風塵社的業務日誌

日本で下から258番目に大きな出版社の日常業務案内(風塵社非公認ブログ)

渋谷へ(1)

2017年11月24日 | 出版
ある日、弊社内で某会議のあと酒を飲んでいると、Oさんから「今度、こういう講演をするんだけれど、腹巻くんも本を売りに来る?」とビラを渡された。オオッ!年齢層の高そうな集まりだ。「行きます」と二つ返事。翌日、その主催に関わっているSH社M社長に電話をして、「本を売りに行ってもいいですか?」とたずねたら、しゃがれ声で「いらっしゃい」と軽い返答であった。
そして新嘗祭の日、Dパックに弊社刊行物を20冊ほど詰め込んで渋谷の勤労者福祉会館へ。小生は初めて入ったけれど、いかにも昭和な雰囲気の建物で、入り口脇に喫煙コーナーが設置されているところがうれしい。一服してから会場に向かえば、さほど広くはないところである。一番奥の一角に店を広げさせてもらうことにした。ついでに、Oさんはじめ販売用の書籍を持ってこられた方の分も面倒を見ることになる。そこにE氏も来たので、E氏にも販売を手伝ってもらうこととなる。
そうこうするうちに会がスタート。「本当は若い人にたくさん来てもらいたかった」なる旨を主催者が述べているけれど、このテーマじゃなあというのが正直なところだ。その某テーマからしてみれば、本来なら1万人くらいが結集しても驚くに値しないはずなのであるけれど、現在はそこに深い断絶が生じている。その場に集まっている方々はそれなりの熱意を持っているのだろうと想像するが、ここからはなにも生まれないのだろうなあと実感せざるをえない(実はそうではない、ということはあとで述べるかも)。
そこでOさんの講演に移る。Oさんは少しヴィブラートのかかった話し方をする人である。聞いているとそのヴィブラートが心地よく、ついつい眠気を誘ってしまう。そのため、途中コックリコックリしながらも、真面目に聞くことになる。最後の方で、先ほど述べた断絶について少し触れたけれど、それほど立ち入った内容ではなかった。それにしても、90分もよくしゃべれるなあと、毎度のことながら感心してしまう。ほぼ時間通りにOさんの話は終了。
その後、予定していた講演者がドタキャンとなってしまい、代役の人がある話をされたが、こちらはさほどの内容がない。それを本人も自覚されているのか、なるべく面白おかしく話そうとするからかえってつまらなく聞こえてしまう。しかしそれは、その方の問題ではないだろう。
予定のプログラムが終わったところで、こちらは販売タイムである。講演内容がよかったせいなのか、Oさんの著作はよく売れる。弊社の本は5冊くらい売れたのかな。帰り際にSH社M社長が寄ってきて、「おー腹巻、売れたか?」「いやあ、たいしたことないすよ」「最近は集会で本が売れなくなったよなあ」とのこと。そのわりにOさんは、集会にはいつもこまめに本を担いでくる。涙ぐましい努力をされているのだなと思った。
そのあと、売れ残りを会社に置いて帰ろうかとしていたら、E氏に「打ち上げに行こう」と声がかかる。そこでよせばいいのに、「腹巻くんも行くなら私も行く」などと、余計なことを言いやがる。こちらの本音では早く家に帰りたかったのであるけれど、M社長に付き合わないわけにもいかないししょうがないかと、小生も打ち上げに参加することにした。そこでノロノロとしか歩けないM社長に随伴しつつ最近の話となる。
「最近、風塵社はどうなんだ?」
「いいわけないでしょう」
「さっきの本、売れてるのか?」
「このご時世、なかなか難しいですよ」
「そりゃそうだよな」
「○○なんか、○冊しか配本しないんですよ」
「この前なあ、うちで7000円の本を出したんだよ。もちろんそんなに刷れないから、部数は少ないんだけれど、それで××に50部だけ委託したいって言ったら、そんな小部数じゃ委託配本できないから、3ヶ月長期にしてくれって言うんだ」
「エッ?じゃあ、かえってラッキーじゃないんですか?」
「そうなんだよ」
この会話内容は一般の人にはまったく理解できないだろうから説明が必要だとは思うのだけれども、それが面倒なのと他社の話なので、あえて説明は省くことにする。
「Mさん、足のほうはいかがですか?」
「いやあ、全然ダメでさあ、もう自転車に乗れなくなった」
「エー」
「歩いても、本郷郵便局までだなあ。重い荷物を抱えていると、タクシーじゃなきゃ行けないぞ。もうM銀行までだなあ」
「ありゃあ」
「それにしても、渋谷って本当に感じ悪いよなあ。新宿も同じくらいの賑わいだけれど、どうしてこっちの方がいやなのかなあ」
「いやあ、どうしてですかね。渋谷の方が若い人が多いからですかねえ」
なんて話しながらボツボツ歩いていくうちに、われわれ二人組みは本隊の姿を見失ってしまった。あれ、困ったなあと思ったら、われわれを心配したE氏が、パルコの前で待っている。「みなさん早く酒を飲みたくてトットコ行っちゃうから、おじいさんを置いてきぼりですよ」と小生が冗談を述べれば、「だから私が待ってあげていたじゃない」と自慢げに語られる。

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