風塵社的業務日誌

日本で下から258番目に大きな出版社の日常業務案内(風塵社非公認ブログ)

やる気なし(05)

2015年11月11日 | 出版
アー、本当にやる気がわかない。しかも、いやなことばかりが起きやがるし、クソ面倒な事務作業も早く済ませてしまわないとかなりまずいことになる。今年も残すところわずかとなってきたのに、これで年を越せるのだろうか。いやだなあ。なんにもやりたくない。しかも、こういうときにかぎって、PCの調子が悪い。といっても、本体そのものではなく、マウスとキーボードが不調なのだ。コピペもスムーズにできないんでは、イライラが募るばかりだ。しかし、このキーボードなんてそろそろ10年選手だろう。そんなものをいつまでも使っている方にも、大きな問題があるのかもしれない。そこに追い討ちをかけるように、スピーカーの左チャンネルは不安定なままだ。突然音が割れた瞬間に、PCもろともすべてぶっ壊してしまいたい衝動にかられてしまう。
現実逃避したい日々の中で、久しぶりにP.K.ディックにハマってしまったことは先日述べたように記憶している。その延長なのか、無性に小説を読みたくなってきた。小生にしては珍しいことだ。そこである日、フラッと立ち寄った書店で棚を眺めていると、『埴谷雄高――夢みるカント』(熊野純彦著、講談社学術文庫)なる新刊が目に留まる。
以前、KMさんと酒を飲みながら話していると、たまたま埴谷雄高『死霊』に話題が及ぶ。「あれはカントを小説化した作品だよね」とKMさんが語る。「埴谷自身も、獄中で『純粋理性批判』を熱心に読んでいたことはよく書いていますよね」とは応えたものの、小生はカントなんて読む気がわかないことはこれまでたびたび触れてきたつもりだ。
つまり、『死霊』がカントの影響下にあることはわかっていても、そのご本尊を知らない。それならば、勉強してみようかとその文庫を読んでみることにした。読み始めると、最初から「超越論的演繹論」なる単語が出てくる。こりゃまいったばい。こういう言葉のイメージもつかめない用語が出てくると、ちんぷんかんぷんなんだよねえと思ってしまう。カントの話はどうせわからないんだから、『死霊』の説明をしてくれよと読み進めたら、すぐに『死霊』の引用が始まってホッと一息。
しかし、『死霊』の文章を読み直すのもずいぶん久しぶりになる。若いころはずいぶん熱心に読んでいたつもりだったけれど、もう20年くらい手にしてもいないのではないだろうか。『埴谷雄高――夢みるカント』を読み進めていたら、松田政男氏の発言の引用まで出てきて笑っちゃった(こういう場合は、「あっは」とでも表現すべきなのだろうか)。松田さんも、この本を見たら喜ぶことだろう。
ようやくにして『埴谷雄高――夢みるカント』を読了。カントに言及している部分はいまいち理解できていないところが多々あったけれど、なかなか刺激的な埴谷論だった。昔、ある人と酒を飲んで話をしていて、そのときも『死霊』に話題が及んだ。その人曰く、「あの小説はいろいろ難しいことが書かれているけれど、実はものすごく単純な主張をしていると思うんだよね」。その「ものすごく単純な主張」を熊野氏は結論的に喝破されているけれど、それに触れるのはやめておこう。
しかし、存在論ってどういうことなんだろうね。存在とは何かという疑問が生じるその衝迫感がいまだに小生にはよくわからない。埴谷雄高の場合、それは死者たちへの思いから生じたものであったことは本書でよくわかった。しかし、あるものはあるんだから(ないものはないんだから)しょうがねえだろ、という気分からいまだ抜け出せないのだ。
『埴谷雄高――夢みるカント』を読み終えてしまったので、『純粋理性批判』にでもトライしてみようかと考えてみる。しかし、理解がついていかず途中で投げ出すのもいやなので、我が家の本棚から『死霊』を引っ張り出してみることにした。そこで気がついたけれど、我が家にあるものは、『死霊』(1~5章定本)『死霊Ⅱ』(4~6章)『死霊』(7章)『死霊』(8章)のみで、9章がない。つまり、9章はまだ読んでいなかったのだ。
以前は熱心に読んだとは先ほど述べたけれど、実は最後まで読んでいなかった。しかし、どうせ未完の小説なのだから、それを最後まで読んでいないからといって、罰はあたらないことだろう。そうはいえども、どうして9章を読もうとしなかったのかは気になる。ウーン、たしか8章を読んでいる途中に嫌気がさしちゃったんだっけなあ。5章までの文章の緊密さが6章からは感じられなくなってしまい、埴谷雄高ももう歳なんだなあと生意気にも思ってしまったわけだ。それでもうお腹いっぱいという気分となり、9章はもういいやと思ってしまったような曖昧模糊とした記憶がある。
もったいないことをしたような、正しい判断だったようなよくわからないところではあるけれど、どうせだからと1章から読み直してみることにした。ところが読み始めるとすぐに寝てしまう。そのため、ようやくにして首猛夫が登場したところだ。

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