歩かなければならない。心遣いは嬉しいが、私はいままでどおり、徒歩でいいよ。