カクレマショウ

やっぴBLOG

投票所は減らしちゃいけないと思う。

2010-12-11 | ■社会/政治
全国多くの自治体で、「カネがないカネがない」という声が聞かれます。過去のいろいろなツケが積もり積もって今の財政難を招いているわけですが、赤字を少しでも減らすべく、「経費削減」が合い言葉のように唱えられています。そして、その負担は住民にまで及んでいます。

ここまで来たか!と思ったのは、経費削減の手段の一つとして、投票所を減らす自治体が増えてきているという事実(2010年12月6日付け朝日新聞)。来春の統一地方選の投票所が、4年前と比べ全国で計1,800ヶ所も減るのだとか。

記事では、全国で最も減少率の高い鳥取県のある町を例に挙げています。この町では、小泉政権時代の「三位一体改革」による地方交付税激減のあおりを受け、行財政改革に取り組んでいますが、その一環として、投票所の経費削減が盛り込まれた。21ヶ所あった投票所が、今年夏の参院選から7ヶ所減って14ヶ所に。有権者3,028人のうち、634人がこれまでの投票所を使えなくなってしまったという。

82歳のあるおばあさんは、これまでずっと、自宅から100mのところにあった投票所で欠かさず投票してきたが、新しい投票所は2km先になってしまい、初めて棄権したそうです。車で送ってくれるという人もいたらしいが、「誰に送られたかで投票先がわかる」と断った、のだとか。う~ん、「しがらみ」ですな…。「人生で初めて棄権した。取り残された気分だあ」という言葉が切ない。

町では、今年の2月に町民を対象としたアンケートを行っていて、「経費削減のために投票所を減らしてもよいか」に「賛成」した町民が約6割だったことから踏み切った、とのことですが、おそらく、投票所がなくなる恐れのある過疎集落の住民のほとんどは「反対」したのではないでしょうか。この投票所削減で捻出できるのは140万円。チリも積もれば山となる、とはいえ、「そのくらいのカネと一票、どっちが大事なんだ」と怒る、過疎集落の区長の心情も理解できますね。

町では、投票日に無料のバスを走らせたらしいですが、利用したのはたった1人だったとか。投票率も当然下がるはずです。全国的に見ても、各自治体では、バスや車での移動支援や期日前投票の拡充(期日前投票には立会人は地区の有権者でなければならないという規定がないため、従来の投票所を使って行ってもそれほど人件費がかからない)など、投票所廃止に伴うフォローに努めているようですが、それは根本的な話ではない。

間接民主政においては、国民の選挙権は何よりも重要な政治参加の権利です。19世紀、何度も選挙法改正を実施して国民が選挙権を勝ち取ってきた歴史を持つ英国で、もし投票所の削減などが行われたら、国民は黙ってはいないのではないでしょうか。要は、住民が政治に参加する権利をどれほど行政が重視しているかということです。

では、鳥取県と同じように過疎集落を多く抱え、財政難にあえぐ自治体も多い青森県ではどうなのか。

朝日の記事の最後に、青森県の事例が紹介されていました。しかも、珍しく?良い事例として。「青森県内の自治体は投票所の維持が最優先だとして、ほとんど減らさずに維持している」のです。

たとえば、青森市。この10月に行われた市議選で、投票に関わる作業を地域住民に委託したり、立会人の報酬を4割減らして経費を約900万円削減させたという。110ヶ所の投票所を1ヶ所も減らすことなく、です。やればできるんじゃないか。投票所を減らす、というのは、住民の政治参加の機会を奪うことになる。鳥取のおばあさんのように、投票したくても投票できない人を生んでしまう。移動支援などのフォローがたとえあったとしても、そういうことは自治体として「してはいけないこと」だということをちゃんとわかっている。しかも、別の手段で、ちゃんと工夫して経費削減も達成している。

「大切なのは投票しやすい環境を維持すること。慣れ親しんできた近くの投票所は見直さない。財政より一票が大切だ」。青森市選管職員の言葉だそうですが、よくぞ言ってくれました! 青森市だって財政見直しが迫られているのに、最低限守るべきところは守る、という気概に拍手を送りたいと思います。

 

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