風塵社的業務日誌

日本で下から258番目に大きな出版社の日常業務案内(風塵社非公認ブログ)

塩チャンコ

2016年03月10日 | 出版
とある日曜日、我が家の冷蔵庫は空っぽである。なにはともあれ、買い物に出かけないことには餓死してしまう。近くのスーパーへ妻と買い物に行くことにした。そこで歩きながら妻に、けふの晩飯は何が食ひたいかと問へば、「塩チャンコのようなものがいいなあ」とのたまう。いまいちイメージがわからないので「なんだそりゃ?」と重ねて聞けば、「塩味で野菜をクタクタ煮たような感じかなあ」と曖昧模糊とした答えが返ってきた。なんだかよくわからないけれど、日常に必要な食材と一緒に生タラと豆腐も買い、鍋にぶち込もうと考えることにする。
そして夕方、腹が減ってきたので晩飯にその「塩チャンコ」なるものを作ってみることにした。事前に、土鍋には水を張って昆布を浸しておいた。それとは別にニンジンと大根と白菜の硬いところを適当に薄切りにし、それを用意している土鍋とはちがう鍋に入れ、タジン風に炒めてみる。要するに、タジン風にすることで水分の多そうな野菜からうまみ成分を取り出し、それを昆布出汁に合わせようという作戦である。そのタジン風に塩とチューブの塩こうじを入れておけば、充分に「塩チャンコ」なるものに近づくのではなかろうかと考えたわけだ。
弱火で炒めているうちに、タジン風なるものもなんだかいい具合になってきた。ニンジンもトロトロになってきて、こりゃよかばいと、塩こうじを適当に入れて味が馴染むまでしばらく待つことにする。そこで本来ならば、白ワインかなんか飲みながら、タバコを吸って時間が経つのを待つわけであるのに、なんと妻の前では禁煙になってしまい、しかも我が家には酒もない。タバコ吸いたいなあと、全身が痙攣を起こしそうになるのだけれど、妻の手前必死の辛抱だ。ヤニ切れって本当につらい。清原の気持ちがよくわかる。
昆布を浸しておいた土鍋にも火を点け、煮立ってきたところで、タジン風なるものを全部あけ、そこに調理酒を大さじ2杯ほど入れて味をみてみる。ちょっと甘いかなあとは思ったが、それは塩を追加すればなんとかなるだろう。そこで、ついでにその汁の味見を妻にもしてもらう。ところが、一口、口をつけた途端「こんなにお酒臭いの私は食べられない」ときたもんだ。これには困っちゃった。煮立つのを待っている間、鍋に投入するほかの緑黄色野菜は切り刻んでしまっている。ウーン、どうしようかなあと案じることになってしまったのである。
そこに追い討ちをかけるかのように、「冷蔵庫の中に白だしが入っているでしょ。それでクタクタ野菜を煮ればいいのに、なんでよけいなことをするの」と妻が激昂してきた。そんなこといまさら言われてもだなあ、リカバリーの仕方が見当もつかないのである。だいたいが、素面で料理なんか作っているからろくでもないことになるんだ、と妻に言い返そうかという気分も襲ってくるが、家庭内不和を望んでいるわけではないのでそれはやめておく。
しかし、困ったなあと、せっかく作った鍋の前に立って考えることしばし。そうか、妻用を別に作ればいいのだと考え直し、一人用の土鍋を取り出し、それに白だしを入れて、刻んでおいた野菜を半分ぶち込み、それで妻に味見してもらった。すると、「これなら食べれる」げな。この野郎と内心で思いつつも、鍋を二つ作ればいいんだということでようやく方針が決定した。
確かに、酒の臭いはきつかったのかもしれない。しかし、手間隙かけて作った野菜鍋もそれなりにおいしいのである。その具材をどんぶりに山盛りにし、これ見よがしに妻の前でうまそうに食ってやることにする。「おまえは、出来合いの出汁汁でがまんせいや」というわけだ。いや、「これ見よがし」というほど大げさなことでもないだろう。小生には充分においしかったのである。野菜の甘みとそこそこ利いた塩味が、タラの食感を際立たせている。豆腐もうまい。最後は冷や飯と溶き卵を入れてオジヤにして、締めとする。いやあ、お腹いっぱい、おいしかった。こうなると、妻の鍋がどうであったのかなんて、二の次の問題でしかなくなるのである。満腹になったら眠くなってきた。洗いものを適当に片付けて、早々に寝ることにした。
小生は昏昏と寝入っていて知らなかったけれど、イ・セドル先生がAlphaGoに一矢報いたようだ。これで囲碁の世界の奥深さがクソAIにもわかったことだろう。おっとその前に、その日、昼間NHKの囲碁トーナメントを見ていたら、寺山怜4段がなんと河野リンリン9段を下してしまったのだ。すごいなあ、いまの日本の若手は。ということは、決勝はあの張栩9段と寺山4段ということである。とっくに収録は終わっているにしても、来週は楽しみである。本命・張栩先生、対抗・河野臨先生、アナ・寺山4段というヨミであったが、完全にヨミ間違いであった。しかし、リンリン先生ってべらぼうに強くて、井山大先生も下して準決勝に進んだのに、それでも若手に負けちゃうんだ。AIのこともさることながら、囲碁の世界も新陳代謝が激しいから大変なんだなあ。

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