風塵社的業務日誌

日本で下から258番目に大きな出版社の日常業務案内(風塵社非公認ブログ)

大手町へ

2016年05月19日 | 出版
なんだかだるいなあと思っているのに、大手町に行かなければならなくなった。気が重い用件ではあるけれど逃げるわけにもいかない。その当日朝食を食べながら、面談する相手に不愉快な思いをさせるため、生のニンニクでも大量に食ってから行こうかとも考えるけれど、相手を不愉快にさせてもこちらにメリットはないだろう。あまりにリスキーな博打は打たないほうがよろしい。
この数年、年に1回くらいはそこに行って同じような話をしているわけであるけれど、今回は先方の担当者が代わったので、そのあいさつという意味もある。しかもその業界では珍しく、新しい担当者は女性であった。こういう話って、几帳面で四角四面な人とはしたくないのである。どうせうちなんか風が吹いたらチリになっちまう会社なんだから、生真面目に相手にしてくれるなよというところだ。
そこであいさつもそこそこに、のっけから面白くもない話を新しい担当者は繰り出してきた。「あ~あ、ヤなやつに担当が替わっちゃったなあ」と、小生は内心で几帳面バカへの対応を考えることになる。どんなに立派な理屈を持ち出されても、ないものはないのである。こちらも困っているわけだ。どうしてないのかという原因も明確である。そんな話を穏やかに小生からも伝え、相手の納得も得られる。
双方ともに共通の問題意識に立たなければ、話し合いなんてものは成立するわけがない。つまり、そこがスタートラインということになる。そして、問題意識の共有とともに相互の敬意(というほど大げさなものでないにしても)が生じなければ、所詮は人間関係である、話し合いではなく命令と反逆という結果しか招来しない。そのためある一点、小生からは強く不満を述べておいた。つまり、どういう内容であれども過去に双方の合意があり、それはこちらとして常に守ってきた、その姿勢をおかしいとする主張内容は受け入れがたいということだ。その言葉を相手がどう受け止めたのかは、小生にわかるよしもない。しかし、正論を述べることが正論ではないことも、人間社会にはしばしばあるわけだ。
小1時間ほど話をしたわけであるけれど、それなりの地点に落着はしたのだろう(そうでないとまた窮地に陥ってしまう)。まあ、担当さんの常識と良識とを信じて、先方の回答を待つことにしよう。それにしても毎度のことではあるけれど、こういう話って疲れるんだよね。駿河台の坂を登るペダルが重くなるのだ。
昼飯後、ソファにひっくり返って寝ていたら、N氏からの電話でたたき起こされる。某新刊について、風塵社のほうはどうなっているのという問い合わせだ。現状を一通り説明してから、またムダ話。「連休中はどっか行ったの?」と小生がたずねれば、
「どこにも行ってないよ。ずっと仕事だよ」
「そりゃ、Me, Too.なんやけど、なんでそんなに忙しいの?」
「今週末と来週末に学会があるんだよ」
「どこで?」
「今週はうちの大学」
「それって、この前レジュメ作んなきゃいけないとか言ってたやつ?」
「それは来週」
「それじゃあ、大変やなあ。そういう学会発表なんかで、Nくんもパワポ使っているの?」
「いや、ぼくは使わない、使えない」
「日本語は一字ちがうだけで、意味が全然ちがうなあ(笑)。どうしているの?」
「ぼくはレジュメだよ」
「それってペーパー?」
「そう」
「ずいぶんオールドスタイルやなあ」
「だって、ぼく、講義だって板書だよ」
「あっ、そう。内田樹氏が語っていたけど、板書していると漢字を忘れないんだってねえ。こっちはドンドン漢字なんて忘れちゃうけど」
「それはあるかも。でもねえ、たまに漢字を忘れて恥ずかしい思いをすることもあるよ(笑)」
「この前さあ、某大に教科書を販売させに行ってきたわけ。ついでに久しぶりに大学の講義も体験させてもらったんだけど、プロジェクターとか音響とか教室にすごい設備が整っているんだよねえ。それだけで感心しちゃった」
「だけど、ぼくは板書」
「使えないから」
「そうそう。それで学生にも、今後法律家として一本立ちしたいのならば、手書きでメモを取れって理屈をこねているんだよ」
「なんだ、そりゃ」
「本とか論文とかを読むじゃない。読み終わって、ぼくの場合はそれで抜書きとかキーワードをノートに書いていくわけ」
「そんなことしているの初めて知った。すごいねえ。でもそんなのパソコンに打ち込めばいいじゃん」
「それがねえ、書きなぐっている自分の汚い字の方が認識度が高いというか、パッと目に入ってくるわけ」
「ヘー、そんなもんなの。いやあ、こっちはさあホント悪筆で、字を書くことにコンプレックスがあるから、なるべくパソコンですませようとしちゃうよ。そうしたら、漢字を覚えないよねえ。この前、虐殺の虐の字が出てこなかった」
「それ、ぼくも書けないかもしれない」
「ところで、今度はいつ東京に来るの?」
「いつだったかなあ。なんかメールが来ていたんだけど、メールを見たくないんだよね」
「わかる、わかる。忙しい時ってホント、メールが届くたびにいやな気分になる。電話の方がさらに気分悪いけどね」
「そうだよね」

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