ピカソ・マニマニア

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ナヲコ  (4) 五月のダイアモンド

2014-07-01 23:56:56 | 物語詩

 

五月は素敵だ。

 

いきなり真夏日から始まり

雹が降ったり 台風のような雨風があったり

まるでティーンエイジど真ん中の をとめの心

 

空に 新緑のレースのカーテンを引いている

桜の若葉の間から 射し洩れる陽光は

無数のダイアモンドの煌めきのよう

とびっきりのお気に入り

 

そんな五月のダイアモンドがきらきらする日

ナヲコと公園のベンチに腰かけていた

話題は たわいもない クラスメートの噂

 

遠くで 売出し中の歌手が

カメラを前に ポーズをとっていた

 

ナヲコからは 見えていなかった

 

「わたし、 妾の子なの」

一瞬の沈黙の後 ナヲコが 話し始めた

 

「母は 元神楽坂の置屋の娘で

家業が左前になった時に 芸者になった」

 

「どうして家は お父さんが週に一度しか

帰ってこないのかって 小さいときは思ってた」

 

妾 めかけ?

15才の私にはすぐにはピンとこなかった

 

ふと目をあげると

撮影が終わったらしく 件の歌手が 

こっちに歩いてきた

 

私はとっさに 国語のノートを取り出し

最終ページを開き ボールペンを挟んで

その歌手に駆け寄った

 

泣いているナヲコを残して

 

別に その歌手のファンでもないのに

 

 

五月は残酷だ

車のフロントガラスにひびが入るほど

思いがけない大きさの氷の塊を降らせたりする

 

 

         by   風呼                

 

 

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