『コクヨの1分間プレゼンテーション』。「疑問」(15秒)、「結論」(10秒)ときて、最後は「理由」(35秒)。
いかに有効な「疑問」を投げかけ、じょうずに「結論」をアピールしたとしても、では、なぜその「結論」が有効なのか、「納得できるタネあかし」ができなければ水の泡です。
ふだんの仕事でも、お、それいいアイデア!と思っても、なんでそう思うの?って聞かれて「え、(~_~;)なんとなく…」じゃ説得力ないですもんね。時には無理やり「理屈」をこねることも必要だけど、やっぱり誰もが納得できるような「理由」が欲しい。
さて、ではどう「理由」を述べるか。
まず、「多面的なアプローチ」が必要だと言う。つまり、「1つの理由」だけでなく、いろんな角度から攻める。たとえば、ある商品をアピールする理由。
1 デザイン的に優れていること
2 デザイナーの実力があって、これまでの実績も十分であること
3 予算的にも採算が取れること
これだけで3つのアプローチになります。もちろん説得力に深みが増すというメリットもあるけれど、いろんな考えを持つ聴き手にとって、3つあったらそのうち1つくらい心に響く理由があるかもしれない…という効果がむしろ大きいかもしれない。数撃ちゃ当たる、ではないけれど、せいぜい3つくらいが妥当なところでしょう。
次に大切なのは、聴き手が「具体的な行動に移る流れを活用する」ということ。「流れ」というのは、「頭で理解し」→「心が動き」→「背中を押される」というもの。確かに、人が「動く」ためには、「頭で理解」しただけではダメで、「心が動かされる」ことが最も大事だと思います。頭で理解できていなくても、「心が動いた」ことで行動に移してしまうことさえありますからね。
成人教育でいう「大人の学び」も同じで、大人は、何か学習をして、「意識」が変容したとしても、「行動」の変容にはなかなか進めないと言われます。頭では分かっているのに、行動は何も変わらない。たとえば、男女共同参画社会の学習で、「そうだよな、男女は平等であるべきだよなー」と「頭で理解」して、意識も変わったとしても、その後の行動はなかなか変えられないものです。かくも「大人の学習」は難しい。
ここで、とても重要なことが書いてありました。
プレゼンターは、自分の話を伝えることで、聴き手が「決める」お手伝いをするという感覚になってのぞもう。
いくら聴き手に行動に移してもらいたいからといって、自分よがりの理由の押し付けじゃ「心を動かす」ことはできない。あくまでも、相手の気持ちや感覚の流れに寄り添ったプレゼンを忘れてはいけないということですね。これは、ファシリテーターにも大切なことで、学習者の「意識の流れ」を常に気にかけた展開をするよう心しなければならない。ワークショップで最も肝心なところです。
あと、「理由」付けのテクニック的なところで、その1「比較するものがあると、伝わりやすく、選びやすい」。比較には次の2種類あります。
1 AではなくBです パターン
例:
・年配の人には「多機能携帯」より「シンプル携帯」のほうが人気があります。
・「運動してやせる」より、「カロリーをコントロールしてやせる」方法が、実は良いのです。
2 Cという領域の中ではDです パターン
例:
・飼育が面倒なイメージのある「淡水魚」の中でも、とても飼いやすく、そのかわいらしさが魅力的な魚が「カクレクマノミ」です。
テクニックその2「ビフォーをしっかり伝えることで、結論の説得力が増す」
ビフォー、すなわち「これまでは」ということ。これも「比較」の1つかもしれません。「以前」との比較。こうすれば「確かに変わるんだ!」ということをしっかり言ってあげて納得してもらう手です。
例:
・今までの掃除機は、目に見えないちりがクリーナーを素通りして、排気とともに部屋中に巻き上げられていたんです。それがこの掃除機だと、ダニや花粉、細菌など細かいちりまで逃さずキャッチします。
・これまで、ほとんどの営業マネージャーは、経験や勘に頼った部下育成をしていました。このメソッドは、コーチングスキルとロジカルシンキングを取り入れた、3ヶ月で部下を独り立ちさせるまったく新しい部下育成法です。
なるほどねー。
しかし、考えてみれば、こういうことを意識してか無意識なのか、ちゃんと使いこなして話ができる人っていますよね。なんか、妙に心を動かされるプレゼン。ちゃんと分析してみることが大事なのですね。そういうことも気づかされた『コクヨの1分間プレゼンテーション』という本でした。
あ、理由編、も少し続きます。まだあるんです、人の心を動かす魔法が。
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