酒に酔ってフラフラ帰宅の途につく。池袋で地下鉄を降り立教通りを歩いていると、向かいから自転車で進んできたオッサンと突然口論になった。なんのことはない。オッサンの進路に小生がふらついてしまったというのが原因のようだ。年格好は小生より少し上くらいの年齢だろうか。つまり、60にはなっていないくらいの感じだ。それにしても、そんなつまらんことで、本気で腹を立てているとは、なんちゅうバカなんだろうと呆れてしまう。「危ないから気をつけろよ」のひと言ですむ話だろう。
しかし、売られたケンカは買わねばならない。「おまえがおれの進路を妨害しただろ」という主旨のことをきつい口調で小生にのたまうので、「そんなちっちゃなことで、ギャーギャー騒ぐな、バカたれ!」と穏やかに述べておく。するとそのオッサン「だったら、警官呼んでやる」げな。こいつはアホか、と心の底から思う。こんなくだらない件でいちいち呼びつけられたら、おまわりもたまったものじゃないだろう。
そいつはスマホを取り出し、手馴れた感じで警察に電話を入れている。その様子を見ていて思った。もしかして、こいつは常習犯なのだろうか。些細なことでも、毎度毎度警察に電話を入れているように見える。人格なのか、精神病理的なものなのかは知らないが、明らかになんらかの障害を抱えている。面倒なやつに遭遇しちゃったなあ、という気分だ。それにしても、自分―他者との関係性において、その他者との調停を一足飛びに公権力にすがろうとしている。どういう世界観なのか、まったく理解できない。公権力に保護されているという過剰な意識の持ち主なのだろうか。その対極に生きている小生にしてみれば、なんとも情けないやっちゃということになる。
「すぐに警官が来るから、おまえ待ってろよ」と、電話を終えたオッサンが言う。それじゃあ、待ってまひょと、歩道の防護柵に尻を載せて付き合ってやることにした。オッサンの表情を観察しつつ待っていたものの、おまわりはなかなか現れない。二人とも無言のまま数分が経ち、バカらしくなってきた。「おい、わし、帰るぞ」とオッサンに伝えると、「逃げるなよ。それとも、おまえは警察相手に都合の悪い事情でもあるのか?」「あるわけねえだろ、バ~カ。もう眠いんだよ」「いいから、待ってろよ」なんて不毛な会話となる。
木の芽時だし、そのうえコロナストレスをだれしもがかかえている。心の弱いやつから奇矯な行動をとり始めても、まったく不思議ではないご時世だ。その前日も、地下鉄内でスマホのゲームをしながら、「アヘッ、アヘッ」とヘンな声をあげ続けていたオバハンがおったなあ。これからそういうやつが増えていくのだろう。難儀なこっちゃ。
そうこうしていたら、「おい、やっと来たぞ」とオッサンが言う。振り返れば、自転車に乗ったおまわりが3人も駆けつけてきた。あ~ぁ、これでやっと解放されるという気分だ。3人のうち2人はオッサンのもと、1人が小生のところに向かう。そして「お酒飲まれていますか?」とたずねるので、「飲んでいます」と答える。「しっかり歩けますか?」という次の質問には、「大丈夫ですよ」と両手両脚を振って歩くポーズをしてみせる。「お名前だけお知らせいただけますか?」と用紙を出されたので、そこに名前を書き込んでおく。「念のため電話番号もよろしいですか」と言われ、会社の番号を記しておいた。
それだけで、事情聴取なんてする気もないようだ。「それじゃあ、気をつけてお帰りください」と、そのおまわりさんが背中から押し出すように小生を帰宅方向に送り出した。なんとも丁重な扱いである。おそらくは、そのオッサンとのバトルが起きないように配慮しているのだろう。警官とのやり取りは過去に何度もありすぎているけれど、ここまで丁重に扱われたのは初めてのように思う。さらには、こんなつまんねえ件でポリボックスから駆けつけることになって、あなたがたも大変だよねと、同情心もわいてしまう。
その輪から解放され、少し歩いたところで振り返ると、「ナガオさん、これどういうことですか!」と警官の1人がオッサンに詰め寄っている。ああ、あいつ、長尾ってやつなんだと、ようやく固有名詞を知ると同時に、警官の様子からして、やっぱり常習的に警察に電話しているようだ。もしかして長尾は、しょぼい正義に固執するタイプなのかもしれない。そこで根性の悪い小生は思いついた。もしもブクロ(池袋のこと。最近はイケブとも称するけれど、ここはあえて昔風に)でまた長尾に遭遇する機会があれば、「おい長尾、元気か?」と声をかけてみようか。そうしたら長尾はどんな顔になるだろうかと想像すると、それだけで笑える。一方で、長尾氏には彼なりの人生がある。この先も健全に長生きしたいと願っていることだろう。それだけに、「おい」と声をかけるのは悪くないかもしれないとも思う。しかし、友人にはなりたくないな。
しかし、売られたケンカは買わねばならない。「おまえがおれの進路を妨害しただろ」という主旨のことをきつい口調で小生にのたまうので、「そんなちっちゃなことで、ギャーギャー騒ぐな、バカたれ!」と穏やかに述べておく。するとそのオッサン「だったら、警官呼んでやる」げな。こいつはアホか、と心の底から思う。こんなくだらない件でいちいち呼びつけられたら、おまわりもたまったものじゃないだろう。
そいつはスマホを取り出し、手馴れた感じで警察に電話を入れている。その様子を見ていて思った。もしかして、こいつは常習犯なのだろうか。些細なことでも、毎度毎度警察に電話を入れているように見える。人格なのか、精神病理的なものなのかは知らないが、明らかになんらかの障害を抱えている。面倒なやつに遭遇しちゃったなあ、という気分だ。それにしても、自分―他者との関係性において、その他者との調停を一足飛びに公権力にすがろうとしている。どういう世界観なのか、まったく理解できない。公権力に保護されているという過剰な意識の持ち主なのだろうか。その対極に生きている小生にしてみれば、なんとも情けないやっちゃということになる。
「すぐに警官が来るから、おまえ待ってろよ」と、電話を終えたオッサンが言う。それじゃあ、待ってまひょと、歩道の防護柵に尻を載せて付き合ってやることにした。オッサンの表情を観察しつつ待っていたものの、おまわりはなかなか現れない。二人とも無言のまま数分が経ち、バカらしくなってきた。「おい、わし、帰るぞ」とオッサンに伝えると、「逃げるなよ。それとも、おまえは警察相手に都合の悪い事情でもあるのか?」「あるわけねえだろ、バ~カ。もう眠いんだよ」「いいから、待ってろよ」なんて不毛な会話となる。
木の芽時だし、そのうえコロナストレスをだれしもがかかえている。心の弱いやつから奇矯な行動をとり始めても、まったく不思議ではないご時世だ。その前日も、地下鉄内でスマホのゲームをしながら、「アヘッ、アヘッ」とヘンな声をあげ続けていたオバハンがおったなあ。これからそういうやつが増えていくのだろう。難儀なこっちゃ。
そうこうしていたら、「おい、やっと来たぞ」とオッサンが言う。振り返れば、自転車に乗ったおまわりが3人も駆けつけてきた。あ~ぁ、これでやっと解放されるという気分だ。3人のうち2人はオッサンのもと、1人が小生のところに向かう。そして「お酒飲まれていますか?」とたずねるので、「飲んでいます」と答える。「しっかり歩けますか?」という次の質問には、「大丈夫ですよ」と両手両脚を振って歩くポーズをしてみせる。「お名前だけお知らせいただけますか?」と用紙を出されたので、そこに名前を書き込んでおく。「念のため電話番号もよろしいですか」と言われ、会社の番号を記しておいた。
それだけで、事情聴取なんてする気もないようだ。「それじゃあ、気をつけてお帰りください」と、そのおまわりさんが背中から押し出すように小生を帰宅方向に送り出した。なんとも丁重な扱いである。おそらくは、そのオッサンとのバトルが起きないように配慮しているのだろう。警官とのやり取りは過去に何度もありすぎているけれど、ここまで丁重に扱われたのは初めてのように思う。さらには、こんなつまんねえ件でポリボックスから駆けつけることになって、あなたがたも大変だよねと、同情心もわいてしまう。
その輪から解放され、少し歩いたところで振り返ると、「ナガオさん、これどういうことですか!」と警官の1人がオッサンに詰め寄っている。ああ、あいつ、長尾ってやつなんだと、ようやく固有名詞を知ると同時に、警官の様子からして、やっぱり常習的に警察に電話しているようだ。もしかして長尾は、しょぼい正義に固執するタイプなのかもしれない。そこで根性の悪い小生は思いついた。もしもブクロ(池袋のこと。最近はイケブとも称するけれど、ここはあえて昔風に)でまた長尾に遭遇する機会があれば、「おい長尾、元気か?」と声をかけてみようか。そうしたら長尾はどんな顔になるだろうかと想像すると、それだけで笑える。一方で、長尾氏には彼なりの人生がある。この先も健全に長生きしたいと願っていることだろう。それだけに、「おい」と声をかけるのは悪くないかもしれないとも思う。しかし、友人にはなりたくないな。
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