風塵社的業務日誌

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勝手に転載(中東編その1)

2012年10月06日 | 出版
友人から怪しげなメールが来たので、勝手に転載する。

☆シリアはどこへいくのか?

○内戦の激化とシリア政府から幹部の離脱が拡大
 シリアの反政府勢力とシリア政府の闘争は、内戦となった。シリアのほぼ全土で戦闘が行われ、首都、そしてシリア最大の商業都市アレッポでも、激しい戦闘が続いている。政府中枢機関で仕掛けられた爆弾が爆発するなど、反政府側の攻撃も政府の中枢に届くようになっている。また、北部に自由シリア軍の司令部が移動したといわれている。シリアの内戦は、長期化していく模様。政治的な解決の道が遠のいてしまっている。
 
○国連・アラブ連盟の仲介の失敗
 コフィ・アナンが国連・アラブ連盟の特使として政治的な解決のために派遣され、非武装の国連の監視団をシリアに派遣したが、政治的な解決の糸口が見出せないまま撤退し、アナン自身も辞任した。この背景には、支援すべき国連常任安全保障理事会で、ロシア、中国と他の理事国の間で、シリアへの対応に合意が形成されず、政治的な解決への道は閉ざされたことがある。中東においても、シリアを支持するイランと他のアラブ諸国と対立している。イラクは、国民の多数がシーア派であり、現在の政府は、明確な態度を示していない。サウジをはじめとするアラブの保守派、「アラブの春」にのって生まれてきたエジプト、チュニス、リビアなどは、シリア政府に反対の立場をとっている。

○テヘランでの非同盟諸国首脳会議でのエジプト、イランの対立
 テヘランで開催された非同盟諸国首脳会議で、エジプトのモルシ大統領はシリアを非難した。シリアを支持するイランとの明確な立場の違いを見せた。モルシが「アラブの春」の波の中で当選したエジプトの大統領というだけでなく、モスレム同胞団から登場したことに大きな意味がある。パレスチナのパレスチナ・イスラム抵抗運動(ハマス)も同胞団を母体としており、シリアの反政府勢力の中心がこれまで同胞団であった。過去のハマでの大弾圧は、同胞団を主体とした蜂起に対するものであった。同胞団はイスラム教スンニー派を基盤にしており、シリア国民の多数派は、スンニー派であった。一方で独裁政権と反対勢力という構図は、同時に、スンニー派とシーア派との宗派的な対立を含むものであった。シリアの反政府勢力を積極的に支援している湾岸諸国の王族は、スンニー派に属しており、国民の多数はシーア派である。彼らは、イランの影響力をおそれており、サウジアラビアが軍を送りこんで湾岸における「アラブの春」を暴力的に鎮圧している。サウジアラビアも、スンニー派である。ムスリは、アラブ連盟会議で、シリアの変革を呼びかけた。
 パレスチナのハマスは、シリアを避難したが、ハマスはダマスカスに事務所をおいていた。イスラエルに非妥協に対峙するハマスを支援することはシリアにとっても利益があった。しかし、現在の内戦が激化し、パレスチナ難民キャンプが政府軍に攻撃される事態となっており、ハマスは、シリアのラインから、同じ同胞団が政権をもつエジプトの関係を強めることになった。
 エジプトに同胞団の政権ができることで、ハマスは力を得、これまでのパレスチナ暫定自治政府との和解に積極的でなくなっている。
 イスラエルは、核問題でイランを非難し、先制攻撃をも辞さない立場をとっているが、シリア情勢について明確な立場を表明していない。これは、シリアについては、シリアの現政権が倒れて、イスラム原理主義的な政権が生まれることを恐れているからであり、反イスラエルの立場をとるシリアとイスラエルの国境は、これまで安定していた。レバノンのヒズボラーを支援しても、シリアは、自らの国境からイスラエル攻撃することを許してこなかった。
 米国、欧州は、リビアの場合のように、直接的な軍事的な介入を行っていないし、国連安保理での非難決議や経済的制裁にとどまっている。政権の基盤がリビアよりも強く、宗派的な対立の構造があり、リビアのように容易に介入することはできない。米国がサッダム・フセインを打倒してできたシーア派を中心とする政権は、イラン、シリアと親和的な政権となっている。米国や欧州が抱いているような独裁政権と国民の多数という図式だけでは、計れない問題が存在している。

○トルコの役割
 トルコも、イスラム政党であるAKPが政権をとり、旧来の新イスラエル政策を転換し、欧州に向いていた顔を中東に向け始めた。シリアでの民衆蜂起が起こるまでは、シリア政府との関係が改善された。民衆蜂起が始まり、政権の弾圧が強まる中で、難民の受け入れから、反政府勢力の基地としての役割を果たすようになった。自由シリア軍もトルコ内に司令部をおいていた。
 こうした状況は、シリアの内戦の平和的な解決を困難とし、内戦の長期化を生んでいる。同時に、現政権が倒れた場合に、同胞団系の政権ができることは、明確であり、全体としてスンニー派イスラム世界とイランのシーア世界との対立になりかねない。反イスラエルでの共同がなればいいが、エジプトはイスラエルとの和平条約を放棄しておらず、前政権の政策を引き継ぐとしている。現在の流れからは、イスラエルに和平をもとめる勢力が登場すれば、イスラエルとの和解へと進んでいく構造になるだろう。しかし、イスラエルはネタニヤフの極右政権が存在する限り、その流れはできない。
 独裁政権からの民主化をもとめた「アラブの春」は、モスレム同胞団の力の拡大を生み出した。シリアはどこに向かっていくのだろうか。イスラエルとの和平は、イスラエルの極右政権が続く限りありえず、混沌とした状態がつづくことになる。
分裂しているパレスチナは、民族的な統一をすること、民主的な選挙での民族指導部を形成することが必要とされている。しかし、人民戦線などが批判するように、民族的な和解、統一は進んでいず、イスラエルを有利にすることになっている。

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