カクレマショウ

やっぴBLOG

「不都合な真実」─市民の視点で訴えたい真実

2007-04-28 | ■映画
来年のサミット(主要国首脳会議)は、北海道の洞爺湖で開催されることになりましたが、このサミットな議題の一つが地球温暖化問題になるらしい。日本としては、京都議定書(1997年の地球温暖化防止京都会議で議決した議定書)が定める2012年以降の新たな枠組みづくりの主導権を握りたいという思惑もあるようです。

つい先日、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が報告書を発表しました(2007年4月7日付け各紙)。それは、まさにこの映画でアル・ゴアが主張している内容を裏付けるような内容でした。“「不都合な真実」の不都合な真実”という表現で、この映画の内容に異を唱える向きもあるようですが、「事実」は事実としてしっかり受け止める必要はあると思いますね。

決して楽しめる映画ではありません。骨格は、ゴア自身の「地球温暖化をひたすら訴えるスライド講座」ですから。けれど、計算され尽くしたかのような巧みなプレゼンテーションについつい引き込まれてしまいます。ドキュメンタリーだし、そうそうその手には乗らないぞ、と構えて見ていたのですが、あの説得力には勝てません。

地球の「悲鳴」を、彼は世界中の写真を通して聞かせてくれます。消える「キリマンジャロの雪」、氷河の崩壊、溶けていくツンドラ(永久凍土)、海水温の上昇で巨大化するハリケーン…。そして、こうした地球温暖化現象の原因となっているCO2(二酸化炭素)濃度の異常な高さを、65万年というスパンのグラフで見せつける。クレーンまで使って、その高さを彼自身が示す。

こんなに説得力があるのに、どうして大統領になれなかったのだろう、とつくづく思う。見た目だってブッシュよりはずいぶんいいのに。「かつての次期大統領のゴアです」なんて、日本の政治家にはとても言えないギャグですよね。2000年の大統領選で彼がもし勝っていたら…と、ブッシュ政権がやってきたことと重ね合わせてついつい考えさせられます。

彼は温暖化のストーリーの途中に、彼自身の生い立ちや家族のエピソードをはさむ。それもきっと「米国流」なのでしょう。自分の息子が交通事故で重傷を負い、その時から自分のとるべき道が見えてきたというエピソード。自身が豊かな自然の中で育ってきたこと、幼い頃、父の農場で遊びながら仕事を手伝っていたこと、姉がタバコを吸い続けて肺ガンで亡くなったこと、そのために父がタバコ栽培をきっぱりやめたこと。確かに、それらの「感動的な」エピソードが挿入されているおかげで、語り手であるゴアという人物がくっきり浮かび上がってくるという効果はあるでしょう。しかし、何となく違和感を感じたのも事実です。これが選挙用のPR映画ならまちがいなく彼は当選することでしょう…。

彼は来年の大統領選には出馬しないことを既に表明しています。在野からこの問題を世界中の人々に訴えていく構えらしい。でもやっぱり「腐っても鯛」。彼は根っからの政治家なんだなと思う。そもそも、多くの市民に直接語りかける手法はいかにも政治家的です。「不都合な真実」という映画のタイトルだって、「政治家にとっての」「不都合な真実」を訴える、という意味合いですから。

むしろ、身近な「エコおじさん」みたいになりきった方が、映画を見終わって、「私ができる10の事」を実践する人が増えるのかもしれない、と思いました。この問題は、政治が動くことと、一人一人の実践がかみ合ってこそ解決に向かうものですが、ゴアがより訴えたいのは、たぶん後者の方だと思うからです。市民に訴えるのなら、政治家としてではなく、同じ市民として語りかけた方が効果はあるでしょう。

ところで、先日テレビを見ていたら、「マイ箸」を実践している女性が、「今、エコブームなので…」とのたまったのにはたまげました。「ブーム」だから「マイ箸」かい。それじゃファッションでしょ? だけどやらないよりはましなのか。ブームでもファッションでも一時的なものでも、「実践している」こと自体に意義を見いだすべきなのでしょうか?

エンディングに示される、「私ができる10の事」は、どれもそうたいしたことではありません。こんなことなら、もうかなりの人が心がけているのでは?という程度のものです。一番大切なのは、それをやり続けること、なのかもしれません。


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