風塵社的業務日誌

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議員会館へ

2019年05月15日 | 出版
某日、あるNPO法人の主催する院内集会というものがあり、出かけることにした。院内集会とは議員会館内で催される集会のことである。したがってその場所は、衆議院なり参議院の議員会館(衆院には第1、第2とあり、参院はひとつだけ)となる。小生には初めての経験だ。勝手がよくわからないので某氏に電話でたずねてみると、「正面玄関から入れば、担当の人が入館証のカードを渡してくれるから、それでゲートを通過すればいいよ」とのこと。フーン、とにかく行ってみよう。
国会議事堂前で降り、第2衆院議員会館に向かっていくと、小生と同じ目的地に行こうとしている二人組みのおじいさん(オジサン?)が前を歩いている。この人たちについて行けばいいやと気楽な気分で後ろに従っていくと、彼らは案の定、第2会館の正面からなかに入っていく。そして右側では、NPOの担当の方が入館証代わりの首から下げるICカードを渡している。彼らもそれを受け取って進んでいく。小生もそれを受け取ってなかに入る。少し進むとゲートがあり、そこにICカードをタッチすれば入れるという仕組みだ。小生も彼らにならってタッチして館内に入る。
そこで思い出した。その当時は、まだ中年のオバハンだったある女性がいた。いろいろと事情があり、その方は長らく日本を離れていたが、数十年ぶりに日本にもどってきた。それで一緒に酒を飲んでいるときに、「日本の地下鉄には慣れましたか?」と小生がたずねた。すると、
「東京の大学に通っていたからだいたいの地理はわかるんだけど、地下鉄の改札を通るとき、本当に苦労したわよ」
「ヘー、どんな?」
「路線図を見て、券売機で乗車券を買うことまではできたわけ。ところが、自動改札でしょ」
「そうですねえ。駅員さんがカチカチ切符を切っているような時代は終わっていますからね」
「それで、買った乗車券をどうすればいいのかが、よくわからないでしょ」
「ああ、そうか」
「ほかの人がどうやってなかに入っていくのかをジーッと観察していたら、みんな、ペタッ、ペタッとタッチしていくじゃない」
「ああ、そうですね。エッ、もしかして!」
「それで、私も買った乗車券をそこにあててみたの」
「ワーッ」
「そうしたら、バタンとゲートが閉まっちゃって、赤ランプみたいなのがピカピカ点滅しちゃったのよ」
「そりゃそうだ」
「ウワー、どうしよと思って後ろを振り返ったら、私の後ろに何人も怖い顔して並んでいるし」
「ギャヒャヒャヒャ!」
「それでようやく、乗車券を通すところと、ICカードをあてるところはちがうんだと理解しましたよ」
それを聞いて、小生の爆笑がさらに高まったのはいうまでもない。
話をもどし、無事に議員会館のゲートを抜けて集会の会場に向かおうとしたが、その前に小用をすませておこうと考える。そして、トイレに向かってしなびた息子を取り出してジョボジョボしていると、隣りに30代くらいの男性が入ってきた。なんだろう、ブンヤさんか秘書さんかなあと思いつつ、チラッとそちらに視線を投げると、その男性の襟元にはビロード生地の議員バッチが光っているではないか。「な~んだ、こんなのが国会議員なのか」というのが率直な印象だ。
まず、小生が現在の国会議員全員の名前と顔を知っているわけがない。北方領土解決のためロシアと戦争しようなんて言っていたやつがいたけど、そういう問題発言でもしなければ、そいつのことを一生知らなかったかもしれない。トイレで同席したその男性は、スーツ姿ではあったけれどノーネクタイでわりとラフな格好をしていた。もちろん、ラフな姿が軽いと述べているわけではない。こちとら、ヨレヨレのシャツに無精ひげという貧乏臭いありさまなのだから、外見で判断すべきことではないかもしれない(ただし、小生は貧乏)。しかし、青地にストライプの入ったキザッたらしいスーツに、いかにも日サロで焼きましたという肌を眺めると、そいつからは安っぽさしか感じられないのだ。要するに、新宿あたりで売れないホストと連れションをしているような気分である。
それはともかく、そこで開かれたある集会に参加させていただく。こちとら一生懸命にメモを取る。ところが、日ごろ文字を書いていないものだから、漢字が出てこない。しょうがないから、そこはカタカナでごまかす。しかも老眼も進行中なので、おのれの書いた字が読めなくなっている。小生の場合そもそもが悪筆なので読みにくいのだけれども、それに輪をかけておのれの書いた字というのに読めない。その解読はあとにしようと、必死にメモを記していく。
その集会の途中、途中に、その場に来た議員さんのあいさつが挟み込まれる。与党であろうが野党であろうが、彼らの話し方や挙措というものがみな一様なのだ。おそらくは、ベテランの秘書に叩き込まれたあいさつの仕方なのだろう。してみれば、先ほど小生と連れションをしたやつも、それと同じ人種にちがいない。そいつの顔はすでに忘れてしまっているけれど、しかし、そういう試練を経て少しはまともな政治家として世のなかの役に立ってもらいたいものだと願うところである。

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