カクレマショウ

やっぴBLOG

「サンシャイン2057」─太陽の力を侮ると。

2008-04-23 | ■映画
SUNSHINE
2007年/米国/108分
監督 ダニー・ボイル
脚本 アレックス・ガーランド
出演 キリアン・マーフィ/キャパ 真田広之/カネダ  ミシェル・ヨー/コラゾン クリス・エヴァンス/メイス  ローズ・バーン/キャシー トロイ・ギャリティ/ハーヴィー ベネディクト・ウォン/トレイ クリフ・カーティス/サール

先日のNHKスペシャル「病の起源」を見てたら、アフリカから世界各地に散らばった人類の祖先たちは、太陽光の強さによって肌の色を適応させていったらしい。驚いたのは、たとえばもともと褐色の肌をした人々(アボリジニ)が住んでいたオーストラリアに19世紀から白人が住むようになったのですが、最近、その白人の間で皮膚ガンが非常に増えているのだという。白人の肌は、紫外線をできるだけ多く受けられるようにメラニン色素が薄い。オーストラリアの紫外線は、彼ら白人の肌にとっては強すぎるということですね。

また、逆のパターンもあって、インドから英国に移住した人は、紫外線が弱すぎてこれまた病気の元になるという。紫外線はビタミンDを血液中につくる。ビタミンDは体内に取り込まれたカルシウムと結びついて骨を強くする役目を果たしているのですが、それが不足すると骨がもろくなるのだとか。

いずれにしても、太陽光線が人間の体に大きな影響を与えていることは確かだということですね。太陽の恵みで人間は生きている。しかし、その太陽の光が弱くなったら…。

かつて南米・アステカの人々は、太陽を神とあがめ、太陽を元気づけるためにいけにえを捧げていました。生きた人間の心臓を捧げるのです。これで太陽が生き返ると信じていました。それから時が移って、西暦2057年。人類は弱った太陽に光を取り戻すために、巨大な核爆弾を用いようとしています。「マンハッタン島ほどもある」核爆弾を太陽の近くまで運んでいって、それを太陽の表面に打ち込もうという算段です。世界各国から集められた8人のクルーがその重責を担うことになりました。キャプテンは、日本人のカネダ(真田広之)。

彼らの宇宙船の名前は「イカロス2号」。てことは、そう、「1号」もあったのです。数年前に同じように核爆弾を搭載して太陽に向かい、そして消息を絶った「1号」。人類は、世界中の核燃料をかき集めて再度核爆弾をつくりました。これが最後のチャンスでした。失敗したら、あとは人類には滅亡しか道は残されていない。

でも、そもそも核爆弾を打ち込んで太陽が蘇生するのかどうか、もちろん理論的にはOKなのでしょうが、本当にうまくいくのかどうかはやってみなければわからないというレベルですから。太陽に十分近づいて、宇宙船から核爆弾を発射して、すぐに退避して、地球に戻ってくる。いくつもの困難なカベをクリアする必要がありそうですし。

それにもかかわらず、クルー8人は、メインコンピュータの「イカロス」(なぜか女性の声だ)とともに、その難関に果敢に挑んでいく。不測の事故によって一人二人と宇宙の藻くずとなっていっても、残されたクルーの使命感は揺るぎはしない。しかし、彼らの本当の「敵」は、意外なところに潜んでいたのです…。

船内に残っているクルーは4人のはずなのに、キャパ(ところで「ロバート・キャパ」という役名にはどんな意味が込められているのだろう?)が、「イカロス」から「5人います」と告げられたときの衝撃。こりゃ見ている方もびっくりですわ~。その後の展開について、それはないだろう、と思う人もいるかもしれませんが、私には納得できる感じがしました。「太陽」は、決して人間なんかが近づいてはいけない場所なのです。そこはまさに神の領域。ギリシア神話の「イカロスの翼」でも、火を得るために太陽に近づこうとしたイカロスは、無惨にも太陽に焼かれて落ちる。あの寓話はとても象徴的だと思うのですが、「太陽」を操作しようなんて、あまりにもおこがましい。太陽には、ちっぽけな人間なんかにはとても太刀打ちできない、とてつもなく大きな力が宿っているのです。

だから、「失敗」で終わっても何の不思議もなかったのに、映画では、生き残った「イカロス」のクルーに、なんと当初の目的を達成させてしまう。地球では太陽の光が再び輝きを取り戻す。オーマイガッ!神よ、これでいいのか。

「28日後... 」(2002年)、「ザ・ビーチ」(1999年)、「トレインスポッティング」 (1996年)、「シャロウ・グレイブ」 (1995年)といった傑作を生み出してきたダニー・ボイル監督作品だけに、ラストがちょっと残念な気がしました。

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