風塵社的業務日誌

日本で下から258番目に大きな出版社の日常業務案内(風塵社非公認ブログ)

金時山へ(02)

2019年12月03日 | 出版
8:00過ぎ、バスタ新宿に到着。バスに乗るために来たのは初めてかもしれない。以前は、新宿西口のヨドバシカメラの裏にバスセンターがあったような記憶ではあるけれど、これは非常にあやふやなので、間違っていたらごめんなさい。その当時とは比べものにならないくらい、バスタはお客さんで込み合っている。しかも外国人観光客の姿が目立つ。
彼らはどうやって目的地にたどりつく方法を理解しているのだろうか。スマホにそういうアプリが入っているのか。ガラケーユーザーの小生にはよくわからない。少し想像してみよう。英語圏ならまだしも、日本人が中国なりに行ってバスに乗ろうとする。そこで目的地に向かう車を選択しなければならないし、また、降りるバス停の名称も確認しなければならない。さらには、金額やら時間やらという問題もあるし、そもそもチケットの買い方も知らないといけない。それを、まったくできない中国語でこなすわけだ。そのヴァイタリティはどこから生じるのだろうか。
このキャッシュレスの時代に現金主義であったときのことを思い起こすと、日本内でも初めての地でバスに乗るのはいささか怖かった。東京のように料金均一で前乗りのバスならばさほど問題もないのだけれど、後ろ乗りのバスで目的地までの料金の確認をおこたってしまったときなど、バス停を通り越すたびに料金表の変化を見つめながらハラハラドキドキすることになる。手持ちの小銭で足りるかどうかが不安であるからだ。しかもそういうときにかぎって、小銭にくずすための千円札がなく、万札しか財布に入っていないことがある。現在なら不要の心配のように思えるが、その日の帰りがけ、はしなくもその問題に直面することになってしまった。
カウンターで9:05発、箱根のどこかに行くバスを夫婦二人分、妻が購入することになったのだけれど、なんと空き席が二つしかないと言われる。エーッそんなに人気なのかと、おのれの不明を恥じる。しかも、席が前後になってしまうとのこと。これは大歓迎。ゆっくり本が読めるというものだ。夫婦でどこかに出かけるとき小生が車中で本を読み始めると、どんな本を読んでいるのか、必ず妻がのぞき込んでくる。これが鬱陶しい。小生がなにを読もうがおまえには関係ないだろ、という気分になってしまう。それどころか、思想チェックをされているようで、非常に不愉快だ。たしかにわが家は妻の君臨する独裁制に置かれているので、『1984』的監視網にあるのはわかる。しかしそれでも、内面の自由くらいは保障されたいものなのだ。
昔、小生がまだF社に勤めていたとき、Sさんという書店さん(書店員さんの業界的表現)がちょくちょく遊びにきていた。酒を飲みながらSさんの話をうかがっていると、「書店というのは、ある人の内面を垣間見ることができる商売で、その内面って一種のミクロコスモスじゃないのかな」という主旨のことをおっしゃった。どういうことかというと、ある人がどういう本を購入したかで、その人の内面に触れることができるから、という意味であるのだろう。それを聞いて、ああ、なるほどと思う。この人は村上春樹のファンなんだなとか、囲碁好きだけれども腕はたいしたことなさそうだということが、お客さんの選書から伝わってしまう。書店ってこわい商売だなあと感じてしまった。最近Tポイントカードでの購入履歴が警察に横流しになっていたことが問題になったが、アマゾンなり楽天が客の購入履歴を横流しすれば警察はさぞや喜ぶことだろう。すでに横流しされている?いや、そんなことはありえないと、アマゾンや楽天を信用することにしておこう。
併設されているファミマで水とおにぎりを購入。そして9:05、ようやくバスに乗り込み出発進行。4Fのバス乗り場からかなりの急斜面を下っていって甲州街道へ。そのまま初台へと出たら山手通りを左折して南進。いつもはジョギングしているコースをバスから眺めるのは、視点が変わっていてなんだか面白い。巨人にでもなったような気分を味わえる。富ヶ谷の交差点でバスが信号待ちになったので、「この先にアヘの家があるぞ」と妻に教えてやろうと振り向いたら、すでに爆睡してやがった。そのままバスは大橋の複雑な立体交差を右折し、首都高へと入っていく。中央道を車で走っているときにも覚えるのだけれども、人間ってどうしてこんなに高い橋脚を造れるのだろうと感心してしまう。たしかにそれは自然破壊の結果でもありいい面悪い面あるのだろうけれど、そうした巨大建造物に対するワクワク感がおのれのなかにあるのは否めない。
そこでバッグから某書を取り出し読み始めた。その著者の方には、あるミニコミ誌の次号でインタビューをお願いしている。その質問構成を考えるうえでも必須の書なのだ。ところがその文章が端整であるうえ、かなりの熱量を帯びている。著者の方にはまだお会いしたことはないのけれど、世のなかにはすごい人がいるんだなあと、読みながら感じいってしまった。そして、この熱量の根源を聞けばいいのかなあと考える。
すみません。まだ箱根にも着いていませんが今回はここで終わり。

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