風塵社的業務日誌

日本で下から258番目に大きな出版社の日常業務案内(風塵社非公認ブログ)

風塵社的支援計画

2011年04月11日 | 出版
もう少し小まめにこのブログを更新しようと毎日思っているのだけれど、なかなか思うように体(指先)は動いてくれない。意識と身体とは、つねに乖離し続けるものなのだろう。
本日で、あの大震災から一月が経った。多分、本日のテレビや明日の新聞なんかは、そういう話題でもちきりになることだろう。ことの重大さに比して、メディアの扱いというのはどこか空々しい。
小生としても、弊社で何かできることがないかなあとずっと考えていたわけで、可能ならば『うたうぬりえ帖』(あきやまみみこ著)を被災地のお年寄に届けられないかと思ってはいた。
R社のM社長はポンと100万円をカンパされたそうで、大変素晴らしいことであるけれど、あいにく小生の場合は、その現金がない。世の中には、100億円を寄贈された方もいるらしいが、そんなにお金が余っているんだったら、こっちにも回してくれよ、という気分にもなってしまう。駅前で被災地向けの募金活動なんかやっているところに遭遇すると、最悪の気分となる。「募金くらいしたいけれど、その金がねえんだよ!」と、ガキをドツキたくなるのだ。
しかしお金はダメでも、お年寄にご好評をいただいている商品在庫は持っている。そこで、『うたうぬりえ帖』でお年寄に笑顔を届けたいと思ったわけだ。ある日、酔っ払ってからあきやまさんに電話をすると、「それはぜひやりたい!」というありがたいお言葉。まあ、みんな、同じような思いを抱いているわけなのね。
ところが一つだけネックがある。弊社は出版社であり文具メーカーではないから、『ぬりえ帖』を送っても、塗る道具がない。着の身着のままで逃げ出してきたお年寄に、塗るものは何とかしてよなんて言ったら、ぶん殴られてしまうことだろう。塗る道具のない塗り絵なんてものは、ただの紙屑でしかない。
そこで、この間、あちこちに声をかけて、協賛してくれそうな文具メーカーを探していたわけである。あきやまさんからも、あちこちに声をかけて、商品提供してくれるメーカーさんを探していただいた。あいにく、大手の文具メーカーさんは、独自に被災地の学校に文具の寄贈などをされていて、いまさら、こちらの話に乗ることはできなかった。ここで、少し挫折する。それに、文具メーカーでも大人の塗り絵を発売しているところもあり、そういうところとは商品がバッティングしてしまう。色鉛筆のセットだと、エンピツ削りが必要だとか、さらに手間がかかってしまうことも予想される。
すると、E堂製本N氏が、文具と一緒に『うたうぬりえ帖』を配るルートを知っているという。早速、N氏に手配をお願いすることにした。そこで、本日の午前、N氏がご来社され、その説明をされていかれる。仙台、盛岡、福島、郡山に拠点があるので、そこに『うたうぬりえ帖』と文具とを別々に送付し、そこから被災地に細かく配布してくれるということだ。「オオッ」(またもや『ゴルゴ』に出てくる依頼者風に)、それは願ったりかなったりだと、N氏にあとのことはお任せすることにした。
しかし、もう一点だけ、気がかりなことが残っている。つまり、小生は被災地の状況がまったくわからないので、現地がそもそも塗り絵を楽しんでいられる状況にあるのかどうかがよくわからない。テレビのニュースでは、あれだけ被災地の情報を流しているけれど、一番肝心な、こちらの知りたいと思うようなことはまったく流れてこない。
また、これまで、お年寄が塗り絵を楽しんでいるところには何回か立ち会ってきたけれど、それはあくまでも平時の状態であり、現在のような非常時でどういう効果を発揮するのかは、よくわからない。それなりの冊数を寄贈したいと思っているので、当然、効果のほどに対しては慎重にならざるを得ないだろう。
幸い、あきやまさんが、13日から16日まで、岩手の被災地に『うたうぬりえ帖』を持って行くことになっている。当然、現地では塗り絵でお年寄の慰問をすることになるだろうから、その報告を待って最終的に結論するつもりである。
被災地のお年寄りの精神的ケアに、少しでも役に立てば、一介の出版業者としてそれにまさる喜びはないだろう。人のお役に立てば、あとは弊社がいつつぶれようがどうでもいいか。いかん、いかん、そういう投げやりな姿勢はよくない。今後も、読者のかたに笑顔を届けられるような書籍を、企画・開発していかないといけない。それが(も)、本の力なのだ。
というある日、マタンゴから電話がある。
「なんだよ」「いやあ、久しぶりに腹巻オヤジの声を聞きたくなって」「えー、それだけ」「それだけですよ」「もうちょっと、ほかにないの?」「なんにもないですよ」「例えばさあ、いま、右手でヘンなとこイジってるから、いやらしいことを言って!とか、そういうのはないの?」「そんなのあるわけないでしょ」「おまえは淋しいやつだなあ」「淋しいのはどっちですか」
はい。どうもすみません。

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5 コメント

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Unknown (mimico)
2011-04-17 16:51:22
岩手から帰ってきました。
簡単に言うと、ぬりえ、現地で大好評でした。
高齢者向けの歌ばかりなので、高齢者に偏りますが、ぬりえと歌を介して色々お話をされてたのが印象的でした。
話すきっかけ、コミュニケーションに役立っていたと思います。
「暗い気持ちだったから、最初は暗い色しかぬれなかったけど、ほら、描くうちに黄色が塗れたわ。虹も描こうかしら」なんて笑顔がこぼれ、
「この歌の時代はねぇ~」と昔話も。
CDで曲を流しながらやると、みなさん体を楽しげに揺らしながら口ずさんでらっしゃいました。
「明るい気持ちになったわ、ありがとう」とたくさんの方に言われ、その笑顔で私自身が救われるような思いでした。

他の被災地にも送られたら、私にも教えて下さい。
よろしくお願いします。
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Unknown (mimico)
2011-04-18 00:20:37
しりあがり寿氏と一緒に避難所を訪問したのですが、その様子が記事になってました。

「漫画家しりあがり寿さん避難所訪問 大槌」
http://mytown.asahi.com/iwate/news.php?k_id=03000001104160002

「うたうぬりえ帖」もこっそり写って、楽しまれた様子が紹介されています。
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お疲れ様でした (腹巻オヤジ)
2011-04-18 08:42:15
細かい話はまたあとで。
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偉いなあ (しげ)
2011-04-29 22:24:37
みみこさんもしりあがりさんも偉いですね。尊敬します。ついでに腹巻氏のことも少しだけ見直しました。
朝日夕刊の四コマで、ここ数日ちょうどそのネタが展開されていて面白く読んでいます。
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Unknown (腹巻オヤジ)
2011-05-02 19:42:39
こらこら、少しだけじゃ、ないだろ。
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