「三四郎」を読み終わったら、とりあえず「それから」だよね。
今、読み終わって、かなりの不完全燃焼に陥り、「門」を早く読みたくてたまらない。
「三四郎」と「それから」と「門」は漱石の前期三部作と呼ばれるが、3作とも恥ずかしながら読むのは初めてだ。登場人物の名前もシチュエーションも異なっているが、確かに漱石は「それから」を「三四郎」の続編として位置づけているとのこと。
でも両作品は、読んでいて空気が違う。「それから」の方が、何となくよどんでいる。だって定職についておらず、親の金で生活している男が主人公なんだもの。おまけに私が読んだ青空文庫が、旧仮名遣いの本を底本にしているので、何だか読みづらくて、意外に時間がかかってしまった。まあ、若い頃だったら放りだしていただろうけど、全部読めたのはさすがに年の功かねぇ。ヴァイオリンがワ゛イオリンとか書いてあるのはちょっと新鮮。
その親の金で暮らしている知識人(高等遊民)たる主人公の代助に、見合いを強硬に勧める父・兄・嫂・・・。結婚より仕事だろうと思うのだが、当時の考え方から来るものか、はたまた実家の裕福さからくるものか。結婚していることを持って世間体を保つ一方、離婚がめちゃくちゃ難しかった時代に、代助は親友の奥さんに思いを募らせる。
三四郎を不思議な言葉で翻弄した美禰子と違って、三千代は古風で身体の弱い普通の女性である。でも一箇所だけ「不思議ちゃん」的な要素が出てくる。それは花瓶の水を飲み干してしまうシーン。いくら水が綺麗だったからって、ふつうやらないでしょ。代助はびっくりするが、引いてしまうことなく、このシーンを切っ掛けにどんどん二人の距離は縮まっていったのだ。
代助は小説好きだから、西洋の愛の言葉を沢山知っているが、西洋風の告白は好まなかったらしい。人妻三千代に対して出た言葉はストレートでシンプルだった。「僕の存在にはあなたが必要だ。どうしても必要だ。」・・だがその言葉と引き換えに、代助は今まで労せずして得ていたものを、まるで坂道を転げ落ちるように、どんどん失っていくのであった。
実にタイムリーに、先週末の土曜日の日経夕刊文化欄に「それから」の舞台になった文京区の伝通院付近の坂道(金剛寺坂)が載っていた。三千代の家はその伝通院の近くにあったという設定だ。私も文京区に住んでいた頃は、よくバスで上野の博物館に出かけていたが、途中、伝通院の前をバスでよく通った。残念ながら付近を歩いたことはないのだが、伝通院という名の響きを聞くと、ほろ苦い思い出が胸を突くのよね。小説を読んでいると色んなことを思い出してしまって、それが小説の描く主人公の苦悩と増幅し合って、不思議な気持ちになることよ。
今、読み終わって、かなりの不完全燃焼に陥り、「門」を早く読みたくてたまらない。
「三四郎」と「それから」と「門」は漱石の前期三部作と呼ばれるが、3作とも恥ずかしながら読むのは初めてだ。登場人物の名前もシチュエーションも異なっているが、確かに漱石は「それから」を「三四郎」の続編として位置づけているとのこと。
でも両作品は、読んでいて空気が違う。「それから」の方が、何となくよどんでいる。だって定職についておらず、親の金で生活している男が主人公なんだもの。おまけに私が読んだ青空文庫が、旧仮名遣いの本を底本にしているので、何だか読みづらくて、意外に時間がかかってしまった。まあ、若い頃だったら放りだしていただろうけど、全部読めたのはさすがに年の功かねぇ。ヴァイオリンがワ゛イオリンとか書いてあるのはちょっと新鮮。
その親の金で暮らしている知識人(高等遊民)たる主人公の代助に、見合いを強硬に勧める父・兄・嫂・・・。結婚より仕事だろうと思うのだが、当時の考え方から来るものか、はたまた実家の裕福さからくるものか。結婚していることを持って世間体を保つ一方、離婚がめちゃくちゃ難しかった時代に、代助は親友の奥さんに思いを募らせる。
三四郎を不思議な言葉で翻弄した美禰子と違って、三千代は古風で身体の弱い普通の女性である。でも一箇所だけ「不思議ちゃん」的な要素が出てくる。それは花瓶の水を飲み干してしまうシーン。いくら水が綺麗だったからって、ふつうやらないでしょ。代助はびっくりするが、引いてしまうことなく、このシーンを切っ掛けにどんどん二人の距離は縮まっていったのだ。
代助は小説好きだから、西洋の愛の言葉を沢山知っているが、西洋風の告白は好まなかったらしい。人妻三千代に対して出た言葉はストレートでシンプルだった。「僕の存在にはあなたが必要だ。どうしても必要だ。」・・だがその言葉と引き換えに、代助は今まで労せずして得ていたものを、まるで坂道を転げ落ちるように、どんどん失っていくのであった。
実にタイムリーに、先週末の土曜日の日経夕刊文化欄に「それから」の舞台になった文京区の伝通院付近の坂道(金剛寺坂)が載っていた。三千代の家はその伝通院の近くにあったという設定だ。私も文京区に住んでいた頃は、よくバスで上野の博物館に出かけていたが、途中、伝通院の前をバスでよく通った。残念ながら付近を歩いたことはないのだが、伝通院という名の響きを聞くと、ほろ苦い思い出が胸を突くのよね。小説を読んでいると色んなことを思い出してしまって、それが小説の描く主人公の苦悩と増幅し合って、不思議な気持ちになることよ。
なにかしら、漱石の描く主人公像に、一貫したものが感じられる筈。特に最後の「明暗」の主人公がまた、「それから」に通ずるものがあるような気がするんですよ。
異色作「坑夫」もなかなか面白いですが、これは紙の本でないと読めないかな?
今、門を読んでいますが、その後、何読もうかなと迷っていたところです。ご指南ありがとうございます。